①インフレアの全身姿勢

前編動画にて、骨盤の開閉する構造的な仕組みを解説した。

 

この動画では、その骨盤の閉じた方、腸骨のインフレア、関節の締りの位置、フィットネスとして取り組むべき努力姿勢、そしてあえて言おう、『それすなわち〝骨盤後傾の姿勢〟であると』の方を取り上げて、それが全身的ではどんな姿勢になるのかを解説していく。(動画二部構成)

 

予備知識として、こちらの姿勢を〝荷重の体勢〟と認識しておいてもらいたい。

対極するアウトフレアは〝重心を外す体勢〟である。

要は地球の重力に対して、重心を合わせに行く時はインフレアになり、その重心を前に外す時はアウトフレアの姿勢になるのだという事。これが人の骨格に埋め込まれた機能性、ファンクショナルというヤツの根源である。これまで作ってきた動画に要所要所で埋め込んできた話の核心。やっとここに来た。

 

〝前に移動する〟ってことは、我々にとって外的な生命維持活動である。その場所から移動できなければ水も飲めない。捕食できない(レストラン)。逃げられない(炎天下)。植物さん達とは仕組みが違う。ほんの数日で人生が終わる。

 

 

そういう事で、本題の説明。

 

仮定段階の部分もあるので、ここは概要のみ、分かりやすい言葉でお伝えする。

 

 

上から骨盤までの姿勢。

 

顎は引く。顔全体を後ろに引く感じ。

腕は全体的に内回しで、手首は反る方向。腕時計を見る時の腕回しである。

肩は少しすくめた後、前に出す。鎖骨の下にしっかり窪みを作る感じ。整体とか整形外科で『巻き肩』と改善指導される姿勢。腕の内回しと巻き肩は相乗する協働関係であり、肘先は前を向いてゆく方向。

その巻き肩を崩さないまま、胸を起こしてみぞおちを上げる。背中を反らないように注意。足から、あるいは股間から垂直に上昇する意識。目の前のどこかに肩くらいの高さを見つけて、そこよりもみぞおちを高くするようにすると上手くできる。

そして一緒に息を長く吐く。胸をペタンコに、腸骨は前を閉じるように。

そこまで終わってこういう姿勢になる。

 

 

今度は下から骨盤までの姿勢。

基本的には立つ。寝た姿勢の足裏がフリーになるのがダメだし、重力の方向も人に備わる機能性と違うから。

 

足首を返しながら足指は曲げる。それをやればひっくり返るので、足首を返すのでなく体をゆっくり前に倒す。同じ足首姿勢。そしてその前荷重に自然に発動する〝足指の床掴み動作〟が入れば、結果的にこの姿勢になる。

膝は伸ばす。しかし使う筋肉は教科書と逆の、膝の裏側の筋肉だ。膝を伸ばす筋肉は通常は大腿四頭筋だが、その付着部の関係からこれは骨盤を開くアウトフレアのグループになるわけで、インフレアにはブレーキになる。膝を伸ばすのに四頭筋なんか使うのはもう本当に昔の話。遅れてる。ふくらはぎとモモ裏の筋肉が、同時に働けばこれが膝を伸ばす。伸ばすというより膝の曲がりを後ろに引く感じ。この動作が使える条件は、着地した足である事。大地に対して人が動くシチュエーション(マシンの運動がその逆)。

そして股関節は伸展プラス内旋位。この〝股関節に対する「伸展」と「内旋」〟という用語だけは覚えてほしい。モモを後ろに引く事と、内またになる事。足を踏み替える訳では無いので内旋の動きがやって判りにくいが、話が進んで歩く動画になった時に重要なポイントになる。「はじかれ式股ボール」というエクササイズをすれば、内旋の力がすぐ実感できるが、とりあえず素の状態ではお尻にペンを挟んでお尻の穴を引き上げる感じでいい。『大殿筋下部』というヤツである。腰が反らないように、お尻の穴とおへその穴を近づけていく意識でやれば完璧。

 

 

 

 

②姿勢の表と裏

前章のおさらい的に、逆の姿勢と対比した一覧表にまとめてみる。

 

骨盤

 

 

 


 

③ドローイン

「ドローイン」という、姿勢の作り方、力の入力の仕方があるのをご存じだろうか。

本やネット、巷のピラティス教室、ジムのスタジオ、競技やトレーニングの現場、十数年前に日本に伝わった時から様々な場所でその定義や内容は沢山出ているのだが、ここではもう『はじかれ式ドローイン』とでもいう感じで改めてドローインを認識してもらいたい。

 

「ドローイン」とは、要は骨盤のインフレアに至る操作と同じものである。

やり方の大筋は、すでにご紹介した通り。

 

 

巷のドローインでは肩を前に入れる操作が含まれていない。巻き肩にしていない。特に仰向けで紹介される時のパターン。この、胸を張ったままでは、息を吸う姿勢が残っているので吐く事がやりきれず、ドローインしきれない。

立て膝である事も、〝股関節の伸展〟にマイナス。股関節が前方移動するのは分かりやすいかもしれないが、ドローインに使う筋肉が発動しきれない。座っても同じだが、足首を返せるだけマシかな。上から骨盤までのドローイン。

 

そして巷のドローインの説明に出てくる、『インナーマッスル』とか『コアユニット』だとかの括りで一様に挙げられる筋肉達。

「横隔膜」「腹横筋」「多裂筋」「骨盤底筋群」、そして「腸腰筋」もブッ込むのかな?名前が流行ってるから。

これは腹壁を構成する筋肉を並べてみた訳だけど、息を吸う筋肉と吐く筋肉が混在しているのを判って言っているのだろうか。それぞれ作用で姿勢が、骨位置がどう変わるのか把握しているのだろうか。

こんなだからドローインの説明はいつも目的地がボヤけがちになる。『で、それをやるとどうなるの?何が良いの?』ってところの説明が意外と無い。特に『スポーツではどう役に立つのか』なんて説明は、この認識でできるはずがない。女性には、根拠や結論の説明がタブーなんだそうだ。いわゆる右脳系、直観系なのだそうで、僕には見習うべきところが多いが、オブラートに行ってしまって騙されやすい。

 

 

『うんちゃらユニット』とかって挙げた筋肉達が、確かに全部まとめて踏ん張る感じの、いわゆる「ブレーシング」と言われる状態では共働するかも知れない。『腹圧を高める』というヤツだ。重い物を持ち上げる時、パンチをボディーに受ける時、そしてトイレで踏ん張る時。力を抜いた瞬間に『フゥ~』と息が吐き出るアノ時の。

これと「ドローイン」、「骨盤の閉鎖」、「荷重の姿勢」を一緒にしてはいけない。ダイエットや腰痛改善、そして僕個人的には人の機能性の話に出てくるのがドローインな訳で、ウエイトリフティングとか打撃系とかで必要な腹圧のところに出てくるのがブレーシング。あんまり詳しくは分からないけれど、話の系統が違う。

 

僕の動画でこれから「ドローイン」という時、こんな認識を踏まえて頂ければ幸いである。