先日人事院勧告に関する記事を書きました。ついに国会でも給与法が改正されて公務員の給与が引き上げられたことが話題になっているかと思います。
これを受けて各自治体においても「給与が上がる!」となっているかと思います。
この記事では、人事課で労働条件を扱ってきた筆者が、給与の増額改定によって支給される「改定差額」の正体、発生するメカニズム、そして税金・社会保険上の注意点まで、分かりやすく徹底解説します。
ぜひ最後までウキウキしながら読んでみてください!
【この記事を読むとわかること】
- 改定差額が生まれる公務員特有の理由
- 具体的な差額の計算方法と支給時期
- 差額を受け取った際の税金・社会保険の注意点
それでは、早速本題に入っていきましょう。
1. そもそも「改定差額」とは何か?公務員特有の仕組み
1-1. 「遡及適用」が生む時間差
「改定差額」とは、給与改定の実施日(遡及日)から実際の支給日までの間に生じた、新旧給与の差額を指します。
新しい給与が適用されるべき期間(遡及期間)と、実際に新しい給与が支給された日までの間に発生した差額分。
人事院勧告から法律・条例改正を経て実際に支払われるまでに数ヶ月のタイムラグがあること、そもそも人事院勧告はその年の4月の民間給与を調査していることから、4月分の給与から適用するのが適当という考え方から、遡及して支払う仕組みです。
1-2. なぜ12月頃に支給されるのか?
国家公務員でいえば法改正、地方自治体でいえば条例改正の手続きが完了するのが、例年12月になることが多いためです。自治体によって支給時期が異なる場合もありますが、ほとんどの自治体は12月議会に条例の改正案が上程され、可決後速やかに支給という流れが多いと思います。
2. 改定差額はいくら?計算方法と支給時期の目安
2-1. 改定差額の計算は意外とシンプル
基本となる改定差額は、以下の計算式で概算できます。
(新給与 - 旧給与) × 遡及期間(月数)
給料だけでなく、各種手当の差額も合算されて支給されます。
ここで法務を担当していた側面から少し解説します。
厳密にいうと、条例の改正に伴って給料表の額が4月に遡って改定されているわけですから、今年支払われていた給与は”間違っている支給額”となるわけです。なので、本来であれば誤って支給した額を一度全職員から返してもらって、正しい額で計算して支給しなおすというのが正しい流れになります。
しかし、それは物凄く非効率ですし、支給された給与に全く手を付けてない人なんてなかないないわけです。
なので”内払い規定”というものが定められていて、簡単に言うと「今まで払った給与は改定後の給与の一部ってみなします」ということにしています。
この規定があることによって、12月分には上がった分の差額を支給するということになるわけです。
2-2. 試算してみよう!
簡単に試算してみましょう。給料月額が250,000円だったところが4月に遡って255,000円になったと仮定します。
給料が上がれば、これを基礎とする時間外勤務手当(残業代)の単価も当然上がります。単価の上昇分も差額として支給されます。
💡 **残業代の単価上昇分の概算**
単価の上昇分は、概算で以下の計算が成り立ちます。
(新給料255,000円 - 旧給料250,000円)× 1.25(割増率) ÷ 162.75(平均的な月所定労働時間)
つまり、1時間あたり約39円の単価が上昇していることになります。
これも踏まえて計算していくと…
給料月額:5,000円×9か月=45,000円
賞与額 :5,000円×4.6月分=23,000円
賞与額 :255,000円×0.05月分=12,750円(これは賞与の支給月数の引き上げ分です。)
残業代 :39円×180時間=7,020円
合 計:87,770円
3. 一括支給ならではの注意点!税金と社会保険への影響
3-1. 所得税(源泉徴収)は高くなる可能性がある
改定差額は給与として合算され、一時的に所得税の源泉徴収額が増える可能性があります。
ただ、最終的な税額は年末調整で清算されるので、損をすることはないのでご安心ください。
3-2. 社会保険料への影響(随時改定の可能性)
遡及差額の一括支給により、報酬月額が大幅に変動したとみなされ、随時改定(月額変更届)の対象となる可能性があります。ただ、これは本来毎月もらえるはずだった給与が一括して支給されているだけですし、そこまで大きな影響を与える額でもないので、”可能性がある”程度に考えていただいて良いと思います。
※今年は改定額が大きかった人も多いと思いますので要注意です…。
年金機構のページには次のように記載があります。「さかのぼって昇給があり、昇給差額が支給された場合は、差額が支給された月を変動月として、差額を差し引いた3カ月間の報酬の平均額により算出した標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じる場合、随時改定の対象となります。」
つまり、この給与改定のタイミングが「変動月」と判断されてしまうと、随時改訂の対象となる可能性があるわけです。
4. まとめ:「仕事のために仕事をしない」働き方へ
公務員の「改定差額」は、給与制度特有の時間差によって生じる、間違いなくあなたが働くことで得られた収入です。
この臨時収入を、日頃の頑張りを支えてくれるご家族のために、あるいは資産運用などに投資して、将来の健康や生活の安定のために賢く使ってみてはいかがでしょうか。
それでは、またね〜。

