漫画で描かれる父性がいまいち納得いかない | 叙情夜話ブログ

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コバルト文庫・破妖の剣について語っています。ネタやレビューや考察など色々。
ネタバレがあるので未読の方はお気を付け下さい。
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第1位 孫悟飯(お爺ちゃんの方)



「突然空からやってきた知らない赤ちゃんの面倒を見ることにしたら意外と凶暴で手を焼いたけど、頭を打ってからは懐いてくれるようになったよ!孫のように育って安心していたら突然猿の化け物に変身して踏み潰されたけど全然恨んでないよ!天国でも心配してるよ!」

う、うーん……。
武道家としての人生が断たれるどころか「孫悟飯」で検索すると若い方しか引っかからない人生でいいのか?老いたりとはいえ、まだまだやりたい事もあっただろうに。
聖人過ぎて捉えどころの無い人なので、もう少し掘り下げが欲しかった。
アックマンより上位だったことから、アクマイト光線が通じない=悪の心がないのでしょうか。子供ならまだしも、いい年して清い心なんて保てるのか。(なお悟空は)
彼のように、「主人公のためだけに存在する都合のいい装置」として扱われ、殺されてしまうキャラは実に不憫です。
そういうキャラに限って、何故そこまで主人公に親切なの……?という、説得力のある理由は一切描かれません。
ただ悟飯爺ちゃんの場合は、初期に死んだことでその疑問も無意味化し、良キャラのまま終われた面もあります。
なまじ後半まで生き残って、事あるごとに「悟空に何をするんじゃ!」「悟空は悪くない!」などと首を突っ込んで来たら目も当てられません。

破妖のサティンやセスランも、その点をもうちょっと何とか出来ませんでしたか?
設定はいいのに、ラスのこととなると人が変わったように道義に反するキャラと化してしまい残念でした。


第2位 ウソップの父



ヤソップ「妻と息子は置いてきた!海賊旗が俺を呼んでいるからだ!」
病床の妻「そんな父ちゃんを誇りに思ってるよ」
息子「父ちゃんを尊敬してる!おれも海賊になる!」

お、おう……。
彼に限らず「いなくなった父親を盲目的に尊敬する息子」「一人で子供を育てて病気で死ぬ母親」多過ぎ問題。
それはいいんですが、置いて行かれた母親を見ていても息子が敢えて「父親と同じになりたい」と考えるに至る心理描写が浅いので納得いかない。
ウソップはルフィ一味の中では比較的常識人扱いされているのでなおさら、父の職業や倫理観に抵抗がないのが不自然。

ゴンはその点「子供を捨ててでもやりたい仕事なんだね(キリッ」と非常にサイコパス感が出ていて良かった。


第3位 ジン


作者的には、「レオリオに突っ込ませたからもういいだろ」って思ってそう。
孫悟飯とは対照的と思いきや、血が繋がってるのかそうでないのかはっきりしないので、似たもの同士なのかも知れません。
顔はそっくりだけど、仮に実の息子ではないとしたら、あまり責められるのは可哀想という気持ちもある。
どっちにしろ育児は他人がして、自分は息子からの尊敬だけ受け取るので、問題は無いのかも知れませんが。
情報が少ないので評価がしづらいところも含めて、納得がいかない。


第4位 鶴見中尉



強盗夫婦の赤ちゃんをアイヌのコタンに預けたことで、優しいとか、さすが育児経験ありとか賞賛されてたけど……。
その際のやりとりもなく、本当に「ただ置いてきた」だけみたい。
「信頼できる者に預けた」って、言うほどフチと会話あったか?
なぜ孤児院ではいけなかったのか。アイヌの村をセーブポイントか託児所か、傷痍軍人の掃きだめみたいに扱うんじゃない。
フチの母性が都合よく利用されてるのも納得いかない。
アシリパさんがいなくなったのに悲しむだけで、村の人に探しに行かせようとしないのは何故?近隣に家族がいるのに、それより他人の谷垣が先に動いたという。
村で一番偉い人の孫娘が、突然現れた和人に連れて行かれたのに、村の人が全然気にしてないのは何で?
アイヌの人たち、人が良いと言うより「怒らなさすぎ」問題。武力で脅されて反抗する気が失せたという形にした方が説得力ある。
これが伏線になってたら凄いので今後に期待。

稲妻夫妻には愛があったと言ってましたが、夫婦愛はともかく、赤ちゃんを背負って戦う彼らに、親の愛は……あったのか?
(漫画特有の、異常に大人しくあまり泣かない頑丈な赤ちゃん)


第5位 碇ゲンドウ



最期に一言「すまなかった」とさえ言えば赦されると思ってる典型。
同人誌だと息子大好きパパ、でも反抗期だから冷たくされちゃうの……に変換されてたりしてなかなか笑えます。
息子への態度は視聴者から散々突っ込まれてるからいいとして、女性問題(この書き方もどうかと思う)はシンジくんの中でどう折り合いをつけたのか気になります。
彼はあの時点で中学生ですし、弄ばれ捨てられる女性の気持ちを、完全に理解しろというのは酷な話です。でも、父親の罪を知ってなお「リツコさんも悪い」という結論に逃げたら嫌すぎる。
破妖のラスや邪羅のように、親を嫌いたくないからと言って他者に原因を求めたり、「どっちもどっち、仲良くしよう」論に持って行く主人公は見たくないので、そこは掘り下げなくていいです。
親の罪を子が背負う必要は無い、それは大前提として、だからといって親に被害を受けた人を軽んじていいはずがないのですから。

あとゲンドウは善悪以前に、あんな無口で無愛想で人の上に立つ人間が務まるのかという疑問が。
ミサトさんやリツコさんは外部の人と会うときは気を遣って愛想良くしたり、尋問の際に裸にさせられたりして頑張ってるのに……辛い。


漫画やアニメの父親って、完璧聖人かクソ親父か海外出張太郎か影の薄次郎しかいませんが、もう令和になったので、そろそろ専業主夫より兼業主夫出しません?(名案)

子は父の背を見て育つと言いますが、背中なんて見せなくていいので、正面から向き合うべきです。