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入院生活、3週間。

 

 

ついに終わりの時を迎えた。

 

 

9月19日土曜日。

 

 

退院。

 

 

人生で初めての入院。

 

 

そして、初めての手術。

 

 

長かった。

 

 

本当に長かった。

 

 

8日に手術を終え、10日に一般病棟へ移ってからは、日に日に自分の身体が回復していくのがわかった。

 

 

歩く。

 

 

バイクを漕ぐ。

 

 

軽い筋力トレーニングをする。

 

 

昨日できなかったことが、今日はできるようになる。

 

 

人間の身体というのは、本当に不思議なものだ。

 

 

一方で、鏡を見ると現実も突きつけられる。

 

 

想像していた以上に細くなった両足。

 

 

そして、胸には大きく残った手術の跡。

 

 

傷は、おそらく完全に元通りになることはない。

 

 

ただ、リハビリの先生によれば、足の筋肉には「筋肉の記憶」があるので、少しずつ戻ってくるという。

 

 

それを信じて、また一から身体を作っていこうと思う。

 

 

病室でも、寝る時以外はなるべくベッドに横にならず、椅子に座って過ごすようにしていた。

 

 

少しでも早く、普通の生活に身体を戻すためだ。

 

 

とにかく思っていた。

 

 

「早く日常に戻りたい」

 

 

ところが。

 

 

回復期というのは、意外なほど「暇」である。

 

 

午前中に検査やリハビリが終わる。

 

 

すると、その後は基本的にやることがない。

 

 

身体はまだ自由には動かない。

 

 

外にも出られない。

 

 

仕事も以前のようにはできない。

 

 

ただ時間だけは、たっぷりある。

 

 

そんな入院生活をずっと支えてくれていた先輩から、こんなことを言われた。

 

 

「回復期の時間こそゴールデンタイムだよ。これからのことを、しっかり考えてみたら?」

 

 

なるほど。

 

 

これは金言だった。

 

 

そこから色々なことを考えた。

 

 

今までの自分の生き方。

 

 

会社の在り方。

 

 

これから事業をどうしていくのか。

 

 

組織をどう変えていくのか。

 

 

そして、自分自身がこれからどう生きていくのか。

 

 

考えているうちに、ひとつ強く思うようになった。

 

 

「今日の続きが、明日ではない」

 

 

ということだ。

 

 

今日やらなくても明日やればいい。

 

 

今年できなくても来年やればいい。

 

 

また今度。

 

 

そのうち。

 

 

もう少し落ち着いてから。

 

 

そうやって先送りしていることは、誰にでもあるだろう。

 

 

自分にも、たくさんあった。

 

 

しかし今回、ある日突然、日常が断絶した。

 

 

数時間前まで普通に生活していた人間が、救急車で運ばれ、そのまま入院する。

 

 

そして手術を受ける。

 

 

そんな経験をすると、「また今度」という言葉が、以前とは違って見えてくる。

 

 

日々は、ただ繰り返されているわけではない。

 

 

今、この時間に何をするのか。

 

 

いつまでに何を成し遂げるのか。

 

 

誰と会うのか。

 

 

どこへ行くのか。

 

 

何を残すのか。

 

 

それをもっと真剣に考えなければならない。

 

 

これは自分自身の人生だけの話ではない。

 

 

会社も同じだ。

 

 

事業も同じだ。

 

 

組織も同じだ。

 

 

会社にも時間がある。

 

 

事業にも旬がある。

 

 

人にも、それぞれ役割を果たすべき時期がある。

 

 

「いつかやろう」

 

 

と言っているうちに、環境は変わる。

 

 

市場も変わる。

 

 

人も変わる。

 

 

そして、自分自身も変わってしまう。

 

 

61歳になった自分にとって、人生の時間には、もうそれほど余裕があるわけではない。

 

 

もちろん、焦って生きるという意味ではない。

 

 

ただ。

 

 

やりたいことを先送りしない。

 

 

やるべきことを放置しない。

 

 

会いたい人には会う。

 

 

行きたい場所には行く。

 

 

作りたいものは作る。

 

 

始めたいことは始める。

 

 

そういう生き方に、少し変えていきたいと思う。

 

 

急に日常を断絶されたからこそ、わかったことがある。

 

 

こういう経験をしたからこそ、見えてきたこともある。

 

 

そして。

 

 

これから「やってみたいこと」も、いくつか出てきた。

 

 

だったら、やればいい。

 

 

考えているだけでは何も始まらない。

 

 

これからは、今まで以上にスピードを持って実行していこうと思う。

 

 

3週間の入院生活。

 

 

できれば、もう二度と経験したくはない。

 

 

しかし、この3週間で考えたことは、これからの自分にとって、とても大きな意味を持つような気がしている。

 

 

退院。

 

 

ようやく日常に戻る。

 

 

でも。

 

 

以前の日常に、そのまま戻るつもりはない。

 

 

少し違う人生を、ここから始めてみようと思う。