四谷の鯛焼き | きつねの部屋ブログ版

四谷の鯛焼き

 前回の『ドキュメント24時間』。2019年に制作された、題は「冬の東京 あのたい焼きをもう一度」。

 

 東京は四谷にある創業60年にもなるたい焼き屋。開店早々からいつもながら大繁盛。ここの鯛焼きは戦前から作られている製法で、ちまたでは「天然物」「一丁焼き」といわれている。

 

 鋏のような型を開き半身の鯛の型の上にさっと油を塗り、溶かした小麦粉、アン、を載せ、その上に再び小麦粉をかけ、蓋をする。

 

 一列に型を炉に並べその端から職人が横移動し、順番にガラガラと音をたてながら炉の上で型を回転させていく。それを数回くりかえす。

 

 ぱっと型を開くと出来立ほやほや、熱々のたい焼きが姿をあらわし、職人さんがお客の目の前で型から受けにおとしてくれる。これが連続してのパフォーマンスとなって、観ていても楽しい。

 

 わたしらの子供の頃はこれがたい焼きであった。しかし1975年テレビで「泳げたいやきくん」という歌がヒット。以来たい焼きがブームとなり普及してたい焼きの店があちこちにできた。しかし、従来の製法では職人技が必要。

 

 で、今川焼、太鼓焼きの手法を使い、鯛の姿した複数の型を並べた銅板に、溶かした小麦粉とアンを入れ再び小麦粉をかけ、その上から同じ鯛の姿の型を被せ焼く大量生産方法になり、一つ一つ作る従来の物を「天然物」。そして”大漁”にできるものを「養殖物」というようになった。以来子供たちはこちらがたい焼きかとおもってしまう。

 

 「養殖物」は小麦粉がぽってりして、あんこの量がすくないかなぁ。

 

 「天然物」の味わいは、熱々で薄い皮がパリッと香ばしく特に型を外れた小麦粉(バリ)がおせんべいのように鯛焼きの本体の脇についていて、これがまたウマイ。本体も中のあんこがびっしりで口の中に広がり。ハフハフして冬の寒い外で食べるには最高です。

 

 残念ながら、「天然物」たい焼きは絶滅危危惧種的になり、東京ではこうしたたい焼き屋さんの数は下町に数えるほどしか残っていない。わたしが子供の頃は今川焼きよりチョッピリ贅沢な、でも庶民的で親しみのあるお菓子でした。

 

 そんな「天然物」のたい焼きをほうばる人々。様々な人生を見つめた温かくほっこりする、冬には適当ないい番組であった。