ハヤの運動会(かけっこ編)
呆気にとられた演技ではあったが、
キレのないわりには、ハヤなりにがんばったようだ。
そして、いよいよ特訓の成果が午後から発揮されることになる。
お昼は、家族全員でお弁当。
作りすぎた感もあり、残さないようにがんばって食べてみるが、
やはり多かった。
ハヤも昼から走るというのに、
たくさん頬張っていた。
いよいよ1年生のかけっこ。
直線を6人1組で走る。
時代の変化だろう。
すべての学年で徒競走は、男女混合である。
しかも、女子が早かったりする。
私たちの時代にはなかったことだが、
思春期前のこの時期に、
それほど男女間の体力差はない、
という証かもしれない。
ハヤも女子に混じって走るのだろう。
ゴール近くの退場門から、
妻はビデオカメラを構え、
私はデジタルカメラを構えて
ハヤの走るのを待っていた。
しかし、向こう側から走ってくる児童の姿を見分けるのは
かなり難しい・・・。
そして、何組かゴールした後、
ハヤが走ってきたことに気づくのが遅かった。
気づいたときには、ハヤは半分くらい走っていた。
そして、ハヤはゴールをすり抜けていった。
私:「順位は!?」
ハヤはまっすぐ走っていた。
ハヤは手をしっかり振っていた。
ハヤは精一杯足を上げていた。
しかし、
ゴール前で失速した。
急に失速した。
走るのをあきらめたのか?
バテてしまったのか?
私は、ビデオカメラでハヤを追っていた妻に問いかけた。
私:「何着だった?」
妻:「わからへん。よく見えなかった」
私:「ビデオを再生しよう」
ビデオカメラのテープを巻き戻し、再生ボタンを押す妻。
妻:「ちょうどスタートのとき、カメラの前で旗が揺れて見えなくなった」
妻のいうとおり、スタート時点は真っ白になっていた。
スタートダッシュが決まったかどうかがわからない。
私は、続いて、ハヤの走るのを見た。
斜めの角度だから分かりにくかったが、
途中まで4番手ぐらいを走っていた。
だが、先頭の男の子がゴールするときに、
両側の児童が白テープを上に揚げた瞬間、
ハヤは明らかに失速している。
そして、ハヤはゴール寸前に2人に抜かれたように見えた。
私:「6位みたいだ・・・」
妻:「でもがんばって走ってたわ」
私:「そうだな」
本当は順位はどうでもよかった。
たった1日で覚えたことをどこまで実践できるものか、
ハヤがどれだけ一生懸命になれるか、
それが見たかった。
帰宅後、ハヤに問いかけた。
私:「ハヤ、かけっこはどうだった?」
ハ:「うーん、スタートダッシュできなかった」
私:「そうだったのか」
ハ:「でも、がんばったから」
私:「そうだな、途中まで目標の4位だったのにな」
ハ:「え? ぼく、2位やで」
私:「・・・・・?」
ハヤは、いったい、どの時点で走るのをあきらめたのだろう?
ハヤは、どうやら自分は本当に2位だと思っているらしい。
しかし、ここにはビデオテープがある。
見せるべきか、見せないべきか。
翌日、妻から私の携帯にメールが入った。
ビデオカメラが壊れてテープが入らなくなった。
修理に出さないと・・・
ほとぼりが冷める頃、ハヤと一緒にビデオを見るとしよう。
これで、ハヤの小学校1年生の運動会が終わった。