2023年7月31日



  きっと私の社会人生活の中で、1つの大きな事件として、記憶に残る日になるだろう。

  私は今日という日がずっと来なければいいのにと願いながら、この1週間を過ごした。そんな願いが神に届くはずもなく、あまりにも残酷に時間は過ぎていく。


  明日、私に新卒としての採用合格通知を出してくれた人が居なくなる。78社目にして初めての採用通知…という建前で、私は合格を貰った。本当は77社目で合格を貰っていたのだが、それはまた今度、また別の話で。


  はっきり言うと、入社するまでの私にとってはありがた迷惑な話。でも入社してしまえば、私にとってはこの上司は必要で重要な存在だった。この人が上司じゃなかったら、口約束は守ったと、私は3年でこの会社を辞めていたと思う。何だかんだ文句や愚痴は垂れつつも、辞めずに今年4年目を迎えたのは、間違いなくこの上司があったからだと私は思う。


  この現代社会において、上司の人事異動なんてよくある話だと思うし、部下が人事異動で飛ばされることだってよくある話だ。上司を慕っている部下なんて珍しい話でもないと思うし、問題は抱えているけれども、部署としての雰囲気を均衡に保ってくれる上司の存在というのも、さほど珍しい話でもないと思う。私はこの会社しか経験したことがないから他の世界を知らないんだろう、と言われてしえばそれまでなのだが。

  しかし残念なことに、親というしがらみに苛まれ、苦しみながら生きてきた私にとっては、この人は上司以上の存在だった。2年前に家出決行を決心した時、事情を理解した上で部屋の保証人になってくれた。「仕事は辞めるな」という条件付きではあったが、逆に言えばその恩を返すためにも、仕事は真面目に取り組んできたし、年々少しずつではあるが評価も上がってきた。


  やってみたいと言った仕事については、積極的に挑戦させてくれた。仕事で行き詰まった時、失敗してしまった時、こういう考え方があるよ、こういうやり方があるよ、と答えではなく他の解法を教えてくれた。社会人にとって仕事とは何か、何のために仕事をするのか、そういった話もよくしてくれた。それも、今日で正式な上司と部下という関係は終わる。明日からはどんな人かもまだ知らない人が上司になる。自分の業務のことだけでなく、社会人としての在り方について、仕事との向き合い方について、そういった話を気軽にしてくれる人が居なくなる。私はそれが恐ろしくてたまらない。明日からこの会社はどうなるのか、新しい上司を慕うことができるのか、全てが不安でたまらない。それでも明日はやってくる。



  人生も大概だが、社会人生活というのも大概理不尽だと私は思う。手足は使えなくなれば替えがきくが、頭が変わってしまえば全てが狂いかねない。それでも役職も持たない私たちは手足となって動くしかない。頭が変わろうと社会には関係の無いこと。



  明日からの新しい生活を受け入れられるだろうか。明日から私はまた頑張れるだろうか。迷いも不安もあっても、どうせ明日からの生活を受け入れ、頑張るしかないのに、その事実をまだ飲み込めないまま。




  明日なんか来なければいいのに。