【替え歌】Simon | 叙情夜話ブログ

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コバルト文庫・破妖の剣について語っています。ネタやレビューや考察など色々。
ネタバレがあるので未読の方はお気を付け下さい。
二次創作はこちら→http://nanos.jp/hayou/

指ならばどれほど擦ったでしょう
未だに本社のことを夢にみる
忘れた物を取りに戻るたびに
古びた鋼鉄の扉を開く

戻らない便利さがあることを
最新システムが教えてくれた
お菓子を隠してた更衣室も
守衛がいなきゃ永遠に暗いまま

きっともうこれ以上 帰れる場所など
ありはしないとわかっている

あの日の日報さえ あの日のマニュアルさえ
そのすべてを捨て去った 移転とともに
指を置いて反応しない 遅い指紋認証
誰か通りかかるまでは入れない
並んでいるのは社員の怒り

暗闇でロッカーの位置を探した
その冷たさを鮮明に覚えている
使いこなせない物を設置するたび
溢れてやまないのは苦情だけ

誰が指示したの 誰が得するの
社員も知らない導入で

どこかで社長が今 みんなと同じように
閉め出しくらい 寒さの中にいるなら
昔の扉にどうか 戻して下さい
そんな愚痴が心から 漏れるほどに
強いて言うならば無用の極み

念のためいつもより早く来ていたのに
冬から思うように入室できない
以前はすぐに開いたのに
まるで牢みたい
始業に間に合わない
それだけが確か

あの日の勤怠さえ あの日の台帳さえ
そのすべてを消し去った アナログとともに
指を当てて反応しない 辛い静脈認証
無事に読み込むまでは入れない

長すぎるコミケの行列の様に
並んでいるのは社員の怒り