かなり暑いですよね。私は、冷房とジュースはケチらないことにしています。皆さんも暑い夏はこれで乗り切ってください。

 

今回は、時効にまつわる幾つかの論点を見ていきましょう。物権のところで扱う言葉も出てきますが、今は余り気にしないでざっと感覚だけつかんでくれればと思います。

 

 

●念のため前回掲載したおもな時効の生じる要件や期間をもう一度載せときます。

 

時効の種類

時効になる権利の種類

時効完成に必要な期間

消滅時効

一般の債権

・権利行使できると知った時から5*

・権利行使できる時から10

人の生命・身体に関する損害賠償請求権

・権利行使できると知った時から5*

・権利行使できる時から20*

債権・所有権以外の財産権(地役権など)

・権利行使できる時から20

取得時効

所有権(持ち始めに悪意か有過失

自分の物として、平穏・公然に20年持ち続ける

所有権(持ち始めに善意で無過失

自分の物として、平穏・公然に10年持ち続ける

 

*印が民法改正で変わった(加わった)ところ。この他、飲屋のツケのような職業別に定まっていた短期消滅時効や商法上の消滅時効も廃止、かなりすっきりまとまりました。

 

●時効完成を知らずに弁済すると以後時効を援用できない

問:時効の完成後、債務者がそれを知りながら弁済すれば、時効の利益を放棄したことになる。ところが債務者がそれを知らずに債務を承認したらどうなるか。

 

答:時効の完成を知った上であえて時効を主張しないのが時効放棄です。したがって、時効の完成を知らずに債務を履行しただけでは時効放棄にあたらず、時効は成立しないハズです。

 しかし、相手の立場に立てば債務者が一旦払ってくれればもう時効の主張はされないだろうと考えるのが人情です。それを後になって時効だと主張するのは信義に反し無効と考えます。だから設例では時効を主張できません。

 民法というとスマートに見えますが、実は義理と人情の板ばさみ、公平な扱いをしようと悩み、とっても泥臭い性格なのです。

 

●時効は原始取得、まっさらな状態で取得

問:KさんはLさんの土地と知らず10年間以上この土地を占有している。一方LさんはM商事から事業資金1000万円を借りる際に、この土地にMのための抵当権を設定していた。Kさんが土地を時効取得するとM商事の抵当権はどうなるか。

 

答:時効取得すると、目的物に付着していた権利は全て消え去ります。

 

★ちょっと一言:民法は、大胆な態度、一貫して筋を通すことがあります。例えば、時効成立でそれまであった古い権利は全滅、まっさらな権利を取得しますが、これとよく似た場面は、強制執行の後にも出てきます。また、相続放棄の場合は最初から全く何もなかったことになり代襲相続は生じません(それこそ放棄の効果は末代まで及んでしまいます)、そのほか未成年者の保護も徹底しています。抵当権の実行によりこれに劣後する権利は一切が消滅するという場面も出てきます。民法には潔いというか、一度決めたら曲げないというか、一徹というか頑固というか、そういう性格があります。

 

●賃借権は物権でないが時効取得できる

問:AはB所有の土地を借り、賃料をBの代理人Cに払い続けて15年になる。ところが先日、B本人が訪ね、Cなど関係ないから早く立ち退けと迫った。Aは立ち退かなければならないか。

 

答:賃借権は債権で、原則、債権は時効取得できません。しかし不動産の賃貸借の権利だけは時効取得されます。善意で10年以上土地を借りて住んでいればAさんは賃借権の時効取得を主張できます。

 そこで一句。“物権で、ないけど時効、賃借権”お粗末でした。

 

★ちょっと一言:民法は、不動産賃借権を、大変手厚く保護しています。家主=強者、店子=弱者というイメージで捉えています。これを忘れないでください。

 

●取得時効占有は悪意も引き継ぐ

問:Aは隣地の空き地をBの所有地と知りながら7年間自分の家庭菜園として使用してきた。このほど自宅をCに売却し、事情を知らないCもこの隣地を家庭菜園に使用して4年になる。善意のCはこの隣地を時効取得できるだろうか。ナスやキューリが立派に実っているのだが。

 

答:このような場合、前の占有者の占有を引き継いで計算してもよいし、自分の占有期間だけで計算してもよいです。

 ただし、前の占有を引き継ぐ場合にはその悪意も引き継ぎますので、時効取得では通算20年以上経過していることが必要です。結局悪意で計算して11年、善意で計算して4年なので、Cは畑を時効取得できません。

 

☟行政法関係ない人はすっ飛ばしてくださいね。

他法先食い(行政法):公物の時効取得

行政が直接公の目的で使用する有体物を「公物」といいます。パトカー、河川、道路などです。公物は原則時効取得されることはありません。しかし、公物についても長年公の目的で使用されず、黙示的に公用を廃止していると認められる場合には取得時効が認められます(判例)

 

●今回で民法総則の小宇宙を脱出し、次回から債権の小宇宙に突入します。債権にも債権全般に当てはまる総則部分(債権総論)があります。まずは債権総論から見てゆきましょう。

 

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