今回は債権者代位の最後なので、残りのポイントを少し見ましょうね。
参考まで、前回の当事者の関係図を載せておきます。
●その他のポイント
○第三債務者は債務者に対する抗弁(例えば、“もう返済したよ”弁済の抗弁、“返済するけどあんたの債務も同時に弁済してくれよ” 同時履行の抗弁、“もうとっくに時効になっているよ”時効の抗弁など)を債権者代位してきた債権者へも主張できます。
○債権者代位がなされても、債務者も依然、第三債務者へ取立が可能。また、第三債務者は債務者へも弁済できる。
○債権者は被代位権利を用いて訴訟さえも可能。そして、債権者は、第三債務者にお金や物(動産)を、「債務者でなく直接自分に払え、自分に引き渡せ」と言える。(ただし、不動産を除く。下の設例参照)
○債権者代位の転用
債権者代位は、「放置すると債務者の財産が損なわれ、債務の弁済が不可能になる恐れがある場合に債権者を保護する制度」でした。
しかし、債務者が無資力になる恐れが無くても、債権者の保護をするために債権者代位のロジックを使える場合があり、それが「債権者代位の転用」です。次の設例で見てみましょうね。
●債権者代位の転用
問:B子はDから国分町(仙台市)の中古ワンルームマンションを買った。その後、B子と同じクラブで働くA美がB子からこのマンションを買った。ところがDは一向にB子への所有権移転登記手続きをしない。放っておくとDがこのマンションを馴染みのE子に二重譲渡する恐れが出て来た。 見かねたA美はB子に代わってDに対し、「今は自分がマンションの持ち主。だから自分に対して所有権移転登記手続きをしてよ」と迫った。Dは「俺はB子にマンションを売った。お前など知らない」と凄んだ。果たしてA美はDに所有権移転登記手続きをさせられるか。頑張れ、A美ちゃん。 |
答:Aが自分への所有権移転を確実にするために(Aの債務者である)Bの代わりにD(債務者Bの債務者)に対し、DからBへの所有権移転登記を請求することができます。(ただし、DからBへの移転を飛ばし直接Aは不可) 債権者Aが債務者Bに代わり、Bの持つ権利を使うという債権者代位と同じロジックです。これが「債権者代位の転用」です。 ただし、これは債権者の権利保護の観点から特別認められる仕組みであり、厳密には債権者代位でなく、あくまでも債権者代位の「転用」です。したがって、債権者代位の要件である「債務者Bが無資力になる恐れがあること」は不要です。 また、あくまでも「転用」ですから、「自分へ直接所有権移転登記せよ」とまでは言えません。請求できるのは取りあえず債務者への登記までです。でもまあA美ちゃん、そこそこ頑張れました。
※なお、転用制度は本設例以外にも、賃借権保全のための妨害排除請求権の代位行使という形でも利用されます。(借りている土地の利用が第三者に妨げられそうな場合、もし地主が動かないなら、賃借人が地主/賃貸人の持つ妨害排除請求権を代位行使できる) |
この設例の当事者の関係図下のようになります。参考にしてください。(不動産の二重譲渡のところは物権法でやるから今は気にしないでね!)
●次回は、詐害行為取消権。債権者代位とワンセットで覚えてね。
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