ノボの気儘な音楽トーク 27号: ベートーヴェンのピアノソナタ《告別》第3楽章 | 生き活きノボのブログ

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 やるせない気持、寂寥感とともに、第2楽章が消え去ったかと思うと、突然、変ホ長調の重音(ソシレファ)がフォルテで強烈に叩かれ、第3楽章が始まる。まさに、ルドルフ大公がウィーンに帰ってきたことの喜びが一気に爆発したようです。楽譜には、Das Wiedersehen(再会)と書かれ、その下にはVivacissimamente(最高に活き活きと)とあり、さらに念入りにIm lebhaftesten Zeitmaβe(最も生き生きとした速度で)と記されています。曲は、6/8拍子のソナタ形式であり、導入部を持ったフィナーレに相応しいものになっていますね。

 冒頭のたかだか10小節の導入部は、頭の8分音符の重音の一撃に続いて、16分音符で壮麗に駆け上がり、華々しい響きで満たされます。それは、ノボにピアノ協奏曲第5番『皇帝』の出だしを彷彿させます。『皇帝』が作曲されたのは1809年であり、まさしく『告別』の書かれ始めた時と一致します。『告別』の第3楽章は1810年に書かれたようですから、タイミング的には若干遅いですが、ベートーヴェンの魂に湧き上がる音楽の響きは、壮大で喜びに満ちたものとして、共通していたのか?

 提示部に移ると、3つの8分音符を一つの塊にした6/8拍子特有の軽快なリズムで第一主題が現われます。変ホ長調でソミド(↓)・シレソ(↑)と主和音と属和音の音を並べたメロディが第一主題ですが、これが何とも静かな喜びに満ちており、その喜びを噛みしめながら発展させ、気分が高揚して華々しい16分音符のフレーズに昇華する。それでも主題の発展は続き、突如、sf(スフォルツアンド)の付いた4分音符が異様に響く。これは変ト長調と変ロ長調に転調したもので、新たに湧く喜びを横溢させたのか。そして付点4分音符で第二主題が現れ、やはり喜びに溢れ、スラーでしなやかに進行する。が、喜びが抑えきれず、飛び跳ねるように発展します。

 展開部は、下降する音でなだめるかのように、静かに始まり、第二主題が現れて提示部で現れたフレーズで発展する。そして我慢しきれずに第一主題が顔を出し、喜びを再び味わうかのように、そのまま再現部へと向かいます。

 再現部は、最初から16分音符の伴奏に乗って、第一主題が現れ、提示部同様、喜びに湧き返って軽快に進みます。第二主題部もリズミカルに進行し、最後は16分音符で華々しく上昇し、一息つきます。そしてポコ・アンダンテ(少しゆっくり)となり、喜びを噛み締めるかのように第一主題が繰り返され、最後に、元のテンポに戻って、16分音符で華々しく喜びを爆発させ、曲を閉じます。

 第3楽章の演奏は、ノボが聴いた範囲では、比較的揃っているように思います。テンポについてはグルダの演奏が比較的速く、飛び回る喜びに溢れている。アシュケナージの演奏は、比較的テンポがゆったり。バックハウスは第二主題の歌わせ方にゆったり感を持たせる(テンポは遅くない)。清水和音は清楚かな? (平成271021日)