新プロジェクトX | きつねの部屋ブログ版

新プロジェクトX

 昭和の終わりから平成の始めの”日本の偉業”を題材にしてNHKがドキュメンタリー番組としたNHKの『プロジェクトX』が『新プロジェクトX』として本日夕刻から放送されるという。

 

 日本の戦後から「ジャパンASナンバー1」といわれるまでになった経済の伸長を題材にしていかに日本が世界の日本になったかをわかりやすく、そして誇らしく語った番組であった、『プロジェクトX』。

 

 しかしドキュメンタリー番組はどうしてもそうであるが、企画者の意図通りの筋書きになってしまい、マイナス面は番組にせずプラス面のみを番組にする。

 

 苦労を乗り越えた感動、これを与えるためにナレーション原稿、番組編集、構成などいいとこどりにしてしまい、後からそれは違う、と抗議がきたこともあったと聞く。

 

 ありがちな「演出」、しかも取材企業から献金も受けていたなどの不祥事もあったりして、感動を売り物にした番組、との酷評もあった。

 

 そんな番組でも戦後生まれの日本人には誇りを感じたのも確かである。

 

 とにかくイケイケドンドンであった戦後日本の姿は本当のことで、ただ歴史になっていないうちに成果だけを取り上げると結果そのような生煮えの状態となるのは仕方ない。

 

 そして迎えた日本経済の低迷期。失われた10年が20年、30年と経過し小型携帯電話で先行していたものが、国内だけのやり取りしかできないものとなって、あっという間にスマホの誕生で世界市場に参入できずに後塵を拝す。

 

 ウォークマンもアイポッドに押しやられ、EV自動車の生産も中国に差をつけられる。こういして小さなものから大きなものまで、日本製品の質はほめられても世界基準になっていかない。

 

 以来巨大プロジェクトの時代は終焉とまではいかないが、世界に誇れる製品はだしていない、と断じてもいいのではないか。

 

 半導体の生産も一時は世界一となっていたが、いつのまにか台湾などに抜かれ、その電子社会に乗り遅れ、中国、韓国のシステム社会に抜かれてしまっている。

 

 デジタル庁がその象徴的な役所だ。紙でやりとりする文化の是非はともかく大きく世界基準からは外れてきてしまっている。

 

 そんな時代を30年経て再び『新プルジェクトX』を放送するNHKだが、目玉はスカイツリーとか。

 

 確かに世界に誇る電波塔だが、設計、製作の苦労は東京タワーには及ばないだろう。東京タワーはまさにゼロからイチをつくるような作業であったからである。

 

 設計は手作業。当時の鉄骨の組み立ては焼いたボルトを受け渡し熱いうちに穴の中に入れて打ち付ける。まるでサーカスのような動きをする職人たちがいた。

 

 黒部第四ダムの建設も同様で、危険が束になって押し寄せてくるような現場にトンネルを掘る。それは命をかけた闘いといっていい。

 

 で、いかに苦労して仕上げたか、というナレーションによって感動的な番組になっていた。

 

 ただスカイツリーの場合だけに限れば既に何度も工事中や工事完成時にドキュメンタリー番組がつくられていて、いまさらそれを取り上げるというのも寂しい。

 

 現在はモノづくりよりサービス産業の時代。むしろ技術的なことよりなにが人に幸せをあたえるか問う時代なのだろう。

 

 労働人口は減り、生産、運輸、建設へ従事する人間の数には陰りが出てきた。技術力を誇るよりも働き手の確保が問題。でないと日本経済は回らない。

 

 他国では戦争が起こり、毎日死人がでている。そんな時代に日本の技術を誇るよりもやることがあるのではないか、とおもっているのはわたしだけか。

 

 確かに自信をなくした日本を勇気づけなけばならないが、いまさらアナクロ的な番組を復活してどうなるのだろう。