寅子の家は庶民の家、ではない | きつねの部屋ブログ版

寅子の家は庶民の家、ではない

 昭和を希求する若者たちの話しをした。現在放送中の朝ドラ『虎に翼』の本日の放送では法学部女子部では志望者は多いいが授業についていけずに脱落者が増え、そこで現在に2年生になった有氏で法廷劇をやろうということになる。

 

 その衣装を縫うために寅子の家に集合した仲良しの4人。中には華族令嬢の涼子もいて、「庶民」の家をしげしげと観察する。

 

 そこへ元寅子と同級で卒業を待たずに寅子の兄に嫁入った花江が菓子をもって寅子の部屋にはいってきた。「あら女中さんが……、といわれ普段から姑(寅子の母)に細かいことを指図されている花江はムッとするが、寅子がとりなすも花江の気持ちはすっきりとしない。

 

 このように女中を置ける家は「庶民」ではない。中流家庭以上でこそ女中が置けるのだ。寅子にしてもあれだけお見合いができたこと、そして女学校に通わせてもらったこと、下宿人をおける、というのは中流家庭以上でなければできないことなのだ。

 

 一軒家に住まい、それなりの部屋数がありは、女子であっても大学にまで通わせてくれる家庭は裕福であって、それは庶民とはいわない。

 

 まだ華族という特権階級制度が残っていた時代で彼らと比較すれば、「庶民」階級なのは間違いはないが庶民からみれば山田洋二監督の映画『小さなおうち』のようにりっぱな中流階級なのである。寅子の父は銀行勤め、りっぱな中流階層になる。

 

 とはいえ、嫁にはいった猪爪家では家族以外の者にとっては花江は女中にしかみえない。それが目下の花江の悩みである。寅子も花江は親友だし女中などおもったことはない。が、第三者から観ればそう見える、それは本人も感じていてやるせない思いをいだいていた。戦前はそれが当たり前の家族の姿であった。

 

 なんとなく寅子はそれを察して、嫁にいかず自立する道を選んだのではないか。

 

 戦前は戸主制があって、家の主人は父親、次に家の中の主導権は母親、長男、次男…、長女、次女の順。

 

 さて、この解決のカギは母である”はる”がなんとかしなければならないが、長男の嫁としても育てる義務があるのが昭和の義母のつとめだ。それは以上の理由があるから。

 

 戦後もこの嫁、姑問題は残りそれが解消されるのは若夫婦が夫の両親と離れ一家をもつことでしか解決できなかった。そういう意味でも戦後のアパートや公設の団地建設などは嫁姑問題を解決することに役だっているとわたしは考える。

 

 がそこに姑が同居しない、という条件ならばだが。いくつもない部屋で姑と嫁が一緒に暮らす、それはそれで嫁にとっては地獄であろう、台所は一つだから。