「あなたの趣味は何か」、と訊かれることが一番困る。 ないのだ、これが。
おじさんは、あらゆるジャンルの本をいつも読んでいる。 では読書が趣味か? そうではない。 かつて週刊誌の書評欄に執筆していた。 どこか職業的な視点で文章に接している自分を見つける。 映画も観に行く。 しかし、おじさんは、日本映画アカデミーの元会員であり、映画やテレビの現場にいたし、映画評を連載していたこともある。 これも職業。 芝居も観に行くが、役者もやっていて、演劇評論も書いていた。 やっぱ職業。
音楽、これも最近は新譜を買わないが、幾人かのアーチストのライナーノーツを書いたことがある。 美術についてはどうだろうか。 メトロポリタンやグッゲンハイム、近代美術館など、ニューヨークに5年くらい毎年出かけて美術批評を書いていた時代がある。 これも職業。 マンガ評論を書いていたころもあるので、これも職業。
花壇や家庭菜園についてはまるで知識がない。 とても趣味にはできない。 魚釣りは、経験がない。 運動は、まるでできない。 スポーツが趣味、などという嘘はつけない。
休みの日、趣味の時間、何をしているかといえば寝てばかりいる。 「趣味・眠る事」 というのも、なんだかな。
幼き日、小学生のころには、切手を集めていた。 未だに当時のコレクションはシート単位で保存してある。 しかし、それが増えることはない。 鉄道に興味もなし。 時刻表を読むことや、実際の旅は好きだが、どこか民俗学のフィールドワークと化している。 料理にも興味なし。 むしろ料理は、福祉の仕事の一部だ。 掃除・洗濯、何でもござれ。
何が趣味なのかと、真剣に見つめてみる。 休みの日にしていること、母トミエ88歳との会話、サツキとの猫語での会話。 そしてブログ。 それがおじさんの趣味なのだろうか。
歳相応に、盆栽でも始めてみようかと思う。 早く隠居して、枯れてみたい。
猫が読んでいるのは『軍事戦略』という本です。