私は週に三回、某ショッピングモールでテレワークに勤しんでいる。

 

Wi-Fiは使い放題だし、運が良ければ電源付近で閉店までバッテリーを気にすることなく作業に打ち込むことができる。何より、背もたれ付きのソファーの存在が殊更デカい。


 

今日は、そのショッピングモールで毎日徘徊している浮浪者について話そう。

 

その男は、かつて工事現場で働いていた。

 

黒光りした肌と、独特な形のメガネ。最も印象的なのは、原始的に突き出た鋭利な顎である。それを確認するや、私はその男がかつて路上で工事現場の誘導員をしていた男であることに気付いた。

 

穴が空き、ボロボロに変形したアディダス・スーパースターを草履のように履き、ドラキュラ城の執事の如く丸まった背中を突き出しながら、その男は自身とは見合わないおしゃれなショッピンモール内を宛もなく闊歩し続ける。朝から晩まで飽きることなく、何をするでもなく、只、ひたすらに歩き回っている。

 

稀に付近の商店街まで足を伸ばし、外の空気を感じながら周囲を徘徊している様を見ることもあるが、主戦場はショッピングモールである。

 

別に彼は、何かと戦っているわけではないのだろうが、何か企んでいるような気がしてならない。まあそれは多分、私の思い込みでしかないのだろうけど。

 

ただ、彼も生身の人間である。

人並みに腹も減るだろうし、喉も渇く。

先日は商店街にある某セブンイレブンで購入したホットスナックを片手に、それを貪りながら歩いている様子を見た。

 

その刹那、私はある疑問を覚えた。


 

一体どこにそんなお金があるのだろうか?


 

何せ彼は、どこからどう見ても完璧な浮浪者である。

きっとその日はたまたまお金を拾ったからそれを購入できたのでは?

その時はそう思った。

 

しかし後日、彼の食事はさらにグレードを上げていた。

何と、某亀田製菓の柿の種ファミリーパックを片手に、小袋を一つずつ貪っていたのである。

 

もうこれは疑いようがない。

 

一袋500円近くはするであろうその豪華パックを購入できるほどの財力はあるのだ。

 

正直、私の財布の中身よりも潤沢なのかもしれない。

何せ私には、そんな豪華なツマミを購入できる程の余裕はない。

何と羨ましいことか。

 

日々忙しく働いている私よりもストレスフリーであることは間違いなさそうだ。

 

しかし、彼は一体何のためにそんな生活をしているのだろうか?

柿の種ファミリーパックが財力の限界ではないのなら、たまには漫画喫茶やネットカフェに出向き、シャワーでも浴びたらよいのに、と思えてならない。

 

なぜ彼は多少のお金を持っていながらそんな生活を送っているのか?

一体何のために? 仕事がないなら職安に行けばいいし、家がないなら支援センターを利用すればいい。何より失業中なら生活保護を受けられる可能性だってある。

 

単に無気力なだけなのだろうか?

 

私は、どんなに惨めな姿に成り下がろうと、人生を諦めたくはないと思っている。

たまにいいこともあるし、先が暗いとは思えない。

 

まあ、ひとそれぞれだ。

 

何かをする理由は、当人にしかわからないものだし。

 

そう言えば私もたまに他人から言われる。

なぜ事業を興さず、そんな潰れそうな会社で働いているのか? と。

 

それは、勇気とお金がないからだ。

 

もしかしたら大した理由などないかもしれない、と思う。