気付いた時には不仲だった。

両親、そして姉弟が。



私は僻んでいた。


中学受験に失敗した姉をきっかけに

期待の矛先が私へ向いたことに。


家でも学校でも「姉の二番煎じ」として比較され

出来損ないとレッテルを貼られたことに。


「何もやりたいことがない」という姉は

得意分野をめいいっぱい伸ばして

自分の実力に合わせたサポートがあって

有名な大学へ進んだ。


「これを学びたい」と明確に提示した私は

就職に不利だ、女がそんな職業恥ずかしいと

全てを否定され、得意科目も選ばせて貰えず

不得意分野をたくさん抱えさせられ

自分の実力、レベルに全くあっていない

サポートのせいで潰れそうな毎日に絶え

死にそうになりながら底辺の私立大学に進んだ。


我が家では底辺だと言われていた大学が

世の中では平均値くらいと知っても

出来損ないの底辺として生きてきた私には

そんな綺麗事、どうせ見下してるんだろうと

今でも理解をすることができない。


私はずっと底辺で生きてきた人間だ。

私は底辺で生きなければならない宿命だ。



私は憎んでいた。


年下だから、男だからと

特別に甘やかされてきた弟に。


その癖、自分の努力によって大事なところで

ちゃんと結果を残せる弟に。


本人がやりたくても、やりたくなくても

好きなことをやらせてもらえていた弟に。


私にはそんな器用に生きることができなかった。

そんな器用さを私は羨んでいたし

自らの要領の悪さを憎んだ。


やりたいことがなくても

プライドだけでのし上がれる

その強さが羨ましかった。

全てを諦めた私も、そんな強さが欲しかった。



私は妬ましかった。



自分の人生を自分で決めて、

進みたい道への努力を惜しまず応援してくれる

友人たち、友人たちの家族、環境

全てが羨ましくて妬ましかった。


お前も頑張れば良かったのに。

自分のために頑張れば良いのに。

親には感謝しなさい。仲良くしなさい。

そういうことを平然と言える

私が欲しかったものを全部持っている

無神経で幸せそうな人間が妬ましかった。


喉から手が出るほど欲しかった。

私には何一つとしてなかった。

何一つとして手に入れられなかった。



私は欲しかった。


自分のために頑張れる環境が。

自分の人生を自分で決める決定権が。


お前は大切な娘の1人だという言葉が。

姉も弟も大切な子どもだという言葉が。


私のことを愛してくれる両親と姉弟が。

毎日笑って幸せに暮らせる、そんな家族が。



私は死にたかった。

もう早く死にたかった。

自分のために生きられないことが

自分の人生を自分で決められないことが

私は情けなくて耐えられなかった。


20歳までに、25歳までに、

死にたいと思っていたのに死ねなかった。

私は臆病だった。

死ぬ事が恐ろしくて仕方なかった。

今もまだ死にたくて、死ねないでいる。



こんな言葉を書き綴ったって

過去の自分は報われない。

分かっていても私にはどうすることもできない

私は私自身を救うことが出来ない

なぜなら私は人間の底辺だから。

そう思って今日もまた死にたいと思いながら

私の心臓は無駄に動き続ける。




私の存在価値はどこ?




こんな過去の時間が、

全部嘘だったら良かったのに。