あんなこと 41 | 瑠璃色no半濁点

瑠璃色no半濁点

「瑠璃」は仏教で言う「七宝」の一つ。
英語では「ラピスラズリ」
砕いた色は「ウルトラマリンブルー」です。

私の最寄り駅はから乗る人は、私の知る限り営業2課の課長さんだけです。

この課長さん、誰よりも早く会社に行きます。
まるで会社の鍵を開けるのを誰かと競っているかのように。

この課長さんの30分も後の電車に乗るのに、誰かと会うことは皆無です。

ましてや、ユキの最寄り駅は私の駅より一駅下った駅です。

同じ路線でたまたま出くわしてもなんの不思議はありません。




たまたま乗り合わせたわけじゃない私とユキは、

今日の会社での予定など話しながら、車両の揺れに身を委ねていました。
時おり大きく揺れる時ユキは吊革より私の腕をつかんできます。


今日午前中は会議であること。

会議が終わった午後は、社内で資料整理でもしようと思ってること…。




会社の最寄り駅に着きます。


改札前の人ごみにまぎれ、ユキは私より5歩ほど後方にいます。


「ユ~キちゃん! おは~!」



人事課の真弓です。



彼女もケバいです。


ユキと連れ立った真弓は、私には気づかず、

2人で私を追い抜いていきました。



後ろから2人を見ると、まるで夕方の出勤前のお姉さんです。



それにしても、、今日も暑い…。




たいして決定したことも無く、

会議をした事実を作るためのような無駄な時間を過ごし

会議と称する世間話は終わりました。



昼メシを食べに外出し、帰りに会社近くのコンビニで

タバコを買おうとしていると、

午後からの飲み物を持ってレジに並んでいるユキを

見つけました。



珍しく一人です。

顔色すぐれません。


すぐれないどころか、青ざめています。


レジ会計を終えたユキは私に気が付きました。


私の横を通り、すれ違いざま、まわりを見まわしてから


「山下さん。 お疲れ様です。

外に出たら、ちょっと…」


表情、思いつめています。



会社までの短い時間をゆっくり歩きながら

手短に話を聞きました。



「オニイ、、どうしよう…。 ユキ、ヤバいかも…」



聞くと、友達とランチを終え、コンビニに向かうため

一人になった直後、男が声をかけてきたらしい。


「岩崎ユキさんですね? お仕事終わったらちょっと

お話聞かせてください。 時間はとらせません。

終わるころ、そこのマクドナルドの角で待ってます」


話しながら警察手帳を提示して見せ、

丁寧ではあるけれど、拒否などできない言い方だったらしい。



「どうしよう…。。 ユキ捕まっちゃうのかな?」 (ノ_-。)


「なにも悪いことしてないのに、捕まるわけないよ。

第一、捕まえるなら、今逮捕するよ。 夕方まで待つ必要が

無い」


昨日の夕方のことがあった私は、きっとヨシオのことを

聞きたいのだろうと確信した。



「ユキ!  落ち着いて大丈夫だ。 なにかあったら俺が

ついてる!  とにかく俺もユキも内偵は着いてる。

やましいことが無いなら、堂々としていた方がいい。

近くで待っていたいけど、話の後俺とユキが合流するのは

警察にバレバレだ。 俺は真っすぐ家帰るから、後から

ユキも俺ん家おいで。  ひとつ前で降りてタクシーね!」



昨日も着替えを取りに行った自宅から、俺の家までは

近所の病院で客待ちしていたタクシーに乗ってきたらしい。


そのへん、抜かりがない女ではある。




今にも泣きそうなユキをなだめ、会社に戻りました。


やましいことが無いのなら、後で合流しても問題ないが、

痛くない腹さぐられるのもめんどくさいし、ユキに何の話を

してきたか知るまではすぐに合流は避けた方がいいと思った。


ユキが一人になったとたんに接触してきたってことは、

少なくとも昼休み会社から出てきた直後からマークされていた

ことは間違いない。


もしかすると、朝からユキと俺は、俺ん家出たところから張られて

いたのかもしれない。



まいったな、こりゃ。  (-"-;A



いや、ホントに参ってました。 

 私。




続く。