(雪まつりも終わり、あの大雪像も全くの更地になっている。ブルドーザーがポツンと寂しそう。)


先日、地下街のオーロラタウンを 札幌テレビ塔の方向に向かって 歩いていた時であった。


通路を右に曲がり、丸井今井DPの方に向かったとき、手押しドアの向こうに 人だかりがしていた。

何だろうといぶかしんでいると、おびただしい血を拭いたテッシュが 打ち捨てられているのが目に入った。


うわ!

見ると、警察官やら、救急隊員やら、地下街の市の管理者などが7、8人おり、真ん中に 車椅子に乗った年配の男性が、タオルを顔に当てて呆然としていた。


そこに立ち止まって 見ているのも気の毒なので、すぐに立ち去ったが、何か暴力事件に巻き込まれたのだろうか。

いや、事件と言うほどの緊迫感はなかった。


想像してみると、車椅子のご老人が ドアを開けようてして転倒し、どこかを したたかに打ちつけて大出血したように思われた。

近くを通った通行人が すぐに救急通報したのではないか。

地上では 救急車が 赤色回転灯をまわして待機していた。


歩きながら、他人事ではない、と思った。

ボク自身も 脚がどんどん弱くなっているのがわかる。

このさき いつか車椅子でなければ 外出が難しくなる時が来るかもしれない、いやきっとくる。

車椅子も、自動ドアでなければ 建物へ立ち入ることも おぼつかなくなるかもしれない。

ボクだけではない。

誰しもが おそかれはやかれ こんな時はきっとくる。


血のりのついた青ざめたご老人の顔が 目に浮かび、無事を祈りながらも 少し寂しくなった。


いつものカフェに入り 珈琲を飲みながら NETニュースを開くと、タモリさんの NHKブラタモリが 今年度いっぱいで終了という文字が 目にとびこんできた。


ま、まさか。

前にも書いたが、ブラタモリは、TVのなかで 一番にお気に入りの番組である。

NHKらしい上質の教養番組で、タモリさんと女子アナの掛け合いが 何とも楽しい。

随時でてくる その道の専門家の説明が タモリさんの博識と相まって 無理なく理解できる。


無くなるのか。

ヨルタモリや、タモリ倶楽部が終わった時のように、また寂しくなるなあ。

NETでは、タモリさんは 後任に草彅剛を推しているらしいが、どうだろうか。

代わりがいるとは思えないのだが。


タモリさんは ボクより二つ歳上の78歳である。

NHK側から終了を申し出た、とは とても思えないから、タモリさんも 少しづつ終活をすすめているのだろうか?

それにしても…


カフェの窓から外を見ると、たくさんの人が 切れ目なく歩いている。

小さい子供が、一生懸命追いかけている 赤ん坊を抱いたお母さん、サラリーマン風のスーツの二人連れは声高に話しながら、JKらしい学生は楽しそうに、車椅子の女性をゆっくり推している若い御婦人、そして中国人と思しき声高の集団、いろんな人が いろんな様子で歩いているのである。


自分もまた まぎれもなく この人たちと同じように これからも歩き続け、そして いつか少しづつ消えてゆくのだ。


かって 治療法が確立されていなかった時代の、エイズ患者の若い男性が、彼もまた 1年後に死んでしまうのだが、TVのインタビューで、今の心境を問われ、(残酷なことを聞くものである、)

目を潤ませて、

いつも 街角の雑踏をみています。

ここに歩いている沢山の人々が、百年後には皆んな死んで、誰もいない、

そんなことを想像して 自分を慰めています。

と、言っていたのを思い出した。

……


うーん、

なんか寂しいなあ。

気が滅入るなあ。 

次は 明るい話題を探そう。