そろそろショベルヘッドのエンジンOHが、本格化してきそうです。
ただ、Hさんは他のお客さんの作業にも追われ、忙しい身ですので・・・
ちょっと手が空いたら、自分のショベルを手掛けてくれる・・・そんな感じです。
良いんですイインデス。
(・ω・)ノ
慌てる事はありませんです♪
じっくり取り掛かって頂いて、満を持して完成して頂ければ。
では早速・・・
最新の作業内容を、順に紹介していきます。
まずは、ケース内部をグリプタル処理から。
しっかりと、厚塗りしてもらってます。
反対側も、念を入れて・・・
こちら側は、あくまでも念の為の処置です。
ここまで念入りにしてくれれば、間違いないでしょう。
で、このグリプタルとは、一体・・・!?
簡単に分かりやすく言うと、オイルの漏れ止めです。
どういう仕組みで、まずオイル漏れが発生して、どういうふうにオイルが滲み出てくるか。
詳しくは割愛しますが、とにかくこの処置を施す事で、オイル漏れ・滲みを軽減・・・
というか、ほぼ漏れを止める事が出来ます。
なぜ、こんな処置を・・・!?
それは、アルミ鋳造の技術の問題が大きいです。
現代のアルミ鋳造技術ならともかく、昔の技術は当然、今のレベルには遠く及びません。
現代の技術で鋳造されたアルミケースなら、こんな漏れ方・滲み方は殆ど起こりません。
要は、コーティングをして、オイルが漏れないようにする・・・その為の処置です。
次に、フライホイールに移ります。
サンブラで表面の汚れをキレイにしてくれました。
右側がサンブラ前、左側がサンブラ後・・・全然違いますね。
そして、スラストワッシャーを打ち付けていきます。
こんな感じに・・・
ワッシャーを打ち付ける、専用の治具で打ち付けていきます。
銅製のスラストワッシャーのフチに、いくつか打刻でもしたような痕跡が見受けられると思います。
これがワッシャーを打ち付けた、動かぬ証拠となり・・・
この打刻が多ければ多い程(まぁ限度はありますが)、バランスを取る作業がなされた事になる訳です。
このスラストワッシャーは、消耗品なので、その都度交換すべきですね。
そして、ワッシャーを打ち付けたら、いよいよバランス取りの本番です。
しかも、かなりの長丁場となります。
上の画像でも分かる通り、フライホイールは厚みが違っていますので、それを踏まえた上で・・・
最終的には、フライホイールが左右一枚ずつ、計二枚となり・・・
そこからコンロッド・・・ピストンと取り付けられるんですが。
この重量のバランスを取る事・・・
言葉で言うのは簡単ですが、内容はかなり深い部分まで及び・・・
この行程無くして、バランスの取れた長寿命なエンジンは、完成しない訳です。
要するに、フライホイールの中心から、仮に軸を持ち出して・・・
水平に置かれた治具に乗せ・・・
フライホイールと二つのピストン、そしてコンロッドの重量が、キチンとバランスが取れ・・・
治具の上で、どこでも「静止していなければならない」んです。
仮の重さ(ダミーウエイト)を使い、ピストンの総重量を割り出し・・・
フライホイールから伸びる軸棒が、治具の上で回転してしまうようだと、バランスが取れていない証拠。
黒い塊のようなダミーウエイトを取り付け、どの位置に来ても静止していなければならない。
厳密には、もっと深く様々な要素が絡んできますが、分かりやすく説明致しております。
完成形のフライホイールは、二枚ですし・・・
ピストンの重量・・・と、単純なハナシでもありません。
ピストンピンやピストンリング、そこからコンロッドの大端部・小端部・・・
更には○○%の重量・・・という、少なくとも自分程度の者が、すぐさま理解出来るようなものではありません。
そして、ここで自分が綴った説明は、Hさんのようなプロから言わせれば、全然事足りていない。
ただ、まるでマトハズレな説明ではないハズですので(汗)。
もっと分かりやすく例えると・・・
自動車のタイヤ・・・ホイールバランスって、あるでしょう?
タイヤも例外なく「回転物」ですので、これもバランスが取れていないと、ある速度域に達すると・・・
グラグラ・・・ブルブル・・・ハンドルから大きな振動が伝わって来て・・・
最悪、タイヤが車から外れてしまう・・・なんて事にも。
ハーレーのエンジンも、原理は同じです。
まずは、混合気を吸入。
次に燃焼室で混合気を圧縮させ、爆発させる事でピストンを押し下げて・・・
燃焼した排気ガスをマフラーを介して排出され・・・
また燃焼室に混合気が吸入され・・・
この繰り返しです。
上下運動を回転運動へと「変換」させて、推進力を得ている訳ですね。
そして、上下運動「だけ」で、仮にも推進力が得られる構造ならともかく・・・
ハーレーダビッドソンのエンジンは、そうはいかないので。
重たく大きいフライホイールを、グルングルンと回転させる事で・・・
強烈なトルクを発生させているんです。
その、グルングルンと回るフライホイールには、上下運動するピストンが付いています。
上下運動・・・とは言え、その重量は無視出来ないので・・・
フライホイールの重量とのバランスを取らないと、ホイールが外れてしまうクルマのように・・・
やがてその機能が破綻してしまうんですね。
ちなみに、時々見聞きするのが・・・
カムやクランクのシャフト類の「芯をキチンと出す」事を・・・
「バランスをキチンと取ったエンジン」
と、言ってしまうお店が、少なからず存在するようです。
つまり・・・
芯を出して組んだ=バランスを取った
・・・と、勘違いしてしまうんです。
もはや、芯を出して組む・・・などは、当たり前の事です。
例え芯を出して組んだとしても、肝心の重量バランスが徹底的に行われているか、というと・・・
全然、バランスは取れていない。
熟知していないと、絶対にハーレーのエンジンのOHは出来ません。
エンジンに限らず、ミッションやクラッチもそうです。
キチンとOHされていないと、ブローしてしまうのも時間の問題です。
まだまだ長く乗りたいハーレーをお持ちなら。
特に、旧ければ旧いほど、OHを検討すべきだと思います。
丁度、今現在、Hさんのお店には・・・
駆動系のブローで、昨年緊急入庫したツインカムがあります。
地元のハーレーディーラーでは、どうやら手に負えなかったらしく。
Hさんのお店を紹介され、辿り着いたそうで。
ついでに、と・・・エンジンもこれを機にOHを依頼。
全て純正部品を注文との事で、実に総額は・・・大変な額に・・・!
どうしても買い替えはしたくないらしく・・・
幾ら費やしてでも、そのツインカムを直したいらしいです。
ただ、昨年の確か夏頃に入庫だったか・・・
現在も殆ど、純正部品は揃っておらず。
今シーズンも、絶望的なのかも知れません。
それでも、費用も時間も掛かってでも、直したいらしいです。
ただ・・・ディーラーでも修理を投げられた一件です。
どこまでの作業内容となるか・・・
なんとなくでも、お察し下さい。
まぁ・・・今回の自分のショベルは、OH有りきのプロジェクトですので。
さながら新車のような一台に仕上がる予定です。