【2014作品紹介】『標的の村』 | ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》のスタッフブログ

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2017年6月24日(土)〜25日(日) 阿倍野区民センター 大ホール

『標的の村』(91分)
監督:三上 智恵

上映日時:8月23日(土) 15:30~


・第87回キネマ旬報ベスト・テン 文化映画第1位

・山形国際ドキュメンタリー映画祭2013 市民賞、日本映画監督協会賞 受賞



日本にあるアメリカ軍基地・専用施設の 74%が密集する沖縄。

5年前、死亡事故が多発する新型輸送機オスプレイの着陸帯建設に抗議し座り込んだ東村・高江の住民を国 は「通行妨害」で訴えた。
反対運動を委縮させる SLAPP 裁判だ[※1]。

人口 160 人の高江集落は米軍のジャ ングル訓練場に囲まれている。
わがもの顔で飛び回り、低空で旋回する米軍のヘリ。
自分たちは「標的」な のかと憤る住民たちに、かつてベトナム戦争時に造られたベトナム村[※2]の記憶がよみがえる。

2012 年6月26日、沖縄県議会がオスプレイ配備計画の撤回を求める抗議決議・意見書を全会一致で可決した。 9月9日の県民大会には10万の人々が結集した。

しかし、その直後、日本政府は電話一本で県に「オスプレイ」配備を通達した。

そして、ついに沖縄の怒りが爆発した。
9 月29日、強硬配備前夜。
台風17号の暴風の中、人々はアメリカ軍普天間基地ゲート前に座り込み、22時間にわたってこれを完全封鎖したのだ。
4つのゲートの前に身を投げ出し、車を並べ、バリケードを張る 人々。

真っ先に座り込んだのは、あの沖縄戦や復帰前のアメリカ軍統治の苦しみを知る老人たちだった。
強制排除に乗り出した警察との激しい衝突。取材に駆け付けたジャーナリストや弁護士さえもが排除されていく。
そんな日本人同士の争いを見下ろす若い米兵たち......。

この全国ニュースからほぼ黙殺された前代未聞の出来事の一部始終を記録していたのは、地元テレビ局・琉球朝日放送の報道クルーたちだった。

本作は、反対運動を続ける住民たちに寄り添いながら、沖縄の抵抗の 歴史をひもといていく。

復帰後40年経ってなお切りひろげられる沖縄の傷。
沖縄の人々は一体誰と戦っているのか。
奪われた土地と海と空と引き換えに「平和と安全」を味わうのは誰か?


10 月1日、午前11時20分。
沖縄の空をオスプレイが飛んだ。

抵抗むなしく、絶望する大人たちの傍らで11才の少女が言う。

「お父さんとお母さんが頑張れなくなったら、私が引き継いでいく。私は高江をあきらめない」

※1=SLAPP 裁判......国策に反対する住民を国が訴える。力のある団体が声を上げた個人を訴える弾圧・ 恫喝目的の裁判をアメリカでは SLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)裁判と呼び、多 くの州で禁じられている。


※2=ベトナム村......1960 年代、ベトナム戦を想定して沖縄の演習場内に造られた村。
ベトナム戦を想定し 農村に潜むゲリラ兵士を見つけ出して確保する襲撃訓練が行われていた。
そこで高江の住民がたびたび南ベ トナム人の役をさせられていた。


監督プロフィール ----------

三上 智恵(監督)
1964年東京生まれ。
父の仕事の関係で12歳から沖縄に通い、成城大学で沖縄民俗を専攻。

卒業論文『宮古島の民間巫者に見る霊魂観~タマスウカビを中心に~』
アナウンサー職で大阪の毎日放送(株)入社。

8年後の1995年、琉球朝日放送の開局とともに両親の住む沖縄へ移住、第一声を担当。
以来夕方ローカルワイドニュースのメインキャスターを務めながら取材、番組制作に奔走。

沖縄民俗学の研究も継続し、放送業と並行して大学院に戻り、2003年春、沖縄国際大学大学院修士課程修了。
修士論文『大神島における祭祀組織のシャーマニズム的研究』
同大学で沖縄民俗の非常勤講師も務める。
ドキュメンタリーの主なテーマは沖縄戦や基地問題、一方、サンゴの移植や
ジュゴンの文化を追いかけるなど海洋環境と海をめぐる沖縄の文化をテーマにした番組も精力的に製作している。


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