近所の川沿いにある緑地公園。
春にはきれいな桜が咲き乱れる素敵なところです。
桜が散って青々とした葉をつけ始めた4月終わり頃の話。
いつものように緑道をランニングしていると、とある一帯の木々を囲むように立ち入り禁止のテープが張り巡らされていました。
この公園を長年ランニングしてて、立ち入り禁止区域が作られるなんて初めてのことだったので、なにか重大な事件でも起きたのか?と、恐る恐る近づいてみるとこんな張り紙が。
希少生物繁殖中!?
いったいなにが繁殖してるんだい!?貼り紙に問いかけても答えが返ってくるはずもなく、結局その正体は分からぬまま、いったいどんな珍しい生きものが繁殖してるのだろうとドキドキしながら帰りました。
それから数日後。
どうやら立ち入り禁止区域内の木の上の方を望遠レンズで狙っているようです。気になって近づいてみると、先に集まってたおばちゃん達がざわついてました。
「ねえねえ鷹だって」
聞こえてきた会話からようやく正体が判明!
なんと、繁殖中の希少生物の正体はオオタカだったのです。
オオタカ(大鷹、accipiter gentilis)
タカ目タカ科に属する中型の種である。日本における鷹類の代表的な種。古今、タカといえば、オオタカを指すことが多い。(wikipediaより引用)
いくら大きな緑地公園とは言え、都内でタカ!?
是非ともその姿をひと目拝みたい!と木の上を眺めてみても、とても高い木のてっぺんに巣があるようなので、肉眼ではそのお顔を拝むことはできません。
存在は認識してても実態を知ることができないもどかしさ。この状況にモヤモヤしたまま時は過ぎ…。結局それから数ヶ月もの間、なかなか鷹の姿を見ることができませんでした。
しかし、そのときは突然訪れました。
早朝ランニング中のできごとです。
カモの親子が川を優雅に泳いでいます。
ん~和むな~
おーい、かも~
…かも?
いや、カモに混ざってタカ!!!
もしかしてカモを狙ってるんじゃないかとドキドキして見ていましたが、しばらく一緒に仲良く水浴びして巣のある木のほうに戻っていきました。
その姿が見えなくなるまで見届け、やっと会えたことに感動し、かっこいいタカの姿を思い出しては、うっとりしながら家に帰りました。
それから数日。
またタカ見たいな~
足きいろかったな~
なんて思ってランニングしていると、タカの巣の近くでパチンコを空に向かって撃っているおじさんの姿が。
気になったので話しかけてみました。
佐野 「あの~なにをされてるんですか?」
オジサン 「……。パシッ」
佐野 「……先日初めてタカの姿を見ることができまして。」
オジサン 「……。パシッ」
佐野 「……。」
オジサン 「……。パシッ」
佐野 「…なんか、お邪魔してすみませんでした。」
さずがに気まずくなり帰ろうとしたところ、
「…..カラスが襲ってきてさ。落ちちゃったんだ巣から。」
産まれたヒナは3羽だったこと。カラスの襲撃を受けて巣から落ちてしまったこと。無事に成長できたのは僕が見かけた1羽だけだということ。それから定期的に威嚇しに来るカラスがいること。
照れながらおじさんはタカについてたくさん話してくれました。
カラスは「モビング」と言って、仲間が攻撃されたり、天敵の巣を見つけると集団で威嚇行動をするそうで、このタカの巣が襲われたときは、大量のカラスが集まってきて巣の上空が真っ黒になるほどだったそうです。
タカの属する猛禽類は、鳥類の生態系ピラミッドの頂点だと思っていたのでとても驚きました。
オオタカの子育ては、ヒナにつきっきりなものではなく、遠くまで狩りに行って餌をあげるときだけ巣に戻ってくるので、カラスに巣を狙われるのは珍しいことではないそうです。
「タカは天敵になるから、カラスにしたら命がけだからね、自然の摂理としては本当はしょうがないけどヒナを守ってあげたいんだよ」
おじさんは、しかるべき団体から頼まれて有志で協力してタカを見守っているそうです。
カラスはとても頭が良いので、パチンコで何回か石を飛ばせば(もちろん実際には当てないそうです)危険を察知して、から撃ちしただけで逃げていく。カラスの学習能力の高さを逆利用した作戦とのこと。
僕が目にしたのはカラスを追い払っているところだったようです。
気がつけば数十分。
おじさんにお礼を言って、自然の凄さとカラスの賢さ、タカへのおじさんの愛情に感動しつつ、話を聞いてる間に蚊に刺されまくった足をかきながら家に帰りました。
それからしばらく経ち、立ち入り禁止区域のテープは撤去されました。
カラスに襲われてやられてしまったんじゃないかと心配しても、タカの安否を知る術はなく。
さらに数日後、
ランニング中に、散歩してるおじさんと再会しました。話しかけた僕におじさんは、タカが無事に巣立っていったことを教えてくれました。
おじさんと話してる間にまた蚊に刺さまくった足をかきむしりつつ、また来年もこの公園にタカが戻ってくるといいなーと思いを馳せながら、いつもより少し長い距離を走りました。
ムヒ買おうっと。