
「教室経営者が学ぶべき効果的なコミュニケーションの秘訣」というテーマで、お伝えしていきたいと思います。
先生方は日々、教室を運営されている中で、「もっと生徒とうまくコミュニケーションを取りたい」、「距離を縮めたい」と感じたり、あるいは「保護者ともっと信頼関係を築いていきたい」、「講師同士の連携をスムーズにしたい」、「スタッフと円滑な意思疎通を図りたい」と思われることがあるのではないでしょうか。
もし今お話ししたようなことに少しでも心当たりがある先生方には、これからお伝えする内容がきっとお役に立つのではないかと思います。
世界的企業を支えた伝説のビジネスコーチ
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まず最初にご紹介したいのが、ある一冊の本です。
その本のタイトルは『1兆ドルコーチ』というもので、アメリカのGoogleやApple、Facebook(現在のMeta)、Amazonなど、世界的な企業のトップに影響を与えた、伝説のビジネスコーチに関する本です。
そのビジネスコーチの名前は、ビル・キャンベルさんといいます。
彼のコーチング哲学をまとめたのが『1兆ドルコーチ』という本なのです。
この「1兆ドル」というタイトルは、彼が関わったクライアント企業の売上をすべて合わせると、1兆ドルを超えるとされることに由来しています。
実際にビル・キャンベルさんは、先ほど挙げた企業だけでなく、数多くの企業に関わってこられました。
特にIT系の企業に多く関わり、そういった企業を陰から支えていたのだそうです。
この本は、彼が亡くなった後に出版されたもので、その功績を後世に残そうと、彼のクライアントである企業のトップたちが協力して執筆・出版されたのだそうです。
高パフォーマンス組織に不可欠な“コミュニティ意識”
ビル・キャンベルさんは、世界的企業の経営幹部やCEOに対して、経営戦略や技術指導をするのではなく、人にフォーカスしたコーチングを行っていたことで知られています。
具体的に、彼がどんなことをしていたのかを垣間見ることができるのが、この『1兆ドルコーチ』という本です。
私がこの本を読んで、個人的にとても印象に残ったのが、「ビル・キャンベルさんは“雑談”を非常に重要視していた」という点です。
その本の中で彼が述べていたのは、「パフォーマンスの高い組織とは、メンバー同士が“コミュニティ意識”を共有している組織だ」ということでした。
では、その“コミュニティ意識”とは何かというと、「このプロジェクトで自分はこういう成果を上げたい」「こういう結果を出したい」といった個人の目標を超えて、「私たちは仲間だ」「このチームはまるで家族のようだ」といった感覚のことを指します。
このようなコミュニティ意識を持っている組織では、メンバーが自分の役割を理解し、前向きに意欲的に行動するようになるとされています。
結果として、そのコミュニティ内で求められている行動が自然と取れるようになり、生産性が高まるといわれています。
実際に、この“コミュニティ意識が生産性を高める”ということは、さまざまな実験データによっても示されており、『1兆ドルコーチ』の中でもそのデータが紹介されています。
つまり、科学的な観点からも“コミュニティ意識”には効果があると実証されているのです。
仕事の前に“人として向き合う”という姿勢
特に、GoogleやAmazonのような世界的企業には、世界中の有名大学を卒業した非常に優秀で、自我が強い人材が集まっています。
そのため、「自分の能力をいかにアピールするか」「このプロジェクトを通じて自分がどう評価されるか」といった個人の目標に強くフォーカスする人も少なくありません。
そうなると、他のメンバーをライバル視したり、自分が目立つために他人を貶めたりといった行動が生まれ、チーム内で不協和音が起こることがあります。
そうした状況では、どんなに優秀な人材が集まっていても、チームとしての高い成果は生まれません。
だからこそ、ビル・キャンベルさんは、個人やチームの目標を超えた「家族意識」「仲間意識」、つまり“コミュニティ意識”が重要だと考えていたのです。
そして、そのコミュニティ意識をチームや会社全体に浸透させるために、ビル・キャンベルさんが最も大切にしていたのが「雑談」だったのです。
雑談で築く信頼関係と相互理解
たとえば、経営幹部が集まるビジネスミーティングの冒頭で、彼はこう言いました。
「この週末はどのように過ごされましたか? ぜひ一人ひとり、プライベートなニュースを共有してください」と。
その場では、ある人は「家族で旅行に行ってきました」と話し、別の人は「娘のピアノ発表会に行ってきました」と話すなど、それぞれが自分のプライベートな出来事を語ります。
このようにプライベートな面を共有することで、メンバー同士はお互いを“仕事仲間”以上の存在として認識し始めます。
「この人にはこういう一面もあるのか」「この人はこんな家庭を持っているんだ」といった理解が深まり、1人の人間としての相手を知るようになるのです。
こうして、人間的な相互理解が深まることで、コミュニティ意識が自然と強化されていきます。
さらに、ミーティングの冒頭での雑談にとどまらず、会社を訪問した際には、社員一人ひとりと握手を交わしたり、ハグをしたり、「あのときのあれ、どうだった?」といった会話を交わすなど、ビル・キャンベルさんは日常的に雑談を大切にしていました。
仕事の前に“人として向き合う”という姿勢
つまり彼は、目の前の人を“社員”や“クライアント”として見る前に、まず1人の人間として理解し、尊重するということを何よりも重視していたのです。
仕事の話をする前に、人として、家族として、仲間として向き合う。
それがビル・キャンベルさんが最も大切にしていたコミュニケーションの姿勢だったのです。
一見、「雑談」と聞くと、特に仕事の場面では「そんな時間、無駄なんじゃないか」「そんなことしてる暇があったら仕事しないといけないんじゃないか」といった印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
ですが実は、先ほどから名前が挙がっているような、GoogleやAmazonといった世界を動かしてきたトップ企業や、そのトップの経営者・経営幹部たちは、雑談を効果的に、そして意識的に活用していたという事実があります。
教室経営にも応用できる“雑談力”

そう考えると、ここまでお伝えしてきた「雑談」というものも、先生方が教室で活用できる場面が多くあるのではないかと思うんです。
たとえば、意図的に生徒や保護者、あるいは他の講師と雑談を交わすことで、さまざまな面が見えてくると思います。
生徒との雑談の中で、「この子はこういうものが好きなんだな」、「こういうことが苦手なんだな」といったことがわかったりします。
また、保護者との雑談では、「この保護者の方はこういう価値観を持っているんだな」、「子育てに対してこういうスタンスで向き合っているんだな」といった気づきも得られます。
他の講師との雑談からも、「この人はこんな悩みを持っていたのか」、「こういう面があるから魅力的なんだな、強みなんだな」と感じることもあるでしょう。
このような雑談を重ねていくことで、結果的に信頼関係が深まっていきます。
雑談がつなぐ信頼と安心感

つまり、雑談とは、相手と自分とをつなぎ合わせてくれる、一種の潤滑剤、接着剤のような役割を果たすのです。
人は、自分の話を聞いてくれる相手、自分のことを理解しようとしてくれる相手に、信頼を寄せるものです。
そして、その信頼があってこそ、レッスンや教室運営がうまく回っていくのだと思います。
ですから、日々、雑談を意識的に取り入れることが、生徒や保護者、また他の講師の方たちとの良好な関係を築き、良好な教室経営へとつながっていく、と私は考えています。
ですので、ぜひ雑談を日常に取り入れていただきたいと思います。
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