(4月21日の知事公館前広場の桜。まだ八分咲きだろうか。)


先日、江別市に住むAさんから 突然メールがきた。

彼は ボク同様に会社を経営していたが、子供たちは違う道に行ってしまい、後継者もいないことから 会社を売り払い、現在は奥様と 悠々自適の生活をしておられる。

かっては 一緒にゴルフもし、旅行にも行った仲だが、最近は疎遠になっていた。

たしか ボクより一つ上か、同じ歳である。


久しぶりに会いたい、という。

そこで 札幌駅の ステラプレイス内のカフェでお会いした。

以前と変わらず お元気なようであったが、2時間ほどの会話は、終始 俳句の話であった。


彼は今 札幌市内の俳句教室に通っている という。

彼の奥様は、お元気で 終日 パークゴルフをしたり、ママ友同士の食事会を楽しんで、昼間 家に居る事がほとんどないらしい。

孫たちは 大きくなって おじいちゃんのウチに よりつくこともなくなった、という。

彼の趣味のゴルフも、歳とともに 仲間がドンドン減ってしまった、というのである。


暇を持て余して 最近始めたのが、俳句である。

TVの影響で 俳句をよむ事にしたらしいのだが、これが面白い、という。

いろんな所へドライブして、俳句をひねり出す、のだが、そのときの工夫やら 心境を、こと細かに説明してくれた。

自分と会っていた カフェでの2時間のほとんどが、この話題についやされた。


こちらとしては、あんまり興味のない話なので、適当に合槌を打っていたが、最後までこの話を一方的にするばかりで、仕舞いには、

いやあ、今日は楽しかったよ、

と 大満足して帰って行った。


なんだか 砂を噛むような思いだけが残った。


新しい趣味を見つけたが、その話を したくてしたくてたまらず、誰でもいいから 話を聞いて欲しかったのだろう。

多分、奥さんも子供さんも 相手にしてくれないのだろう。

こちらとしては 有効な時間の使い方をした、とは言えないが、彼にしたら 有意義な時を過ごした、と ご機嫌だったろう。


かって ウチの息子が、仕事上 NHKの偉いさんに会う必要があり、初対面で何と切りだせば良いか、困っている、と聞いてきた事があった。


そこでボクが言ったのが、

まず お相手の 現在 興味のある事や趣味について聞いてごらん、

と言った。

もし、教えてくれたら、最初にその事を話題にすれば良い。

それも もっぱら聞き役に徹したら良い。

そうすれば、初対面でも会話がスムーズにいく、

と教えた。


後日 結果を聞くと、これは大成功だったらしい。


実はこの辺の消息は、20代の頃に何度も読んだ、ビジネスマンの必読書でもある、

D・カーネギー、のベストセラー著書、

「人を動かす」や 「道は開ける」

に詳しい。


Aさんの場合は、このカーネギーの、

ヒューマンリレーションズ・人間関係論の 逆実践をした、ということになるが、聞いた自分が不愉快に思った、とすれば、自分の人としての器は まだまだ小さい、という事なのだろう。

器が大きければ、Aさんが 幸せになるならそれで良し、と鷹揚に構えるであろう。

まあ、自分は 所詮その程度なんです。


Aさんから またお誘いがあったらどうしょう。

途中で、いや その話は興味がありません、

と ピシャと言ったら、どんな顔をするだろう。

そんな事 言えないよなあ。