家に帰ると、台所のテーブルの上にサツマ芋がひとつ、ごろりと転がっていた。 でかい。 普通の芋の2倍ほどある。 おじさんの留守に、手癖の悪い母トミエ88歳が近所の畑で盗掘してきたのではないかと疑うと、「たーけ、ちゃんと正規の店で買ったがん」 と、おかしな三河弁で自慢げに言う。 「150円したがや」。
あまりにも立派なサツマ芋だったので写真に撮ろうと思い、ハタと気づいた。 大きさを比較するものがない。 大抵こういうときは、タバコのパッケージだ。 しかしおじさん禁煙していて、そんなものは持っていない。 カメラを持ったまま何かないかと周りに目をやるおじさんを見て、母がニンマリと笑った。
つと仏間に立つと、仏壇の抽斗からタバコを取り出した。 それはおじさんがライターとともに、「捨ててくれ」 と、母に手渡した吸い残しのラークだった。 母は、絶対におじさんが禁煙に失敗すると踏んで、捨てずにとっておいたのだ。 「けふからの禁酒禁煙四月馬鹿」 とでも思っていたようだ。 まるで信用のない総領息子ではある。 長男の甚六。
ま、とりあえずこれで写真は撮れた。 ついでのことにとキッチン秤で重さを量ってみると、1,1kg あった。 リビングのソファーで眠っていたサツキが目を覚まして、何事ならんとやって来たので、一緒に記念写真を撮ってやった。
母はこれを鬼饅頭に仕立てるのだという。
※ 鬼饅頭が蒸しあがりました。
|