『ソンジェの部屋』セットへ入るとベッドの上に座った。





『お前は昔から典型的な、釣った魚に餌をやらないタイプだからな』



その言葉が鳩尾にクリーンヒットした。



ユナクのプランに偉そうにダメ出ししたけれど、俺には恋愛スキルがない。



だからと言って自分を卑下するつもりはなく、スキルを上げようとも思わない。



『彼女』とは、友人のような関係でいたい。
会いたい時に連絡して、都合が合えば会う。
相手を縛るつもりもないし縛られたくない。



だから会えなくても気にしない。
そんな時は一人の時間や、他の友達との時間を楽しめばいい。
記念日も特別な事は何もしない。
それでいて、お互いの力になれるような関係。



今までそんな恋愛をして…



来れただろうか?




「私って本当にあなたの『彼女』なの?」
「こんなはずじゃなかった」
「もっと大事にしてくれると思った」



言われ続けた言葉が次々と浮かび上がる、、、。





ベッド脇に小道具の恋愛マニュアル本を見つけると、手に取ってパラパラとページを捲る。



兄さんのようにロマンチックの塊りみたいな演出をしろと?
俺には無理だ。



本を放り投げてベッド横になろうとして、思い止まった。
まだ撮影は続く。
セットされた髪に寝癖を付けてはいけない。



俺は身体を起こすと、もう一度、本を手に取った。











彼女は気まぐれで
連絡もこまめじゃないから
every time タイミング待ち続けるよ
何も焦らない
待ち合わせの時間来るまで
コーヒーで過ごす




撮影現場では僕らの新曲が流れていた。



この歌詞の『彼女』は、まるでソンジェのことみたいだ。
ふとそんなふうに思い、僕は笑った。



撮影再開を告げるスタッフの声が聞こえた。






「おーい、ソンジェー。撮影が始まるぞー。
どこ行った…」



ドアが開き、『ソンジェの部屋』の中から本人が現れた。



「お、ソンジェ…」



「…昼の公園で自転車に乗る。疲れたら一緒にアイスコーヒーを飲む」



「は?」



「電車に乗って適当な駅で降りて、知らない町を散策するのもいい。
おいしそうな店があれば、そこに入る。
夜は…」




「なんの話だ?」



「プランB」



それだけ言うと、ソンジェは先に『キッチン』に向かって歩き出した。



「ぷっ…ははは!」



この短時間で何があった。
どんな心境の変化だこれは。



僕はその背中を追い掛けた。



「おい、ソンジェ、『夜』はなんだ?続きは?
くーちーびーる奪ったら needless to say〜♫」



ソンジェは振り向くと、ため息をついた。



「なんだよ」



「もういい」



「もういいって、なんだよ。ていうか、その目やめろ」



「はーい、撮影始めマショー」



「ソンジェ!」








…ダブルデートは無理かもしれないけど、
いつかそれぞれのデートプランで、お互いの彼女を楽しませよう。



なぁ、ソンジェ。








end.












☆☆☆☆☆☆



こんな感じになりましたー。
楽しい二人の雰囲気が出ていればいいな(*゚∀゚*)