「やっと終わったぜ!」

オレは、授業終了の鐘が鳴ると同時に、思いっきり伸びをした。
授業が終わったら、次に待っているのは昼飯だ!
今日は、購買でパンを買う予定だから急がないと
大好きな、焼そばパンが無くなっちまう。

廊下を大急ぎで駆け抜ける。

「高杉くん!」

急いでいるオレを呼びとめる声がしたので、オレは後ろを振り返った。
あ!!
・・・風紀委員の武市 半平太だっ!
面倒な奴に捕まっちまったもんだ。
こいつ、結構小うるさいんだよなぁ…
でも、女子には、”微笑み王子”と言われて、ちやほやされてる。
たが、自分の思い通りに行かない事があると、物凄く切れて
校舎の壁に穴を空けたこともあったらしい。
それでも、そんな姿を知って、ますます熱を上げてる女子もいるらしく
本当に、世の中良く分からん。

「なんだよっ!武市!オレは今急いでるんだよっ!
用があるなら、さっさと済ませてくれよなっ」

「『さっさと、済ませてくれ』だと?君は、僕に一体何度注意を
されたら分かるんだ!!」

「さぁ、そんなくだらないもん数えてる暇なんて、生憎こっちには
無いんでねっ!」

オレは、にやりと笑いながら、武市を見る。
武市は、わなわなと肩を震わせていた。

「僕は、これが仕事なんでね、暇でやってるわけじゃないんだ。
まず、廊下は走らない こんな小学生でも分かることに、
どうして君は気づかないんだ!!」

「ふん!残念ながら、小学生じゃないんでねっ!」

「高杉くん、その口の聞き方を誰に向かってしてるのか分かってるのかっ!」

「ああ、分かってるとも、風紀委員長様だろう?」

「・・・・・・以蔵」

「はい、委員長」

以蔵と呼ばれた男は、さっきから、ここに居たのに初めて言葉を口にした。
元々口数が少ない奴なんだが・・・。
武市の後にいる大柄な男は、岡田以蔵。
いつも、武市の傍に居るから、武市の犬とまで言われてる奴だ。

「高杉くんの、今までの、校則違反の数は記録してあるな?」

「はい、もちろんです」

「よし、言ってみろ!」

「まず、遅刻が今月に入って10回。それから、頭髪検査と、服装チェックには、毎回のように、ひっかかっています。」

「・・・というわけだ、高杉くん、今日という今日は・・・」

「あ、坂本!久しぶりじゃないかっ!しばらく学校休んでたから、心配したんだぜっ」

向こうからやってきた、男は坂本龍馬。
今年、四国のとある県から転校してきた奴だ。
かなりのド田舎に長く住んでいたせいか、訛りが、きつい。

「おお!高杉くん、ひさしぶりじゃのぉ、心配かけてすまんかった」

「気にすんなって!それより体調のほうはどうなんだ?」

「ああ、大好きな軍鶏を食べまくったんで、すっかり精もついたぜよ
ずっと、暖かいところに住んでおったせいか、なかなか体もついていかなかったんじゃがのう、大丈夫じゃ」

「そうかっ!良かったなっ!」

オレは、坂本の背中をばしばしと叩いた。

「痛い、痛いぜよ、高杉くん」

「龍馬、どうだい?学校には、もう慣れたかい?」

「おー、武市、お陰さまで、やっと一人で校舎内も迷わず歩くことが
できるようになったぜよ」

「じゃあな、坂本!オレはちょっと急いでるんで先に行くなっ!」

そう言ってオレは、廊下をまた走りだした。
武市が、うるさく何かを言っているようだったが、もうオレの耳には入らなかった。

それにしても岡田の奴・・・あれじゃあ鎖に繋がれた犬みたいなもんじゃないか、あいつにも自由ってのは、あるのか?

オレはそんなことを思いながら、購買に向かった。



「よしっ!備えあれば憂いなしだ、5個くらい買っときゃ、なんとかなるだろう」

焼そばパンは、校内ではレアと称される代物だ。
それを今日は5個も買えるなんて、オレは随分ついている。

しかし、5個もあったって・・・


そうだっ!

あいつのところに行こうっ!

となると・・・面倒だが、あれも買っといた方がいいか・・・
一応な・・・。



購買の人ごみを掻き分けた後、自販機で必要な物を買って、一旦教室に戻った。

「高杉くん、どうしたんじゃ、その焼きそばパンは!」

「いやー、なんか調子に乗って、たくさん買っちまったんだよなっ!」

「坂本は、昼は食べてきたのかっ?!」

「ああ、病院行った後、一度家に帰って、薬を飲むために、済ませた」

「そうかっ!じゃあ、やっぱりこれは、あいつのところに持っていくとするか」

「にしし、高杉くんの言う、あいつとは、女子のことかのぉ?」

「ばっ、ちっ、違うぞっ!」

「そうは言っておるが、顔が真っ赤じゃ」

坂本は、転校してきたばりだが、こんな冗談も言うようになった。

とりあえず、本当に心配はなさそうだな。

「龍馬さん!」

と、教室の入り口から声が聞こえてきた。
振り返るとそこには・・・。

「おお、中岡か!」

「以蔵くんから、しばらく休んでたって聞いたから、見舞いにでも行こうと
思ってたんですけど、その様子なら心配なさそうッすね」

こいつは、オレ達より学年が下の中岡 慎太郎。
いつもにこにこ笑ってるだけの奴だと思っていたが、意外とそうでもないらしい。

武市と岡田と中岡と、オレのクラスメイトの坂本の四人は、偶然というにも、同郷の小学校の出身らしいのだ。
だから転校してきた、坂本も、この学校に慣れやすかったのかもしれない。

「そんなに、揃いもそろって、わしの心配をするとは、そんなに、わしは病弱に見えるのかのう・・・」

誰にでも会うたびに、そう言われて、坂本は、いじけてしまったようだ。

「いいじゃないかっ!坂本っ!それだけ、みんなお前を気にかけてるんだよっ!」

「そうかのぉ」

坂本は、そう言うと嬉しそうに笑った。

「あ、龍馬さん、俺、この間の身体測定で、分かったんですけど、春から3㌢身長が伸びてたっス」

中岡は嬉しそうに、坂本に話したのだが、坂本は困ったような顔でオレを見た。

多分、坂本とオレが思った事は同じだったに違いない。

「中岡っ!」

「たっ、高杉さんっ!何っスか?」

中岡は、オレの突然の呼びかけに動揺したようだ。

「お前は・・・」

「もっとたくさん、牛乳を飲め!」

「どっ、どういう意味っスか?」

「にしし、そう言う意味じゃ」

坂本は、オレの言葉を肯定するように、そう言った。

中岡は、本人も気にしているようだが、非常に背が低い。
オレ達よりも多分・・・15㌢以上は低い。
岡田と一緒に並んで歩いている時なんて、さらに低く見える。
だから、例え、3㌢伸びたところで、さほど変わりなく見える。

「と、無駄話はこれくらいにしてっと、じゃあ坂本、中岡、またなっ!」

「おう、授業には遅れないようにするぜよ」


オレは、あいつの居るであろう、あの場所に一直線で向かった。






「おいっ!小五郎っ」

いきなりドアを開けて入るとそこには・・・

オレ達の学校で、一番権力を持っていると思われる、生徒会長の大久保 利通こと大久保さんがいた。
まぁ、オレにしてみれば、権力だのなんだのは、関係ないのだが・・・
去年は、そんな風に甘く見ていたら、とんでもない仕打ちが待ち受けていたのだ。

「高杉くん!君は一体、何度言ったら、ノックをして生徒会室に入るということをするのだ」

大久保さんは、眉間にしわを寄せながらそう言った。

「悪いなっ!つい、いつもの癖でなっ!」

「桂くん、君からも、厳重に注意をして欲しいと言ったはずだが・・・」

「すみません、一応言ってはいるのですが・・・」

「小五郎っ!お前は、謝る必要なんて無いぞっ!オレが大久保さんの、言いつけを守らないだけなんだからなっ!」

「晋作・・・それが分かっているなら、お前は、どうして・・・」

「まぁまぁ、堅いこと言わずに、今日は、お前に差し入れだっ!」

「差し入れ?・・・・晋作、私達は、もう昼飯は済ませてしまったんだ、差し入れなんて・・・」

「遅くまで、今日も、生徒会の仕事なんだろっ!ほら、コレ、仕事の合間に食えよっ!」

「これは・・・」

「今日は、焼そばパンを5個も手に入れたんだっ!お前には、いつも面倒ばかりかけちまってるからなっ!ほんのお礼だっ!」

小五郎が毎日、自分自身で、弁当を作って持ってきていることは知っていた。だが、さすがに、生徒会の仕事を遅くまでやっているからと言って、
2食分の弁当を持ってきてるはずはないと思った。

それに・・・。
小五郎が、この生徒会に入ったのだって、志は一緒とはいえ、オレのためでもあるんだ。

「大久保さんは、どうだ?」

「『どうだ?』とは、その焼きそばパンのことか?」

「ああっ!」

「聞くまでもないだろう、私を同じ扱いにするな」

「だろうなっ!」

「晋作、大久保さんは、毎日、重箱に入った弁当を持ってきてるんだよ、だから、遅い時間まで仕事があっても困ることはないんだよ」

小五郎が、小声でオレにそう話した。

「ええっ!!そうなのかっ!!」

「晋作!!」

オレは思わず大声をあげてしまった。
確かに、そんな弁当を持ってきてるんじゃ、焼そばパンなんかじゃ、満足できるはずもないだろう。

だが・・・。

「んじゃ、これなら、問題ないだろっ!」

そう言って、オレは二本のペットボトルを大久保さんと小五郎の前に差し出した。


「高杉くん・・・」

「これなら、文句ないだろ?」

オレはそう言って、にやりと笑った。
それは、この暑い最中、良く冷えた渋い緑茶のペットボトル。

「私の好みも、分かっているとは、さては桂くんの入れ知恵か?」

「さぁ、どうだか」

「じゃあなっ!小五郎!また来るからなっ!」

そう言ってオレは、また走りだした。

ちょっと、のんびりしすぎちまったな。
今日は天気もいいし、屋上にでも行って飯を食うとするかっ!
校舎の最上階の階段の先にあるドアを開けると、人の姿が見えた。
フェンス越しに、遠くをぼぉーっとしながら見ている。

「よぉ!」

「・・・・!!」

オレの突然の登場に、こいつは、かなり驚いたようだ。
多分、一人の世界に入っていたのだろう。

「別にとって食いやしないんだから、そんな顔するなよなっ!」

「・・・・・」

「お、懐かしいもん持ってるなっ!」

「・・・これのことか?」

「ああ、オレも小さい頃、それを持って走りまわったもんだっ!」

「走りまわったか・・・あんたらしいな・・・」

「それ、お前が作ったのか?」

「・・・・俺の弟が喜ぶから、いつも作ってるうちに、これだけは得意に
なった」

「こいつと俺は一緒なんだ」

「一緒?」

「誰かが起こす風を受けてしか、動くことが出来ない」

「・・・・・・」

「・・・なっ・・・」

オレは、そいつの手から、風車を奪って、緩い風しか吹いていない屋上を走りまわった。

風車は、くるくるとオレが起こした風を受けて回りだした。

「高杉さん!あんたは、一体何を!!」

「お前、昼飯は食ったのか?」

「・・・それが何か関係あるのか?」

「なぁ、岡田、お前は、誰かの起こす風を待たないと動けないのか?」

「・・・!!」

「お前も見たろ?この風車だって、お前が動くことで風が起き回ることができるんだ」

「・・・・高杉さん・・・」

「武市には、色々と恩があるってのは、知っている、だが、お前だってお前自身の意志で動くこともできるんじゃないのか?」

「・・・・・」

「ちょっとばかし、首突っ込みすぎたなっ!オレの話に付き合わせた礼だ!
受け取れっ!」

そう言ってオレは、岡田に焼きそばパンを一つ放り投げた。

「・・・・すまん」

岡田は、それをしっかり受け取った。


武市の犬・・・か。

小五郎とオレの関係とはちょっと、違うが、自分の意志を敢えて持たないようにしているところは、どこか小五郎と似ている気がした。

だから、なんだかほっとけないんだよな。

どいつも、こいつも、みんな・・・

性格や地位が違っても、同じ学校の仲間だからなっ!

そんな風に思いながら、オレは焼きそばパンの二つ目をかじるのだった。





つづく





☆あとがき☆

パロディなんだけど
最後は一応、シリアスっぽく
まとめてみた!
新撰組の二人以外
全キャラが登場しているはず
(実は、慎ちゃん忘れそうになったけどw)
で、ヒロインは出るのか?!
っていうwww

つづく って書いてみたw

そして、晋作さん贔屓な私では
あるのだけど
晋作さんの、こういう目線で
書くのも面白かったっていう(・∀・)

やっぱり、晋作さんが好きなんだわw
私はwwww