一足早いですが、クリスマスは社長シリーズ!
久しぶりに書いてみました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ご馳走様。今年のディナーも最高だったよ。
来年ももう今から予約するから」
「はは、いつもありがとうございます」
シェフが頭を下げた。
イブの夜はこの気心の知れたシェフがいるフレンチのお店で、ソンジェが直接シェフに依頼したディナーコースを頂くのが毎年恒例になっていた。
「こちら、お持ち帰りのケーキです」
こうしてケーキを持ち帰るのも毎年恒例。
「ありがとうございます。ケーキも毎年楽しみです」
「イメージ伝えてお願いしてるの俺だからな」
ソンジェが横から口を出す。
「はいはい、ソンジェのセンス込みで楽しみにしてるのよ」
「ふふ、今年も楽しみにしてて」
私たちは挨拶を済ますと、呼んでおいたタクシーに乗り込んだ。
「今日のワインすごく美味しかった!
銘柄聞いてくればよかったな…。
ね、ソンジェわかる?」
「え?」
「今の話。聞いてなかった?」
「え?あ、えっと、ワインね。また聞いておくよ」
「…どうしたの?」
「え?何が?」
「そういえばソンジェ、今日全然飲んでなかったね。
もしかしてどこか体調悪いの?」
「いや、全然」
「そう…?」
タクシーに乗ってからソンジェの口数が急に減っていた。
いつもなら料理の感想を話すところなのに。
マンションに到着し、エレベーターで最上階へ上がる。
その間も黙ったままで、やはり様子がおかしいと感じていた。
玄関のドアを開け、部屋の中へ入る。
長い廊下を抜けて広いリビングに辿り着くと、この間の休日に二人で飾り付けをした大きなクリスマスツリーが出迎えてくれる。
ケーキをテーブルの上に置くと、吸い寄せられるようにツリーのそばへ向かった。
シンプルな飾り付けだけれど、ホワイトとシャンパンゴールドのライトがとても美しく光っていた。
「きれいね、今年のツリーも」
「うん」
ソンジェもそばに来て、二人でツリーを見上げた。
「あ、ケーキすぐに食べる?」
「ヒロ」
「ん?」
ソンジェがコートのポケットから何かを取り出した。
現れたのは見覚えのある…リングケース。
「もう待てない。もう一度プロポーズさせて」
そう言うとその場に跪いた。
「必ず幸せにする。結婚しよう」
ソンジェがケースを開けると、ツリーのイルミネーションよりも煌めく、大きなダイヤのリングが現れた。
あの時受け取らなかった、ハリーウィンストンのエンゲージリングだ。
「…もう、プロポーズしてもらえないかと思ってた」
「そんなわけないだろ?
さあ、返事を聞かせて」
私は大きく頷いた。
「ソンジェ、ありがとう」
ソンジェはケースからリングを外すと、薬指に嵌めてくれた。
「すごく綺麗」
「やっと渡せた」
「待たせてごめんね。ソンジェ、愛してる」
「俺も。愛してる」
ソンジェは立ち上がり、私を抱き寄せた。
私達は輝くツリーのそばで、抱き締め合った。
「ホッとしたら腹減った。
実は緊張してて今夜のディナー何食べたかあんまり憶えてない」
「えっ?シェフに最高とか言ってたのに!」
「仕方ないだろ。
前回プロポーズ瞬殺されたのがトラウマになってんの」
「う、それを言われたら…。
じゃあ今からケーキ食べようか」
「いや、その前に俺はヒロを…」
そう言いながら彼は顔を近づけ、あっという間に唇を奪われた。
「ん…!待って!」
「待てない」
手はいつの間にか腰に回されている。
「待ってってば!先に…」
「シャワー浴びて、ケーキの蝋燭に火を灯してフーッてやってから…でしょ?」
「そう」
「わかりました。儀式は大切だよね、お姫様」
「わかればよろしい」
「シャワーは一緒に浴びていいよね?」
「…うん」
身体が離れる瞬間に軽くチュッと口付けたソンジェは、楽しそうに笑った。
来年も再来年も、これからもずっとずっとこうして彼とクリスマスを過ごすだろう。
『必ず幸せにする』
彼はそう言ってくれたけど、私はもう充分に幸せだった。
「…ありがとう、ソンジェ」
私はクローゼットへ向かう彼の背中に、そう呟いた。
______Merry Xmas.
end.