『THE FALL 警視ステラ・ギブソン』 | きつねの部屋ブログ版

『THE FALL 警視ステラ・ギブソン』

 一度ここで紹介しましたイギリスの刑事ドラマです。これがなかなかエグイ。いままで観てきたイギリスの刑事ドラマは洗練されていていて、いえばキレイにできている。

 

 しかしこのドラマ始まった時から不穏という気分がながく続いている。つまり画面も内容も明るくはないし、重い。

 

 舞台は北アイルランド。といえば現在も一発触発の地域で犯罪やテロがいつおきても不思議ではない危険な地域。こうした背景をもった土地にイギリス本土から一人の女性警視ステラが派遣されてきた。最初、金髪の女刑事、カッコイイとかおもっていたが、とんでもなくシリアスドラマであった。

 

 目的は独身でキャリアをもつ一人暮らしの女性が殺された事件の解決。その死体は裸にされてはいるもののベッドの寝かされしかし凌辱の跡は無し。そして女性の下着がきちんとたたまれていたり、部屋がきれいに整えられている。

 

 この特殊な犯罪にステラが立ち向かう。彼女を北アイルランド警察に呼んだのはその地の警察署長である警視長。彼は過去にステラとも不倫関係もあった。だがこうした猟奇的な事件を解決できるのはステラだけと招聘したのだった。

 

 ステラは高級ホテルに宿泊しながら事件に挑み、過去にあった今回と同様な事件と関係すると看破、警視長に申し出るが、彼は連続殺人ではなく独自事件だと主張し、意見の対立をする。警視長は保身しか考えないつまらない男。

 

 とはいえステラは自らの考えを曲げず、捜査した結果過去の殺人と現在の殺人との共通点を見出し、犯人は非常に賢く一般人として適正ある職業に就き、表見(おもてみ)には犯罪者とはおもえない人間ではないかと推理する。

 

 とにかく現場に指紋ひとつのこさず、遺体もポーズをとらせ丁寧にあつかっている、つまりは異常者なのだがある種のこだわりが強く、犯行は尋常ではない何かが漂うが、ルールに沿っておこなっているようにも見える。つまり犯人は、常人に見えるが心に闇を持つサイコパスか。

 

 このドラマではステラだけではなく、主人公としてその犯人も同時並行で主人公として登場する。彼の名はポール。寡黙で信頼される心理カウンセラー。ということは人目にはその存在すら無きような男だ。夜間勤務の看護師の妻と6歳ほどの女の子、3歳の男の子の父親である。

 

 子煩悩で娘はパパが大好き。そして常に彼は子供を気遣う普通の父親である。彼は笑顔はいちども見せたことはないが。

 

 ステラとこの男ポールとの相手の見えない駆け引きや、ステラも笑うことのないハードボイルダーで先の警視長、同僚の男ばかりでなく女性と肉体関係を持つ肉食系。そんなドラマは静かにそしてハードに進む。

 

 ポールを愛していると慕う16歳の少女が彼の犯行の手伝いをしたりして、なかなか尻尾をださなかったところ、ステラがようやくポールを犯人として特定、尋問の上逮捕し、今だ行方不明の一人の女性が隠されている森に警官隊と行き、彼女をクルマのトランクの中に押し込められ大けがをしていたところを幸いにも発見。

 

 その現場検証にポールを立ち合わせていたが、彼を憎む男に銃で撃たれポールは瀕死の重傷を負った。その責任問題をステラが抱える所まで物語は進んでいる。

 

 リアルで暗い。しかし日本の刑事ドラマなど足元にも及ばない演出、俳優の演技とカメラワーク、そして心理面を前面にだしたストーリーの展開は魅せます。

 

 わたしが観ているのは縮小版ですが、お金を出せばフル画像が観られるとの宣伝が時々入ります。わたし、その気がありません、ですがフルで観た方がこの複雑なドラマはもっと見応えがあるのでしょう。

 

 アップが多いのもこのドラマの特徴。出演者みんな難しい顔をしていて、大笑いするシーンや、事件解決おめでとう、と言ったことも無しで常に内容はピリピリとした緊迫に満ちている。1カット、1シーン、1シークエンスが次にどのような展開を見せるのかわからない。

 

 といってドンドンパチパチのアメリ映画のようなアクションシーンは期待しない方がいい。むしろ時折数少ない銃撃シーンが痛快どころか、視聴者が撃たれたように鋭い痛みを感ずる。

 

 瀕死の重傷をおったポールが蘇生手術を受け生還したものの、過去の記憶が無く、ステラたちが調べると過去にも事件があり、彼が関与しているのが濃厚。現在の事件を含め、さてこれから彼を犯人として立証できるのかが焦点となる。被告人であるポールとステラの新たな闘いがはじまる。

 

 BS11土曜、日曜。午前9時59分から。録画してどうぞご覧ください。