若い子と話をしていると、意外と世の中のことを知らないことに驚くことがあります。
あんなに四六時中スマホをポチポチしているのに!
しかしそれも無理からぬことと思います。理由があってその事柄について勉強しているなら別ですが、そもそも人間は自分の知りたい情報しか知ろうとはしないものです。熊本の地震のことならよく知っていても、外国の話なんてよく知らなくて当然かもしれません。
特に今の時代は情報が溢れ過ぎていますから、昔のように「どこどこでこういう事件があったんだって、へぇそりゃ大変だ」なんていちいち反応していられません。情報が多すぎる分、かえって情報に疎くなっているとも言えます。
最近話した二十歳のバイトの子は、アメリカの911テロを知らなくて、私は仰天してしまいました。
ひょんなことから、近ごろ私の職場では、私のもとに何かを教えてもらいに来る若い子が増えてきました。「あの人に聞くといろいろ教えてくれる」という評判が立ったようです。
私だって当然知らないことはたくさんあります。むしろ世の中の9割のことは知らないと言えるでしょう。そういう時は素直に「わからん」と答えるのですが、それでも「こういうことなんじゃないかなあ」と、わかる範囲で説明するように心掛けています。
ところで、ひょんなことから、のひょんとは一体何なのでしょうか。
そんなことはどうでもよくて、さて、EUのお話です。
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EUとは欧州連合のことです。
私が子供のころはEC(ヨーロッパ共同体)という名称でしたが、要するにヨーロッパをひとつにしよう、ということです。
現在、加盟国は28ヵ国。
総人口は5億人。
GDPは16兆ドル。
ヨーロッパの国々は、ひとつひとつは小さな国々ですが、これがひとつの国だったとしたらものすごい大国です。
第二次大戦後、アメリカとソ連の冷戦時代。
東には陸続きでソ連、西には海を挟んでアメリカ、というポジションにあったヨーロッパでは「戦争があって大変だったし、今はなんだか怖い時代だから、ヨーロッパの国々はみんなで協力して成長していこうよ」という風潮が強まりヨーロッパ経済共同体というものが発足しました。
時は流れ1992年、ドイツのベルリンの壁が崩壊しました。これは、ヨーロッパでの共産主義の崩壊を意味します。「さあ、これでいよいよヨーロッパはひとつになれるぞ」ということでEUは誕生したのです。
ひとつになると、何か良いことがあるのでしょうか。それは上に挙げた通り、大国になれるのです。
そのためには、通貨を統一し、国境を無くし、自由な経済、自由な往き来ができるようにしなければなりません。
これがEUの目指したところです。
ひとつになれば戦争も無くなるんじゃないか、とも考えていました。
しかし近ごろ、なぜイギリスは、EUを脱退したがっているのでしょう。
ひとつの大きな問題は、移民です。
イギリスはドイツに次いでヨーロッパ2位の経済大国ですから、イギリスに住みたい人はたくさんいます。つまり他の国から、イギリスに引っ越してくる人が多くなります。
そしてEUに加盟している以上、イギリスは移民(自由な往き来)を拒絶することができません。イギリスにイギリス人以外の人が増えるということは、イギリス人の居場所が減るということです。
もうひとつの問題は、難民です。
戦争続きのイラクや、特にシリアから亡命してくる難民が多くなり、EUとしてはこれを受け入れる体制をとっています。彼ら難民のイギリスでの生活保護に使われるお金は、イギリス人が払っている税金から出ています。人が増えれば失業率も増える。
要するに、我が家に居候がどんどん増えていく、ということなのです。私が働いて稼いだお金を、どうして知らない外国人のために使わなきゃならんのか、というイギリス人の不満はもっともであり、根本的な解決のためには難民の受け入れよりもイラクやシリアの安定化が先なんじゃないか、という主張も至極もっともです。
テロが増えたのも、移民・難民を受け入れすぎたせいだ、という主張もあります。これは事実でしょう。蓋然性の問題です。国や言葉の違う人が増えれば、今まで起きなかったような事件も起きるようになるのです。
よって
「もううちはやってられません。だから抜けます」
というのがイギリスがEUを脱退したがっている理由です。
これけら先どう転がっていくかはわかりませんが、今後の世界が大きく変わってゆくきっかけを作ることになるのは確かです。
ちなみに、ひょんなことから、のひょんは木の名前だそうです。ヤドリギの一種をそう呼んだとか。
ヤドリギとは名前のごとく、宿る木です。木に生える木。鳥が食べた実に含まれる種が糞として出て行き、それが他の樹木の上に落ちて発芽します。
本来のその木のものではない「違う葉っぱ」があるのは「妙」ですから、妙なこと、変なこと、意外なことを、「ひょんなこと」と言うようになったといいます。
あるいはそのまま、へんなもの、が転じて「ひょんなもの」になったとも。
今のイギリスにとって、自国へ流れてくる移民・難民は、本来そこにいるはずのない「ひょんなもの」に思えるのかもしれませんが、しかしそれではEUの掲げる「ヨーロッパの統一」は難しそうです。