寅子はすごい「虎と翼」
尾野真千子のナレーションで軽く視られているようだが『虎に翼』。いまさらながらこのタイトルの意味は「鬼に金棒」といって強い鬼に更に金棒を持たせたら無敵になる、という例えだ。
昭和初期、というか明治の近代の世になり江戸時代よりも男性の力が増し、武士とはことなる庶民の世界にも武士的な男尊女卑が法によって定められる。
そうした男と女を同じラインに挙げる運動を起こした少数段である女子法律学校の生徒たち。恥ずかしながらその存在はわたしも知らなかった。
戦前にそのような学校があり、とうに女性弁護士が育っていたとは過分にして知らなかった。
ユーモアたっぷりに演じられる『虎に翼』ではあるが、女子、いえ女性の性がこれほどまでの朝ドラに描かれた例はあまりないように思う。
象徴するセリフは「月のもの」。朝ドラでこの月経がセリフとして登ったのははじめてではないか。午前8時といえば家からの出勤は既に終わりサラリーマン、ウーマンは交通機関に乗っている頃だろうが、この言葉がテーマとなった朝ドラでいいたいことは生理はちがっていても男も女も同じ政治的な権利をもつ人間である、ということ。
お話はすこしユーモアに包まれてはいるものの、それがために女は弱い、とおもいこみたい男性たちに抗する女性たち、という構図は新しい。
グループの中に一人男装者をいれることにより、なおいっそう女性の生きづらさを明確にしている。
またさりげなく嫁と姑問題も間に挟み、以下に昭和の初期まで、いや戦後も昭和は残り平成の世がこなければこうした問題の解決はできなかった。
生理の話しだが、画期的だったのがテレビCMで研ナオコが生理用品のテレビCMに登場した時だった。あれは研ナオコだったから受け入れられた。それまでは男子が女子の生理の話しをすることはタブーとされ、知らんぷりして、いや実際に無知だったのだが、以来男性も意識するようになった。
それを考えると昭和初期とはいえ、実際はどうかわからないが月の物と発言するのはおそらくはしたない、とかいわれていたのだろうがこの朝ドラ、可笑し味につつんではいるが堂々とこのテーマで話しができる、戦後を知る男子として隔世の感がある。
それがあるから女性は劣っている、との考えが支配していた戦前、しかし考えてみればそれがなければお前は生まれていないよ、といいたい。男が女性を偏見の目でみるのは特権的に男が優秀だ、と思い込んでいるからだろう。
そこに女がいなければ男もいない、と彼女たちはさりげなくメッセージをのべているのだ。それこそ女子が男子に勝ることなのだ。わたしがいなければあんたもいない、とまではいえないだろうが、社会の構成員だとの自覚はこの時から始まる。
といってまだ戦いの際中であり終わりはみえない。これからも男の世界へ女子の進出にはかなりの障害がでてくるであろう。それをひとつひとつ潰していくこのドラマ、期待したい。