光る君と小芝風花 | きつねの部屋ブログ版

光る君と小芝風花

 能登沖地震が起きたこの年の初め。いきなりの出来事でお祝いムードはすっ飛んでしまった。かわいそうなのが大河ドラマである。

 

 今年は大河ドラマとしては、はじめて平安時代中期が舞台。貴族社会を描いたドラマ「光る君へ」が放送された。

 

 大河ドラマで平安時代を描いた例としては、平家物語をベースにした源平合戦を描いたものが数作あった。しかしそれは武士の勃興期、つまり貴族、寺社などの門閥が衰退し始めた頃の数作のものがあるだけで、もろ平安中期の貴族社会そのものを描くものではなかった。

 

 貴族世界は前例主義。また貴族のその日の行動は、穢れをきらうために占いによって暦に示され、行動が決まる。その占いを任じられたのが天体を観察し、その位置から日々の吉凶を皇族、貴族たちに報ずる安倍晴明、彼も今回登場する。

 

 そのような設定の中ではあるが、型にはまった堅苦しさは微塵もない。というか時代を平安としても中身はもろ現代劇、それもホームドラマ。

 

 もう一つ、紫式部が主人公ではあるが、彼女の本名もわかっていないので、仮の名を「まひろ」と想像して着けたということだ。

 

 この頃の女子は名が残っていることはなく、父親の系図にただ「女」(むすめと読む)とだけ記されている。○○子と伝えられのるのは、ほぼ全て后*中宮になった女子。*中宮とは后が住んだ屋敷の名。

 

 後世に有名な「源氏物語」の作者の名「紫式部」もペンネームとして解釈するのが妥当で本名ではない。式部というのは朝廷の式部の省という式部職、すなわち式典を担当する役職名。

 

 幾人かいる天皇の后のうち特定の后の女房(世話係り兼話し相手)として存在していた。同じく作家として有名な泉式部も同様な身分。また女房の房も部屋のことで、これもまた直に名を第三者が呼ぶことせず。

 

 男性名も外では道隆とか道兼などと他人が諱(*いみな)で呼ぶことはなく、頭の中将殿と官職名で呼び合うか、位階で呼ぶかまたは住んでいる屋敷のある地名で、例えば一条殿とかだ。なんせ中級貴族を含め、官僚はすべて藤原氏なので。

 

 *諱とは「忌み名」であって、家族の内でも父親しか息子の諱を呼ぶことは不敬にあたる。また家族内でも通常は三郎、のような生まれた順番の通称で呼ぶもので、母親も諱は口にすることはなかったと聞いている。

 

 ともかく、こうした堅苦しい平安のましてや貴族世界を舞台にしたドラマ、現代劇風にして一年間も視聴者に飽きさせず成功するのかが気がかりである。

 

 脚本が大石静というのもどうなのか。この人現代の恋愛ものを得意としていて、時代劇、それも史料のほとんど残っていない家庭劇となればこの人の力量でもちこたえられるものなのか心配である。実際第一回を視聴した限りでは、平安時代の貴族社会が軽い。

 

 それと出演俳優全員にいえることなのだが、後の藤原の道長の姉である詮子。天皇家に入内を果たす役であるが、吉田羊が適役なのか。当時の女性の輿入れは12、3歳の年齢の頃からで、さすがにフィクションとはいえベテラン俳優の吉田羊では母親役での出演が適役かと。

 

 入内させるならもう少し年若い女優さんを起用してもよかったのではないだろうか。なにせ目的が天皇の男子を産むことで、実家の格を上げるためであるので。

 

 男子も名家の嫡男であれば15,6歳で妻を娶る。なにせ平均寿命が40歳から50歳くらいの間であったので、そうせざるを得なかった。また貴族は源氏物語にあるように、正妻はいても通婚が普通、なので家庭劇はどうなのだろう。といって大人が演ずるのは仕方ないので目をつぶろう。

 

 三位以上である公卿家の父親はとにかく天皇の后の父、そして天皇の血を受けた皇子の祖父になることを望む。この皇子が東宮(皇太子)から天皇になれば、それこそ摂政や関白の位に付け政治権力を最大限に得る最短な道。

 

 これから吉高由里子の登場となる。笑顔も良く似合うカワイイ人ではあるが、厳かさ、雅さを求められる宮廷人としてどうなるであろうか。

 

 タイトルの「光る君へ」の君とは誰の事だろうか。紫式部が表した源氏物語の「光源氏」の事だけではあるまい。この時代君は天皇など貴族などの臣が使える目上の人物のこと。天皇その人を直接呼ぶときには御上(オカミ)である。最近では巷で歌われることのない国歌である「君が世」の君は、天皇の事。

 

 その「君」、昭和の時代には庶民であっても男性同士で友人などを君、自分を僕といっていたのがその名残。相手を上げ、自らを下におく謙譲語。

 

 近頃は上司から直接名前でよばれる部下。でも上司が部下にキミ、と呼びかけることはあっても「君」と呼ぶことはなくなったような。この場合キミといっておきながら自分の方が目上だ、といった意識があるように思う。

 

 とにかく違和感を感ずる現代語会話の「光る君へ」であり、風俗は平安でもふるまいは、ほぼほぼ現代の物語。果たしてウケるのか。ロケ地も平安京には見えないけれど大丈夫か。

 

 もう一つは昨年の小芝風花の活躍だ。NHK、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、NHKBS、とドラマの全て主演かヒロインを勤めた。あの小柄な体でよくもまぁ大活躍。それぞれの役柄は異なるが小芝風花であることはよくわかる。

 

 昨年末に引き続きNHKBSでも時代劇「金と銀」に出演、反物を売る中堅どこの店(オダナ)の勝手で下働き奉公する女子(オナゴシ)役。がその店の番頭から商いの才を認められ一躍若旦那の嫁になり、傾きかけた店を商才を発揮、繁盛させるという大役。

 

 コミカルな役も時代劇もこなす才能はあるが、気になるのはどの役を演じても悪い意味ではなく、器用さが目につく小芝風花であることだ。真面目だし、人好きのする容貌でわたしも彼女を応援しているクチ。であるが、あまりにもあっちこっちに出演しているので代表作といえるものがないのでは、と気になる。

 

 オスカープロモーション所属ときく。あのひと頃出ずっぱりであった武井咲のようにならないようにと願う。心配ないかな、武井のように演技下手ではないから。ただハードスケジュールで体を壊さないように、と願っている。