県外のEICUで2週間入院治療し


再び地元の病院へ帰ってきて
少し経った時のこと。






当時の娘の状態としては

EICUでいる間に人工呼吸器も外れ
地元の病院に帰ってこられた。


帰ってきてすぐ意識が戻ってから
人の区別ができ
大好きな家族の認識もできた。


嫌な時、怖い時には泣けた。


鎮静剤がまだ抜けきらない
目もしっかり開けられない時に
夫の『いないいないばぁ』に
クスッと口角を上げて
反応してくれた。


EICUから帰ってきて10日ほどで
はっきりと笑顔を見せてくれた。


EICUからの鎮静剤投薬が終わり
しっかりと覚醒してから
経口摂取の練習も始まった。






そんな時、ふと

そういえば県外から帰ってきてから
MRI撮ったな…


と思い出した。



そのMRI画像を見れば
大体脳のどの辺りに
ダメージが大きいかとか

どの辺りにダメージがあるから
今後の後遺症にどんな影響が
出るだろうとか

脳のここの部分は大丈夫そうとか…



もしかしたら分かるかも!



とにかく、これからの娘の可能性を
少しでも聞きたかった。


後遺症が残ることは仕方無いとして

それでも、残るにしても
もしかしたら…
っていう少しの希望を感じたかった。






外来診察や院外診察もしている
大忙しの主治医をやっとこさ捕まえて


期待に胸膨らませて聞いてみた。




そしたら主治医、
また大きな大きな体を
小さく小さく小さくして




主治医:「あのー……
                 それが、◯◯ちゃんの場合は
                 脳の全体がですね…
                 広範囲にダメージを
                 受けていまして……」





うん。
それはここに転院してきた時に
もう聞いた。 

からの~?

(心の声。)





変な間があいた。




主治医:「非常に広範囲でして……」




だからなんだよ。

(心の声。)





私:「広範囲だから、後遺症も
         全体的にひどいってことですか?」



たまらず聞いたら、




主治医:「はい…まぁそういうことですね…
                 正直なところ、僕は
                 ◯◯病院(県外の転院先)から
                 無事に帰ってこられたとしても、
                 かなり厳しいと思ってました…
                 良くて人工呼吸器かなって……」






はぁ?
なに言ってんだこいつ…

(心の声。口悪くてすみません。
命の恩人に対してすみません。)





目の前の娘、
自分で呼吸して、笑ってますけど…
嫌なことには泣いて訴えてますけど…
ご飯も口から食べようとしてますけど…


軽くパニクる。



娘の脳、そんな状態やったんか。
というか、今もそんな状態なんか。 


恐ろし過ぎる。





だから、転院先から帰ってきた時

うっすらと目が開いていた娘を見て


「えっっっっっ!?!?!?すごいっっっ!!!!
目が開いてる!!!目が開いてるーー!!!!!!」

って、移動中の担架の横で
ピョンピョン飛び跳ねて
喜んでくれたのか…


そりゃ良くて人工呼吸器と思っていたのが
うっすらとでも目を開けていたら
あの喜び方になるわな。


今となっては
あの異様な喜び方にも納得。



あの先生、あんな喜び方するんやね…笑笑

って夫とちょっとざわついたわ。









というか、
期待に胸膨らませて聞いたのに
希望どころか、可能性どころか

恐怖でしかなかったわ。








いや、逆に可能性しかないか。




医者の予想を大いに裏切った娘。



目に見えない細胞レベルで
一生懸命頑張っている娘。



ネットで検索しても
色んな本を読み漁っても
娘と同じ病気の予後は
最悪なことしか書かれてなくて
参考になるものが何も無い。


MRI画像さえもあてにならないと
目の前の娘が証明してくれた。






何年かかるかは分からんけど


自分の足で歩いてあなたの所に行って
命を救ってくれたお礼を
自分の言葉で伝えて

自分で書いた『ありがとう』の手紙を
自分の手で渡すよ。





あの時の主治医の本音を聞いて
ゾッとしたけど




新たな目標ができた。