呪いの口の時計を
持っている
ピザ屋のコヨーテ

時計は時を刻むのを止めていた
不気味な音も止まっている

懐中時計なので蓋がしまっていて
動いているかは
外からは見えない

ピザ屋のコヨーテは
懐中時計を見ている

ブンブンと首を横に降った

彼が
王様御用達のシェフをやっていた時の話である

「我が王 食事の準備が出来ました!」
ピザ屋のコヨーテ
クール・コヨーテは
この頃
王様の昼食の担当をしていた
「今日も元気よのぉー よいよい」
国の王のお出ましである
王は
やんわりとした顔立ちで
いつも笑っていた
「所でお主 昼食担当になって何年になる?」
食事の担当にも階級があった
朝食 昼デザート 昼食 夜デザート 夕食
の順番だ
王様の料理を作れるだけでも
ありがたいとされていたのかだが
夕食を作れる者こそ
国の宝だと言われていた

「はは!2年目にございます!」

深々と頭を下げた
「そうか そろそろ昇格試験に望むか?」
頭を下げながら
目を見開き
「ありがたき幸せ慎んでお受けいたします!」
彼にチャンスが訪れた

この試験は
いつ行われるのか
決まってはいない
王の気まぐれなのだ

王はこのクール・コヨーテに
期待していたのだ

試験まで時間が与えられた
料理の規定はない
クール・コヨーテは
その場を下がり
厨房に戻り
呪いの口の時計を見つめていた