二学期が終わり、三学期の授業とテストも終わって、私たち三年の担任は、職員室で生徒たちからの


合格連絡を待つ日が続きました。


学校の電話だけでは、対応しきれないくらい、この高校は進学者が多いので、担任の


電話番号とメールアドレスも生徒たちには教えてあります。


今日は、学年で一番期待されている、武本君の第一志望校の合否が分かる日。


校長から、教頭、学年主任、皆、朝から神経を張り詰めています。


担任の私も、緊張しています。


私の机の上の携帯が鳴りました。


武本君の名前が表示されています。


心臓を抑えながら、私は携帯の通話ボタンを押しました。


「武本君?」


『はい、僕、合格しました』


「そう、おめでとう、良かったね」


『ありがとうございます』


「卒業式まで、のんびり過ごしてね、お疲れ様」


『先生、一つ質問したいんですけど、いいですか?』


「いいよ、何?」


『卒業式が終わったら、もう先生の生徒じゃ無くなるんですよね?』


「そうだね、寂しくなるけど」


『分かりました、じゃあこれで』


武本君とそういうやりとりをしたあと、私は早速、校長から教頭、学年主任へと、


わが校始まって以来の秀才と呼ばれた武本君の合格を知らせました。


H大に、浪人もせずに入学した生徒が合格したのも、初めての出来事だったので、


全員が手を取り合って笑いあっていました。


そして、それからも、次々と朗報が入り、私のクラスは全員が無事合格という結果を得ることが


できたのでした。








そして、迎えた卒業式。


一人ひとりの、名前を読み上げて、表彰状を渡し、今年の卒業式が無事に終わり、


私は、ようやく3年生の担任という重圧から解放されたのでした。


このあとは、クラスの皆と、卒業を祝っての打ち上げが行われることになっていたので


私は、学校の雑務を終わらせて、一度家に帰って、出かける支度をしました。


さすがに、学校に行く時のようなスーツは、どうかと思ったので、あまり堅苦しすぎず、


ちゃらちゃらしすぎず・・・・と思ったものの、そんなにスーツの種類も無いのですが。





待ち合わせ場所に行くと、いつもより大人っぽい格好をした女子の姿が。化粧も私なんかより、


ずっと上手で、良く見ないと誰が誰だか分からないくらいです。


男子も、制服じゃないので、ちょっと新鮮でした。


どう見ても、私が担任って感じ・・・


と思いながら、皆で、お店に向かいました。










伍につづく