そのパイナップルは小さく扇形に切り刻まれて、透明なプラスチックの容器に入っている。
カットフルーツというやつだ。
わたしはパイナップルが好きだ。
だから買ったのである。
2日前のことだ。
いきつけのスーパーの果物売り場で、心細げに佇むこのパイナップルを見つけたのは。
ラベルには「パイン(ブロック中)」の文字と、¥198(税抜き)の表示の横に30%offのシールが貼ってあった。
それを見た瞬間、これは天の思し召しか、わたしは唐突にパイナップルが食べたいと思い、なんなら最初からそのつもりでしたわたしはパイナップルをこのパイン(ブロック中)を買うためにここに来たのです今まで生きて来たのでありますと言わんばかりにその容器を掴み取り、買い物かごに投げ入れたのだ。
半ば運命的な、ドラマチックとさえ言っても良い出逢いを果たし、ウキウキと家に帰ったのだが、浮かれていたのだろう、何を思ったかお酒を飲んでしまったのである。
お酒を飲んでしまえば当然うたた寝をすることになり、2時間ほど惰眠を貪った後、慌てて洗い物をしたりなんだりで、わたしはあれほど惹かれあったパイナップルの存在を少しも思い出さなかった。
昨夜は衝動的にほっともっとの特から揚げ弁当を食べたくなり、冷蔵庫からは飲み物を取り出したくらいで、中をろくに確認もしなかったのである。
そして今朝。
冷蔵庫の中に、見覚えのあるプラスチック容器と忘れていた気持ちを見つけた。
ついに恋い焦がれたパイナップルとの再会と相成ったのである。
しかし。
2日前の時点で見切り品だったパイナップルは消費期限が過ぎてしまっていたのである。
ご存知だと思うが、賞味期限と消費期限は似ているようでかなり違う。
賞味期限は「この日付以降は味の保証はいたしません」といった意味であり、少々過ぎたくらいでは問題が無い。
それに比べて消費期限は「この日付以降のやつ食べたら死んでも知らんぞ」という意味であり、食べたら当然やがて死ぬ。
生きるか死ぬか、わたしは命の選択をしなければならない。
わたしはパイナップルが好きだ。
今、パイナップルの前にはわたしがおり、パイナップルはわたしを見つめている。
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