今回は不特定物債権(種類債権)の特定物債権への特定(まるで変身のように不特定物債権(種類債権)が特定物債権に姿を変えるんです)

 

●以下ちょっとだけ、持参債務と取立債務の復習です。

特定物債権の弁済は、当事者間で定めがなければ、債権発生の時にあった場所、一方、不特定物(種類)債権を含め特定物債権以外の場合には、債権者の現在の住所で行う必要があります。前者を取立債務(とりたてさいむ)、後者を持参債務(じさんさいむ)と言います。

 

さて、今日の本題です。

 

●債権の特定

 不特定債権(種類債権)、例えばお米やビールは特定されることで特定物債権、例えば「この家」や「その中古自動車」と同じ扱いを受ける。

 例えば、不特定債権(種類債権)のままの状態が続くと、債務者は理論的には履行不能になり得ないため、無限の調達義務(追完義務)を負わされる。しかし、「このお米」や「そのビール」のように特定され、特定物債権になってしまえばこの無間地獄みたいな義務から解放される。

 でも債務者にとって好都合なことだけではない。債務者には今度は目的物以前よりも慎重に保管する義務(善管注意義務*が発生する。

 

*善良なる管理者として保管する義務の略。一般的には自分の物を保管するときの注意義務より厳しい義務。前回見たように改正民法ではその具体的内容は「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念」に照らして決まるとされる義務)

 

 いつの時点で特定されるかがポイントだが、取立債務と持参債務とで異なる。取立債務では、「(債務者側により)取り分け、準備、通知」がなされた時点だが、持参債務では「現実の提供」(債権者の自宅でいつでも受け取ってもらえる状態にする)がなされた時点。

 

 

●特定により不特定物(種類)債権が特定物債権に変化(取立・債務不履行)

問:Aさんは、B農園で七面鳥10羽の購入を決め、その場で10羽を選んで、次の週末に引き取る約束をした。ところが後日、Bの倉庫がB自身のタバコの不始末で焼失し、七面鳥は丸焼きに。一足早い感謝祭となってしまった。

 

答:不特定物の目的物が特定されると、それ以後特定物と同じ扱いを受けます取立債務の場合、「この七面鳥で良いですか」と買主に確認し、取り分けていたとすれば、その時点で特定されたと言えるので、以後は特定物債権になります。

特定物債権では、追完責任は負わず、Bは新しい七面鳥をどこか他から調達する義務は無くなります。

また、特定物債権では債務者は目的物に対する善管注意義務を負います。

 

●特定により不特定物(種類)債権が特定物債権に変化(取立・危険負担)

問:Aさんは、B農園で七面鳥10羽の購入を決め、その場で10羽を選んで、次の週末に引き取る約束をした。ところが後日、Bの倉庫が隣家の火事で焼失し、七面鳥は丸焼きに、一足早い感謝祭となってしまった。

 

答:不特定物の目的物が特定されると、それ以後特定物と同じ扱いを受けます。上の設例と異なる点は、B農園には七面鳥の丸焼きに責任がない点です。また、もちろんAさんにも責任がありません。双方に責任がない場合なので、前に見た危険負担の問題が出てきます。

 改正民法の下では、Aさんは債務不履行を理由とした解除が出来るが、仮に何らかの理由で解除できない(契約をチャラにできない)場合であれば、B農園から代金を払って欲しいと言われても、危険負担の考えに基づいて拒むことが出来ます。

 

●不特定物(種類)債権が特定物債権に変化してるか(持参・債務不履行)

問:Aさんは、B農園へ出向き、七面鳥10羽を次の週末届けさせることにした。ところが、その後、Bの倉庫がB自身のタバコの不始末で焼失し、七面鳥は丸焼きに、一足早い感謝祭となってしまった。

 

答:設例の場合、債権者の住所で引渡す債務、即ち、持参債務です。持参債務では「現実の提供」(債権者の自宅でいつでも受け取ってもらえる状態にすること)があって初めて特定されます。それまでは特定しません。

特定前なら債務不履行(履行不能)の問題は発生せず、B農園は七面鳥10羽を新たにどこからか調達してAさん宅へ届ける義務があります。

また、不特定物債権では債務者の目的物保管の義務は「自己の財産におけるのと同一注意義務」を負います。

 

●不特定物(種類)債権が特定物債権に変化してるか(持参・危険負担)

問:Aさんは、B農園へ出向き、七面鳥10羽を次の週末届けさせることにした。ところが、その後、Bの倉庫が隣家の火事で焼失し、七面鳥は丸焼きに、一足早い感謝祭となってしまった。

 

答:設例の場合、債権者の住所で引渡す債務、即ち、持参債務です。持参債務では「現実の提供」(債権者の自宅でいつでも受け取ってもらえる状態にすること)があって初めて特定されます。それまでは特定しません。(ここまでは上の設例と同じ)

 特定前の危険負担は債務者であると考えられており、B農園にあるので、B農園は七面鳥10羽を新たにどこからか調達してAさん宅へ届ける義務があります。

●次回は、「弁済」。少しずつ民法らしさが増してくるね。

 

“ねえ、受け取って。汚いお金じゃなよ。”(いつもけなげなHead&Tail)

 

姉妹サイトもよろしくね!!

ヘッドライトとテールライトHead & Tail
https://ameblo.jp/headtail/

こちらも、どうかよろしくお願いします!!

●日本赤十字社のウェブサイト

東日本大震災義援

http://www.jrc.or.jp/contribute/help/_27331/