イタリア映画ひまわり | きつねの部屋ブログ版

イタリア映画ひまわり

 『ひまわり』は、1970年に公開された映画だ。監督はイタリアのビットリオ・デ・シーカ。主演は当時イタリア出身でヨーロッパでの大女優のソフィア・ローレン、そして男優もこれまたイタリアを代表しフランスなどの映画出演も多いマルチェロ・マストロヤンニ。


 第二次大戦がはじまるころジョバンナ(ローレン)とアントニオ(マストロヤンニ)二人は出会い、結婚を誓う。そして兵役に就く前に二人は結婚し、12日間の特別休暇のあとアントニオはアフリカ戦線に送られる予定であった。

 

 しかしアントニオは兵役を拒否するために詐病をし、しかしそれがバレて過酷な戦場であるソ連へと送られてしまった。

 そして終戦。何年もの間、一人残されたジョバンナは彼の母親の面倒をみながら帰りを待ちわびるが消息はなく、おもいきって彼が闘っていたというソ連の地までいくことにした。

 広大なソ連のどこに彼が居るのか、いないのか、彼の写真一枚をもち手がかりも宛てもない言葉も通じない旅が始まる。行きついたところは水平線まで覆いつくす膨大なひまわり畑。聞けば多くの兵士たちがこのひまわり畑の下に眠っているという。

 

 咲き誇る黄色の花が美しくも彼女の願いを叶えられないのではないかとの無力感を与える。

 

 随分と前に観た映画だが、この景色は今でも思い出す。


 そんな彼女がなんとか彼らしい人物の噂を聞き、いわれた場所に行くと若い女性マーシャと幼い女の子がいて、彼女の話しだと、アントニオは戦争中に負傷、記憶をうしなっていて冬の草原で倒れ、凍死寸前のところで地元のマーシャに助けられ彼女に介抱された後、今は夫婦になっていた。

 ジョバンナは駅にマーシャと同道、到着した列車からは大勢の労働者たちが降りてくる。その中にアントニオもいて、彼はマーシャに抱きつこうとすると、彼女はジョバンナを指さす。

 驚くアントニオ、立ち尽くすジョバンナ。二人の間には見えない隙間が生じていた。なにもかも悟ったジョバンナ、イタリアへと帰ることにした。

 傷ついたジョバンナは男たちとの奔放な生活を始め、数年たった。そしてある日アントニオがイタリアに戻りジョバンナの元へとやってきてロシアで別れる時に約束した毛皮を持ってきたのだ。そこには生まれたばかりの男の子の赤ん坊がいて、名をジョバンニという。 

 元夫婦だった二人、それぞれ別に家族を持ち互いに干渉することを止めようと決めた。駅で汽車に乗りアントニオを見送るジョバンナ。汽車がゆっくりホームを走り去っていき、それを見送るジョバンナ、涙が止まらない。

 そして有名な「ひまわり」のテーマ曲は巨匠ヘンリー・マンシーニの作曲。哀しく、切ないこの曲は観客の心を揺すぶる。

 この映画の撮影は現在紛争中のウクライナで撮影されていて、映画にでてくる広大でインパクトのあるひまわり畑はおそらく今もある。


 ひまわりの花はまだ咲いていないが、ここにロシア軍が戦車を走らせている、そう思うだけで映画の内容に重なってきて戦争の罪を感じる。

 

 先日この映画はウクライナ情勢を受け東京で単館上映されたと聞いた。戦争によって引き裂かれた夫婦と家族。こうした光景は今現在もリアルタイムで起こっていることだ。

 ただ映画と違うのは「物語」ではない、ということ。家族が離れ離れになるが、当時はイタリアを含んだソ連などの連合軍とドイツとの闘いであった点だけが違う。


 そのソ連がロシアとなり、こんどは隣国へ攻め入っている。人間のやることは第二次世界大戦の終戦から80年近くたっても一向に変わらないのだ、虚しい。

 

 そして国連は二度とこうした国際紛争での解決手段として戦争は起こさないよう先勝国であるソ連現在のロシアに議決への拒否権を永遠に与えた。

 この国が戦争を仕掛けても止める手段がない。先見の明のなさ、情けない。