「で、マサルは結局どうしたいってわけ?」

不意に後ろから野太いけど甲高い良く通る声がした。メアリーだ。
俺に質問を浴びせながら、でも同時に声を潜めてナースステーション裏の休憩室に手招きをしている。

「これを食べなさい。そして子どもたちにも沢山買ってきたから、しまっておきな。」

そう言うと20個程だろうか、小さいパンの詰め合わせを俺のバッグに押し込んだ。

「メアリー、いつもすみません。もらってばかりで、、、。」

「いいのよ。この間駅まで送ってもらったお礼よ。」

と、豪快に笑い飛ばす。俺はこんなメアリーが嫌いではない。多少ダブルチェックの事とか細かすぎるきらいもあるが、陽気なメアリーを尊敬もしている。
そんな彼女が真面目な顔をして問い質して来ると俺は嘘をつけなかった。

「実はうまくいってなくって、、、」

患者のためにと熱かった看護師になりたての頃のことから、変なプライドを捨てられずに同僚とぶつかってしまった中期、鍼灸師の資格を取るために看護師と並行して夜学に3年通ったこと、独立したがお客がなかなかつかないこと、全てを洗いざらい話した。話しながら自然と涙が溢れてくるのも隠しようがなかった。

「オッケーわかった。」

一言だけ発して大きくうなずくメアリーが見えたが、その後どういう展開になるのかなんて予想も出来なかった。
メアリーを見つめて何分くらい経過したのだろう。もう2回目のオムツ交換の時間が迫っていることを考えると1時間以上は軽く経過していたようだ。

「オッケー。」

更に強くうなずいた。