終点の伊良湖岬からは伊勢湾を横断する伊勢湾フェリーが就航しており、三重県鳥羽市とを結んでいます。ここでは高度成長期に運行されるも短命に終わった伊勢湾の観光船についてアップします。

伊勢湾内を結ぶ航路は古くからあり、古くは湿地帯や木曽三川により陸路での連絡が困難な東海道五拾三次が(名古屋)〜桑名までは海路を使っていた事でも知られています。

1925年6月には松本汽船が発足し、1931年には長田汽船、南知多汽船、参勢汽船、富士回漕、福江倉庫をがっへし、愛知商船株式会社に商号を変更し旅客船も個人企業から法人化とともに船舶の大型化が図られていきます。1937年には名古屋鉄道が全株式を取得、完全子会社化されました。
1956年、称号を愛知観光船に変更し公共交通機関のほかレジャー目的の要素も強くなっていきます。1962年には名古屋-鳥羽蒲郡-鳥羽名古屋-伊良湖航路に水中翼船を就航させました。


水中翼船"王将"は1963年4月、日立造船神奈川が建造した大型の水中翼船としては国産第一号艇です。


当時3億円(現在の貨幣価値に換算して18億円)を投じ名鉄海上観光船が導入。1963年5月〜1982年までの19年に渡り上記の3航路(名古屋-鳥羽、鳥羽-伊良湖-蒲郡)の航路に就航し延べ152万人が乗船、地球約60周分に相当する240km航行しました。


引退後は伊勢志摩みやげセンター"王将"に引き取られて土産屋の屋根上に鎮座されて看板として、船内は団体専用の御食事処として利用されています。


水中翼船 王将

製造:日立造船神奈川

型式:日立造船PT50型

総トン数:約130㌧

全長:約27.90m

幅(甲板上):約6.10m

幅(水中翼):約10.65m

高さ:約3.75m

吃水(着水時):約3.50m

吃水(浮揚時):約1.50m

航海速力:35ノット

旅客定員:120名(他に乗務員6名)

就航:1963年5月


なお1963年には名鉄海上観光船に商号を変更しています。


1964年4月には名古屋鉄道近畿日本鉄道の折半出資により伊勢湾自動車運送船を設立します。これが現在の伊勢湾フェリーとなります。



伊勢湾フェリー就航開始

1964年11月


1964年11月: 伊良湖ー鳥羽間にフェリー航路の営業を開始しました。1973年5月には現社名である伊勢湾フェリーに変更となり、1976年10月には鳥羽ー師崎間フェリー航路の営業を開始しました。

一方で名鉄観光観光船は1969年に蒲郡-鳥羽航路にホーバークラフトを就航させました。


西浦温泉のホバークラフト乗り場

1969年


名鉄観光汽船は1969年から10年間、蒲郡・西浦・伊良湖・鳥羽間にホバークラフトを運航していました。伊勢湾内の海上交通の発達により、速達性と近未来的な外観から観光資源としても導入されました。


蒲郡市竹島近くの蒲郡の乗り場を出航してまず10分で西浦温泉桟橋に着き、そこを経由してさらに35分で鳥羽港に到着しました。

便によっては伊良湖を経由する便もあり、志摩勝浦観光船の便と交互にダイヤが組まれていました。



1982年には予てから懸念されていたコスト高と利用者の減少、老朽化により水中翼船・ホーバークラフトともに廃止されました。



(奥)水中翼船"王将"
(日立造船PT50・1963年)
(手前)ホバークラフト"はくちょう"
(三井商船MV-PP5・1969年)