猪爪直言 寅子父 | きつねの部屋ブログ版

猪爪直言 寅子父

 朝ドラで昭和が描かれると必ず戦争の時代が登場する。今私の印象に残るのは『カーネーション』での戦時シーン。

 

 戦時下になると婦人御国隊(名称はわたしの記憶で間違っているかもしれません)なる者たちが洋服をつくる主人公のところに度々きては、防火や竹槍訓練を督励しにきて、けして嫌がらせではないのだが、米英を敵にしているのに、洋風なんぞつくりおって、との意趣もあってか、執拗な訪問をうける。

 

 が朝ドラの昭和版、平成版はこうしたことをまだ見直に経験した人の存命率がたかかったが、令和版になるとグッと減って来た。日本がアメリカと戦争をしたということを知ってはいるが、実感したという世代は少なくなってきたからであろう。

 

 明治、大正、昭和を描くものについてはどうしても戦争を背景としているのでこうしたシーンは省けない。この度は猪爪家の長男の直道の出征シーン、また寅子と同期の弁護士轟も赤紙(兵として出征せよとの軍からの命)がきた。

 

 が以前の朝ドラに比べればそうしたシーンは簡素となっているのは、やはり時代が今だからだろう。昭和はますます遠くなっていく。

 

 以前猪熊家は貧しい家庭ではないと書いた。直言は銀行勤めをし、どうやら部中級の人物らしく、それで政管を巻き込んだ疑獄事件のキーマンとして起訴された。

 

 それくらいだから家を持ち、大勢な家族や書生までも家に入れ、養い、長女を大学へまでやれる資金をもっていた。どうやら猪爪家は中流家庭に属するとみた。

 

 話しは長男直言に戻る。以前の朝ドラではこうした出征シーンには近所の人達が大勢で見送る、としたものが多かった。旗をふり軍歌を歌い、とかである。

 

 が今日の直言の出征シーンはほぼ家族だけで、これも現代があの時代から遠くなっていることをわたしは意味しているとおもう。

 

 またご近所との付き合いもあるにはあるが、東京の下町のような気さくさはなく、どうやら猪爪家は東京も山の手、本郷(元武家屋敷町)あたりに住んでいるのではないかとわたしは感じた。であれば寅子の高等女学校や大学も徒歩で行けるから。

 

 戦争末期の東京は大空襲を受ける。しかしその範囲は下町、現在の江東区、墨田区、江戸川区の下町といわれた所だ。理由は木造家屋が密集していて焼夷弾を落とせば焼け野原になると米軍が察知していたからである。

 

 中央区にある銀座も狙われたが、皇居以北、以西の山の手といわれる中流以上の家庭画ある所にはそれほどの被害はなかった。であるので娘を弁護士にまでする資金もあり、見識もある直言は妻はるより頼りないが、けっこうもっている人である。