〇ハイソカーの高級ホイール

昔のことですが、白いクラウン、マークⅡ3兄弟、スカイライン等高級車がBBSのメッシュのアルミホイールをはいていた記憶があります。これらはアルミの塊を9000トンを含む大型プレス機で押しつぶして整形して製造されたものです。

 

また、アルミの鍛造ホイールだけでなくマグネシウムの鍛造ホイールも生産しており、0,1秒レベルで速さを競うF1、ル・マン24時間レース、WRCラリー等のレーシングカーに装着されています(リンク先1参照)。

 

BBSのホイールが高く評価されているのは、鋳造(溶かしたアルミを鋳型に流し込んで塊を作る製造方法)では鋳巣(空洞)が出来て脆い部分ができる可能性があるのに対し、鍛造のホイールはプレスすることで内部の隙間をつぶし、結晶の微細化、結晶の方向の均一化ができて強度が高まるからです。イメージとしては何回も玉鋼を叩いて作る(鍛造)日本刀みたいなものかと思います。

 

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、BBSホイールは富山県の工場で生産されています。富山県は戦前から立山連峰からの急流を活かしてダムを造り水力発電を行ってきました。このため、戦前でも電気料金が日本一安かったため、アルミの加工に大量の電力を必要とするアルミ産業が発展してきました。全国のビルや住宅のアルミの窓枠も富山県で多く生産されてきました。その流れかと思いますが、BBSも富山県でのアルミホイールの生産を行っています(リンク先2参照)。

 

〇ヤマハのハンドル

前置きが長くなりましたが、2002年にアーチェリー事業から撤退したヤマハのハンドルもマグネシウムやアルミ鍛造で製造されていました。

ネットで昔の記事を見たところ、ヤマハの開発コンセプトは小柄な日本人に合わせたハンドル等の開発だったそうです。確かにヤマハのハンドルは軽いです。随分昔のα-EX(1987年発売)とα-DXは実測1,000gを下回っていました。マグネシウムを材料とするEOLLA(1991年発売)では1,100g、アルミ鍛造のFORGED(1996年発売)では1,150gです(FORGEDは英語で鍛造という意味)。ただ、ヤマハ最後のハンドルとなったFORGED2(2001年発売)では1,340gになりました(リンク先3参照)。この重くなった点を指摘してヤマハ最悪のハンドルという方もいます(リンク先4参照)。

 

〇ハンドルの重量増加

しかし、最近の大手メーカー、WIAWISやHOYTでは弓の発射時の安定性を狙って重くしてありますと宣伝して25インチで1,400g近い物もあります。WIAWISの1,315gのカーボンハンドルTFT-Gは「的を狙う時に弓が安定すると、安心して矢を放つことができます。TFT-G ハンドルは、ハンドル重量を重くすることで弓全体を安定させ、的をしっかり狙えるヘビーウェイトハンドルです。」と広告されています。軽いといわれるWIAWISのアルミハンドルATF-Xで1,280g、カーボンハンドルINNO CXTで1,200g~1,300gです。

 

今となって考えれば、ヤマハのFORGED2もハンドルの重量増加の流れに乗って開発コンセプトを変更したとすれば誤った判断ではなかったのかなと個人的には思います。また、アルミ鍛造にすることで軽量化、強度の高まり、しなやかさによる振動吸収向上もあるということなので、そこに着目すればそうそう悪いハンドルではないのかなと素人考えで思います。私の技量では鋳造と鍛造の差を認識できないとは思いますが。

 

〇国内での弓具の生産が行われないことが残念

他のメーカーのアルミハンドルは、鋳造したアルミの塊をコンピューター制御のNC加工機で製造しているのかなと勝手に推測しています。

今ではネットでヤマハのFORGEDと検索すると、ヤマハのアイアンのゴルフクラブが多く出てきます。弓具の生産において日本としての技術力はあっても企業の事業として採算性がなくなった結果だと思いますが、国産の弓具が現在も国内で生産されていれば、円安による輸入時の影響も受けにくく、アーチェリーを始める人の経済的負担も少なく済んだのではないでしょうか。近年は毎年弓具の価格が値上がりしているようですので、アーチェリーの普及を図る点からも残念な状況です。

 

夢物語ですが、BBSの鍛造ホイールのように、富山県のアルミ産業の技術と設備を活用してアルミ鍛造のハンドルを作ってくれる企業があればと思います。

 

〇リンク先

1 MOTORSPORTS | BBS JAPAN (bbs-japan.co.jp)

 

2 BBS鍛造ホイールが「MADE IN JAPAN」であるワケ | クルマ情報サイトーGAZOO.com 

 

3 YAMAHA(ヤマハ)の弓具と機能一覧 | アーチャーレポート | アーチェリー総合情報サイト (archerreports.org)

 

4 有弓休暇(2) (a-rchery.com)