ヤマダを脱出しまんた。
命からがらな。
皆さんはご存知だろうか。
ヤマダ電機は大手家電量販店の中の強豪チームの一つである。
リーガエスパニョーラでいうレアルマドリードである。
キン肉マンでいうザ・マシンガンズである。
双子でいうマナカナである。
自動ドアをくぐれば、すかさず両サイドから店員さんが謎のサービスを始める。
謎のクジ引きを勧められる。
だがヤマダーなハヤト氏はビギナーとは言えど、そこは常連面してクールにスルー。
目的階を目指し、エスカレーターに飛び乗る。
が、しかし
ここでまたヤマダの洗礼を受ける。
エスカレーター両脇に施された鏡に映る自分の髪の毛の乱れにテンションが下がる。
萎えてるうちにエスカレーターの切れ目にたどり着く。
(もう少しエスカレーターが長ければ、見た目を整える時間があったのに。)
そんなことを考えていると、彷徨いているフロアで我に帰る
(ハッ!ここはどこだっ!?)
どうやらフロアを間違えたようだ。
あの忌々しい鏡のせい(正確には鏡に映ったしょうもない自分のせい)でつい違う階に降りてしまった。
心を落ち着かせて再びエスカレーターに飛び乗る。
もう同じ過ちはおかしまいと、両脇の鏡には目もくれず目的階を目指す。
辿り着いた。パソコンフロア。
するとエスカレーターを降りるか降りないかのタイミングでパソコンフロアの担当がハヤト氏に何か話しかけてきた。
が、iPodを聴いてたハヤト氏はソイツを軽くスルー。
後ろめたさなんてない。
目的は君ではない。
パソコンなのだから。
一人マークを外すと、すかさず二列目のマークがハヤト氏にチェック。
(チクョウ…これじゃキリがねぇ。)
ハヤト氏は次々と襲いかかるマークに嫌気がさしたが、ここは機転を利かせてあえて二列目から飛び出したマークに耳を傾ける。
ここで引き付けられたフリをして、他からの追随を寄せ付けない作戦だ。
ハヤト氏はお目当ての品についてマークⅡ(通称マークツー)と談笑する。
マークⅡはハヤト氏を疑うこともなくお得情報を余すことなく話してくれた。
(フッしめた。これで大半の情報は仕入れた。今日のミッションはこれまでだ。)
話を終わりにし、その場を立ち去ろうとしたとき、ハヤト氏は予想だにしなかった事態に出くわす。
そう、ネット担当のマークⅢ(通称マークスリー)が新たなプロバイダ契約の機(“チャンス”と読む。)を嗅ぎ付けてハヤト氏に近寄ってきたのだ。
(ッ!!)
マークを振り払うほどの余力がなかったハヤト氏は、まんまとマークⅢの話に耳を傾けるしかなかった。
次々とハヤト氏の自宅のネット環境を根掘り葉掘り訪ねるマークⅢ。
警戒しながらも話を進めるハヤト氏。
―ヤマダ電機ではちょっとしたスキが命取りになる。―
むかし父が言ってた。
まさにその通りだ。
ハヤト氏が自宅のネット環境を伝えきり、話が一段落すると、マークⅢは話を膨らませ
近くにいた固定電話担当の小林(通称コバヤシ)を召喚した。
(え、か…帰りたい。帰りたいです。)
そんな心中をヤツらが察するワケもない。
そんなのはこのコバヤシの表情を見れば一目瞭然である。
ヲイ、コバヤシ、お前なんで来た。帰れ。
もうお腹いっぱいなハヤト氏を他所に、コバヤシはハイパー営業スマイルで
コバヤシ「あざーっす!」
と一言。
いや、帰れ。
帰らせてくれ。
それからしばらくコバヤシとも談笑。
しかし、一つ言えるのは、コバヤシは案外いいヤツだった。
いや、天下のヤマダ電機様にイヤなヤツなんていてはいけないんだけど、このコバヤシとやらは郡を抜いていいヤツだった。
別格だ。
なんだかんだコバヤシと一番長く話した。
コバヤシ最高。
コバヤシフィーバー。
とりあえず近いうちにまた来る。とナゼかコバヤシにだけ再会の約束を告げ、ハヤト氏は“難攻不落の要塞 ヤマダ電機”を後にした。
恐るべきチームワーク。
しかしなぜだろう。
パソコンをヤマダ電機で買いそうな気がする。
まんまとヤマダ電機にヤラレてる。
降り注ぐ雨がやけに優しく感じた帰り道だった。
-完-
Android携帯からの投稿
命からがらな。
皆さんはご存知だろうか。
ヤマダ電機は大手家電量販店の中の強豪チームの一つである。
リーガエスパニョーラでいうレアルマドリードである。
キン肉マンでいうザ・マシンガンズである。
双子でいうマナカナである。
自動ドアをくぐれば、すかさず両サイドから店員さんが謎のサービスを始める。
謎のクジ引きを勧められる。
だがヤマダーなハヤト氏はビギナーとは言えど、そこは常連面してクールにスルー。
目的階を目指し、エスカレーターに飛び乗る。
が、しかし
ここでまたヤマダの洗礼を受ける。
エスカレーター両脇に施された鏡に映る自分の髪の毛の乱れにテンションが下がる。
萎えてるうちにエスカレーターの切れ目にたどり着く。
(もう少しエスカレーターが長ければ、見た目を整える時間があったのに。)
そんなことを考えていると、彷徨いているフロアで我に帰る
(ハッ!ここはどこだっ!?)
どうやらフロアを間違えたようだ。
あの忌々しい鏡のせい(正確には鏡に映ったしょうもない自分のせい)でつい違う階に降りてしまった。
心を落ち着かせて再びエスカレーターに飛び乗る。
もう同じ過ちはおかしまいと、両脇の鏡には目もくれず目的階を目指す。
辿り着いた。パソコンフロア。
するとエスカレーターを降りるか降りないかのタイミングでパソコンフロアの担当がハヤト氏に何か話しかけてきた。
が、iPodを聴いてたハヤト氏はソイツを軽くスルー。
後ろめたさなんてない。
目的は君ではない。
パソコンなのだから。
一人マークを外すと、すかさず二列目のマークがハヤト氏にチェック。
(チクョウ…これじゃキリがねぇ。)
ハヤト氏は次々と襲いかかるマークに嫌気がさしたが、ここは機転を利かせてあえて二列目から飛び出したマークに耳を傾ける。
ここで引き付けられたフリをして、他からの追随を寄せ付けない作戦だ。
ハヤト氏はお目当ての品についてマークⅡ(通称マークツー)と談笑する。
マークⅡはハヤト氏を疑うこともなくお得情報を余すことなく話してくれた。
(フッしめた。これで大半の情報は仕入れた。今日のミッションはこれまでだ。)
話を終わりにし、その場を立ち去ろうとしたとき、ハヤト氏は予想だにしなかった事態に出くわす。
そう、ネット担当のマークⅢ(通称マークスリー)が新たなプロバイダ契約の機(“チャンス”と読む。)を嗅ぎ付けてハヤト氏に近寄ってきたのだ。
(ッ!!)
マークを振り払うほどの余力がなかったハヤト氏は、まんまとマークⅢの話に耳を傾けるしかなかった。
次々とハヤト氏の自宅のネット環境を根掘り葉掘り訪ねるマークⅢ。
警戒しながらも話を進めるハヤト氏。
―ヤマダ電機ではちょっとしたスキが命取りになる。―
むかし父が言ってた。
まさにその通りだ。
ハヤト氏が自宅のネット環境を伝えきり、話が一段落すると、マークⅢは話を膨らませ
近くにいた固定電話担当の小林(通称コバヤシ)を召喚した。
(え、か…帰りたい。帰りたいです。)
そんな心中をヤツらが察するワケもない。
そんなのはこのコバヤシの表情を見れば一目瞭然である。
ヲイ、コバヤシ、お前なんで来た。帰れ。
もうお腹いっぱいなハヤト氏を他所に、コバヤシはハイパー営業スマイルで
コバヤシ「あざーっす!」
と一言。
いや、帰れ。
帰らせてくれ。
それからしばらくコバヤシとも談笑。
しかし、一つ言えるのは、コバヤシは案外いいヤツだった。
いや、天下のヤマダ電機様にイヤなヤツなんていてはいけないんだけど、このコバヤシとやらは郡を抜いていいヤツだった。
別格だ。
なんだかんだコバヤシと一番長く話した。
コバヤシ最高。
コバヤシフィーバー。
とりあえず近いうちにまた来る。とナゼかコバヤシにだけ再会の約束を告げ、ハヤト氏は“難攻不落の要塞 ヤマダ電機”を後にした。
恐るべきチームワーク。
しかしなぜだろう。
パソコンをヤマダ電機で買いそうな気がする。
まんまとヤマダ電機にヤラレてる。
降り注ぐ雨がやけに優しく感じた帰り道だった。
-完-
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