「…なぁソンジェ、ほんとにダブルデートするとしたらどうする?」
新曲のPV撮影の休憩時間、スマホをいじっているとユナクが突然そう訊いてきた。
まったく…2人ともシングルなのに何を言い出すんだ。
しかも、ダブルデートって…。
新曲のコンセプトにイチャモンつけるわけじゃないが、なんでわざわざ他のカップルと一緒に行動しなきゃいけないんだ?
デートなら彼女と2人ですればいいだろう。
まったくもって不毛な話題だった。
「そう言わずに付き合えよ。
は〜〜な〜そ〜〜 それぞれのデートプラン♫」
ユナクってこういうところがオヤジくさ、、、。
結局俺は、ユナクの話に付き合うことにした。
「…ダブルデートじゃなくてさ、兄さんは彼女とデートするならどんなことするわけ?
それ教えてよ」
聞いてみたけど、その内容はカフェでマネキンのマネで待ってるだの、彼女の好きなラブストーリー映画を観に行くだの、挙げ句の果てには車のトランクにはケーキとワインとプレゼントを用意してるだの…ベタすぎて胸焼けがしそうだった。
俺が彼女ならもう会わない。
散々ダメ出ししてやった。
「じゃあさ、ソンジェはさ、どんなデートにすんの?」
「え?」
「俺のはプランA。お前のプランBはどんなのだよ?」
まぁ、普通はそう来るよな。
しばし考えて…
「…連絡して、都合ついたらご飯を食べに行く」
「……」
「……」
「…それだけ?」
「それだけ」
「もっと他にあるだろー?」
「……サイクリング」
「…ふーん、まぁ、健康的でいいよね。
晴れた日の公園とか気持ちいいだろうし」
「夜」
「夜!?」
「日焼けしなくていいじゃん」
「ま、まぁな…。他には?」
「え?」
「『え?』って…もしかして、終わり?」
「うん」
「お前〜!それでよく俺にダメ出ししたな!」
「いいんだよ。これが俺のスタイルだ」
「俺のスタイルって…デートの要素が全くないな」
「なんで?漢江沿いを走れば夜景が見える。
きれいじゃない?」
「いや、それでも自転車2台で並走してって、、、」
「一列も変だろ」
「そりゃそーだけど。
はぁ…、お前は昔から典型的な『釣った魚に餌をやらない』タイプだからな」
「なんだよそれ」
「いいか、それが許されるのは20代までだ。
これからどんどん出会いが少なくなって、出会ったとしてもそんなんじゃすぐ別れるぞ。
お前も将来幸せな結婚をしたいなら、そのスタイルは変えろ」
「む…。兄さんの言ってる事はわかるけど、彼女ナシの二次元好きに言われたくない」
「おいっ!俺の恋愛対象は三次元だ!」
「もういいだろ?この話。終わり」
俺は立ち上がると、『ダイニングキッチン』セットを出て行った。