はぁ……
今年も、またダメか……

私はファミレスのテーブルに突っ伏しながら
溜息をついた

教員免許が取れたものの
なかなか本採用には至らない私

産休に入った先生の代わりとかにしか
なれないなんて悲しすぎる……


「千づるさん」

声のする方に顔を向けると
そこには隆也くんの姿があった

「待ちました?」

「あ、いや、そうでもないよ」

姿勢を正して、必死に作り笑いをする

 

情けない

水谷さんの弟の隆也くんと付き合い始めて
数か月が経とうとしている

いつも冷静沈着で落ち着いている隆也くん

彼を前にすると、普段は落ち着いているはずの私の方が
動揺する羽目になっている

おかしい……
私のほうが年上なのに、なんで逆のパターンになってるんだろう

 

「そういえば、教員採用試験の結果出ました?」

「うん、出たよー

我ながら、情けない声しか出てこない……

勘の鋭い隆也くんには、結果なんてバレてるんだろうな……

 

「今日は、僕が奢りますよ」

「……ありがとう」

「元気出してくださいね、千づるさん」


隆也くんが私に告白してきたのは、数年前
水谷さんと吉田くんの結婚式の頃だった

その頃、私には付き合っていた彼がいたし、
まさか同級生の弟さんに、そんなことを言われるなんて
思ってもみなかった

それでも、あまりにストレートな彼の熱意にほだされた私は
散々悩んで、彼と別れ、隆也くんと付き合うことにしたのだった

 

吉田くんに振られて、吉田くんと結婚した水谷さんの弟と付き合うなんて
人生何があるか分からない……

 

最初は、水谷さんの弟というイメージが先行していたので
隆也くんを好きになれるのか自分でも疑問ではあったのだけれど

本が好きなところとか、インドア派だとか、意外と趣味が合うことに
ホッとしている

 

ファミレスを出て、並んで歩く

 

「隆也くん、もしかしたら、また背伸びた?」

「そうですか?」

 

私は、そんな彼の姿を見て、寂しさを感じる

そうやって、少しずつキミも大人になっていくんだね


「あ、ここに入りませんか?」

「え?ここって?」

「千づるさん、今日って何の日か覚えてます?」

「今日?」

「覚えていないですよね、今日は僕が千づるさんに告白した日です」

 

うわー……

そんな日まで覚えてくれてるとは……
私のこと初恋の相手だって言ってたけれど……
本当に、私なんかでいいのかな……

 

「ありがとう」

 

それでも、気持ちが嬉しくて私はお礼を言った

 

「まだお礼を言うには早いですよ」

「?」

「すみません、商品を予約していた水谷です」

「水谷様、お待ちしておりました、もう出来上がってますよ」

ショーケースの上に小さな箱が置かれる
店員の女性がその箱を開けながら

「サイズの確認は、よろしいですか?」

と言った

「はめてみて貰えます?」

「……あ、はい」

 

この指輪って……

指輪って……

私はドキドキしながら、隆也くんに指輪をはめてもらった

 

「良かった、ぴったりだ」

そう言って、隆也くんは微笑む

「大島千づるさん、出会った時から好きでした
僕と結婚してくれますか?」


ちょっと待って
待って……

 

「……ダメですか?」

 

水谷家って、早婚なのかな
まさか姉弟がそろいもそろって
こうくるとは……

 

「よろしくお願いします」

 

そう言いながら、涙が零れる

教員採用試験に落ち、どん底な気分だったのに
まさか、こんな展開が待っていたなんて……

 

ありがとう
これからも
ずっと一緒にいようね


大好きだよ

 

 

 

 

漫画となりの怪物くん

のピンオフ的な話を

書いてみました!

 

 

連載開始から15年目ですかー

 

アニメに嵌っていた頃が

懐かしいです!

 

また漫画読み返そうかな