旅先にて、彼にお守りを買ってきた私は浮かれていた。


もちろん神頼みを信じる彼ではないだろうけど、
それを買ってきた私の気持ちは喜んでくれるんじゃないかな?
私が付いてるからね!そんな意味も込めていたので、
きっと私の気持ちが伝わると信じていた。


が。


私が旅行やお守りを買ったお寺の話をしている間、
ずーっと俯いたままお守りを微妙な顔つきで弄ってる彼。
「うん・・・うん・・・」とか言ってる。


アラ、何かしらこの反応?
キモかった??
スピリチュアルおたくだとでも思われた???
今更江原ブーム?それとも数子ちゃん??
ちがうっつーの、断じて違うっつーの!!!


そんな私の怪訝な視線に気づいた彼は、
言いづらそうに、でもハッキリ言った。


「気持ちは嬉しいけど、これはもらえない」


え。


ナニそれ。


「お守りとか持ち歩くの嫌って事?じゃあ家とか置いたら??」


相変わらずビミョーな顔。


「いや、それもちょっと」


????

え、なに。私からのお守りは本当に要りません、と?
なにこの人。
要らないなら要らないで貰っといて閉まっとけばいいじゃん。
それすらも嫌って事?
普通嫌いなモノでもそんな事言わないでしょ。
ていうか、留学する時に他のお守りあげたら、受け取ったじゃん!

わーん、ひどい!


大ショックを受けた私は、布団にもぐりこんだ。


「いいよもー。私が勝手に買ってきたんだもん。
要らないなら無理に貰わなくていいもん!知らないもん!!なんだよもー!!!」


ちょっぴり泣きながらも、ぶうぶう言ってみる。
気まずそうにしつつも、TV見て放置を決め込む彼。(ひどい)


しばらくして、私がまだ潜りこんだままのため、
「泣いてるの?」とチラ見してくる。


無視。


布団をペリっと剥がされる。
とっくに泣きやんでた私。
「泣いてなんかいませんけど」
と目つきで訴える可愛くない反応。


「気持ちは本当に嬉しかったんだよ。勝手に、とか言うなよ」


そんな風に言うもんだから、心にザワつきは残ってるものの、

なんとなく許してその日は寝た。

間抜けな私は、これが明日のX-DAY本番への引き金だとは、全く気付いていなかった。


行き場のなくなったお守りは、今も私の机の上に置いたままだ。

その日、私は旅行から帰ったばかりで彼と会った。


旅先のある有名なお寺のお地蔵さんは、めずらしく草鞋を履いている。
お守りを持って、お地蔵さんに住所氏名と願い語とを言うと
お地蔵さんが歩いて家にやってきて願いを叶えてくれる。
そんな評判で人気のお寺だった。


2年前の夏、私は初めてそのお寺に行った。


元々一人旅が好きなので、世界中どこだって一人で行けるが、
この時は彼と別れたばかりで、傷心旅行みたいなモノだった。
(恥ずかしながら、この3ヵ月後にはうっかりヨリを戻すわけだが)
ていうか、気晴らし。3日前にチケット取って、とか完全に勢い。


別にご利益目当てなんかじゃないけど、
中心部からは外れた郊外に存在し、広い竹林の庭、
一年中泣いている鈴虫。
風情があって好きかも、と思って訪問した。


素敵な庭と景色に、こじんまりしたお寺。
涼しげな鈴虫の音色に、観光客慣れした住職の軽快なトーク。笑


私は、その場所が結構気に入った。


私の願い事は『こういった系統はお地蔵さんでも叶わない』と
言われていたが、元々気休め程度だったので問題なかった。
そもそも、お願い事して、100%叶うなんて思うわけもない。
こういうのは、自分の希望を明確にするのと共に、
気休め(励みともいうかも)や外出してスッキリするためにあると思ってる。


お守りを買って、ちいさく秘密のお願い事をして、
東京の日常に戻ってからの毎日を、それまで以上に頑張った。
そして楽しんだ。


そして、何ヶ月かの後、私の願いは叶った。


でも、私はそれをお地蔵さんのおかげとは思わない。
事実、私は自分でかなり努力したし、アグレッシブに動いた。
それによって掴んだ今だと思ってる。


でも、気休めも、あるとないとじゃ大分違う。
どうにもならない崖っぷちに立ったことで、初めてそれを知った。


そして今年の初秋。
私は再びその土地に旅行に行くことになった。


そこで、彼にお守りを買ってきてあげようと思った。


彼は1年半ほど前から、鬱ッ気があり、一時期かなり体調を崩していた。
私はただの体調不良だし、検査もしているけど原因が解らないと言われ、
一年以上も本当の事を言ってもらえていなかった。


ある時、私があまりに彼の体調を心配して泣いてしまい
彼は告白してくれた。


「知られたら、離れてっちゃうかと思って恐くて言えなかった」


私はまた泣いた。

そんな事で離れていく程度の気持ちだと思われていた事の悲しさ。
思わせてしまった事の情けなさ、申し訳なさ。
気づいてあげられなかった事。
鬱である、という事実へのショック。
話してくれてありがとう、といった嬉しさ。
ごちゃ混ぜになって、彼の事を抱きしめてたくさんたくさん泣いた。

「ごめんね。大好きだよ。話してくれてありがとう」

そればかり、何度も何度も繰り返した。


旅行へ行く頃にはほぼ回復していて、ほぼ元通りになっていた彼。
でも、一度そうなってしまったら、なかなか完治は難しい。
いつかチラリと顔を覗かせるかもしれない彼の病が恐かった。


だから、私は彼に気休めをあげたいと思った。
軽くて薄っぺらだけど、出来る事はなんでもしてあげたかった。


それが私と彼との間に、鬱よりもっと深い問題をあぶりだすのだった。

本日は、ここ最近で溜まりに溜まった振替休日の消化日ですキラキラ

やたー!う、うれしい・・・ト音記号

最近、めっきり電池切れ充電切れモードだったのでゆっくりするぞ~。

と、いうワケで今日はちゃんと更新するのでまた後で蝶々