こんにちは。地方公務員の基礎シリーズ、第14回です。
前回は「起案」についてお話ししましたが、文書を書き上げるのと同じくらい(あるいはそれ以上に)大切なのが、今回テーマにする「根回し(事前調整)」です。
「根回しなんて古臭い」「堂々と会議で議論すればいい」と思うかもしれません。しかし、多くの関係者が関わる自治体の仕事において、根回しは「関係者全員が安心してYESと言える状態を作る」ための、きわめて合理的で誠実なプロセスなのです。今回はその具体的なステップを見ていきましょう。
💡 この記事を読むとわかること
- 役所における「根回し」の本当の目的とメリット
- 「誰に・いつ・何を」伝えるべきか?調整の基本ステップ
- 会議を「決める場所」にするための、事前情報の流し方
1. 根回しは「不意打ち」を防ぐ礼儀
会議の席で初めて新しい案を聞かされた上司や他部署の担当者は、どう思うでしょうか?たとえ内容が良くても、「なぜ事前に教えてくれなかったのか」「自分の管轄に影響がないか確認する時間が足りない」と、防衛的な反応(=反対や保留)をしてしまいがちです。
根回しとは、相手に「検討する時間」と「意見を反映させる機会」をあらかじめプレゼントすることです。事前に情報を共有しておくことで、相手は味方になり、会議の場は「議論」ではなく「最終確認」の場へと変わります。
2. 失敗しない調整の「3ステップ」
仕事ができる中堅職員が無意識にやっている、調整の手順を言語化してみました。
📍 根回しの黄金ルート
1. キーマンの特定:その案件に反対しそうな人、またはその人がYESと言えば周りが動く「決裁の急所」を見極めます。
2. 相談ベースで持ち込む:「決定事項です」と持っていくのではなく、「こういう案を考えているのですが、〇〇さんの知恵を貸していただけませんか?」と相談の形を取ります。
3. 宿題を持ち帰る:相手の懸念点を聞き出し、「そこは検討して修正案に反映させます」と伝えることで、相手を「案の作成協力者」に変えてしまいます。
3. 財政・法務部局との「正しい向き合い方」
調整のラスボスと言えば、財政部局(予算)や法務部局(例規・リーガルチェック)ですよね。ここでのポイントは、「早めに見せること」です。
締め切り直前に持っていき、「もう時間がないのでこれで通してください」と言うのは最悪のパターンです。法務担当だった私の経験から言えば、未完成の段階で「方向性だけ確認させてください」と相談に来てくれる職員の案件は、こちらも一緒に解決策を考えやすいため、結果的にスムーズに通ることが多かったです。
4. まとめ:調整力は「想像力」
根回しが上手い人は、相手が何を大切にしていて、何を不安に思っているかを想像する力が長けています。自分の案を通すことだけを考えず、相手の立場に立って一呼吸置く。その余裕が、役所という巨大な組織を動かす潤滑油になります。
今日のまとめです。
- 根回しは相手に「検討の時間」を与える、仕事上の礼儀である。
- 「決定」ではなく「相談」の形で持ち込み、相手を協力者に変える。
- 特に厳しい部局(財政・法務など)ほど、早めに相談に行くのが鉄則。
次回、8月18日は「クレーム対応を味方に!住民の声を政策に活かす対話術」をお届けします。 若手が一番ストレスを感じる「窓口・電話対応」。でも、ここには仕事の本質が詰まっています。私の経験から、自分を削らずに相手を納得させるコツをお話しします。
それでは、またね〜。


