恣意的?な総務省。
どこを見ているの?NTT。
記事⑦の冒頭、NTTのイメージについて、深堀りします。
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この記事をしたためている時に、非常に面白いニュースが飛び込んで来たので、リンクを貼っておきます。
今回の記事と非常に関係する内容です。
どの様に関係するかは、記事を読み進めて頂ければ分かるかと思います。
まぁ…例によって、長ったらしい記事なので、飛ばし飛ばし読んでください(笑)
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インフラである(③、④参照)通信携帯電話料金に関する事で、多くの方が感じているであろう事。
それは…
NTT(ここ記事ではドコモ)の料金に対する消極的な姿勢について。
※一般ユーザーが「NTT」に直接支払う料金でイメージし易いのは、NTT東西とドコモです。
(元々、この記事で固定回線と携帯電話を両方論じるつもりでしたが、携帯に関する事だけで長大となった為、一旦、携帯だけに致します)
NTTコミュニケーションズの話をしても良いですが、長距離電話やプロバイダサービス、企業コンサルをメインとする同社は、上記3社と比較すると明らかに一般ユーザー目線では、存在感が薄いので、ここでは割愛します。
NTTに対する皆様の感情を少し生々しく表現すると…
「NTTはお高いんでしょ」
「NTTは後追いでしかサービスを出さない。値下げしない。」
「NTTは国の企業だからね(だから、やる気ないんでしょう)」
こんな所でしょう。
この業界の記事を一番最初に取り上げたのは2017の年の記事です。
その記事では、現在の「インフラ論」として語っている一連の記事とは、基本的に連続性はありませんが、記事の中で、次の様な事を書いております。
→「動きの遅いNTT」がいるからこそ、au(KDDI)に期待をしていた言う話です。
「NTTの料金に対しての負のイメージ」は、どの様に出来上がったのでしょうか。
動かないNTT…This is 「NTT」
ここでは、関心の高い携帯電話の過去を代表的なサービス(現代のサービスにも色濃く影響が残っているもの)を例に振り返ってみます。
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題して…
「NTTドコモ後追いの歴史」
家族割引
1998年初頭…ドコモ以外の当時の携帯電話事業者各社開始。
1998年12月…NTTドコモ開始
学割
2000年…au開始
2010年…NTTドコモ開始
パケホーダイ
2003年…au開始
2004年…NTTドコモ開始
通話定額
2005年…ボーダフォン(現ソフトバンク)が指定番号によるカケホーダイを開始。
2008年…NTTドコモ家族間通話無料開始
2011年…NTTドコモ自社ユーザー向け通話無料サービス開始
で、料金とは関係ありませんが、印象として強いのが…
iPhone販売
2009年…ソフトバンク取り扱い開始
2013年…NTTドコモ取り扱い開始
この様な「後追い」を振り返る事が出来ます。
iphone販売以降、NTTドコモは他の2社とは異なり、単純な比較が難しい「シェア」プランを開始。
このプランの登場により、「比較が出来ない」から「比較しようがない」と解釈される様になります。
その結果…かどうかは断言出来ませんが、3社がプランによる競争が次第に薄れ、新しいプランがチョロチョロ出ていましたが、3社の「カルテル」かな?と感じる程、膠着した状態が続きます。
「カルテル」を疑いたくなる「膠着」の例
2016年9月
ドコモ、au、ソフトバンク、各社が揃って20ギガの大容量プランを発表。
そして、料金も三社横並び(完全に同じではありませんが)。
その結果。
2018年秋に菅官房長官の「4割値下げ」発言に繋がるのです。
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大まかな表現として数年に一度、業界に大きな流れを作るサービスが登場し、その数年後にNTTドコモも追随する…その様な展開です。
そして…この間、NTTドコモは業界内シェアを
59%から43%へと逓減させて行くのです。
「NTT」に対するイメージ。
高い、後追い、やる気が無い…
この表現。
一般国民目線で捉えれば、振り返った通り、順当なイメージです。
事実、「後追い」ですから。
しかし、このNTTドコモの携帯電話事業における後追い。
本当にNTTドコモは望んでいた事でしょうか。
NTTドコモは
何故「後追い」を
選択したのでしょうか。
「真相」はNTTの経営陣しか知りえない内容かと思います。
ただ、長年この業界に身を置き、自分なりの肌感覚を以って語れる経験、そして、事実を織り交ぜながら、私なりの「真相」をお話ししたいと思います。
NTTと郵政省(現総務省)の関係を記事⑦で、触れさせて頂きました。
この二つの組織は民営化(1985年)以前からも、数十年の長きに渡り、牽制し、ぶつかり、時には共闘し…を繰り返して来ました。
そして、携帯通信業界の「後追いNTT」を決定づけた事件についてお話いたします。
名付けて
郵政省(現総務省)発。
「NTTドコモさん、ゴチャゴチャ動き回らないでください」
事件
事の発端。
1998年の家族割引。
ここで、NTT(ドコモ)と郵政省(現総務省)とがバチバチ、殴り合い(と、表現します)のケンカが発生したのです。
※詳述するとそれだけで、相当の分量と成る為、ギュギュっと省略してお伝えいたします。
元記事のリンクを貼っておきますので、宜しければご参考に。
当時、携帯電話の加入者数がピークに達していた頃。
一年で「数百万」とか「一千万」言った単位でユーザーが増加。
状況を一口で表現すると「入れ食い」状態。
各社、サービスが良い悪いでは無く、とにかく効率よく店頭を回転させ、新規契約の本体を安くバラまく対策をメインに行い、ユーザー獲得に躍起になっていた…その様な状況でした。
しかし、この頃から、加入者数の増加スピードの鈍化を見越し、次の対策が考えられる様になります。
(当時のドコモのシェアは57.1%)
そこで、目をつけられたのが「家族」と言うグループだった訳です。
1998年。
各通信事業者から家族割引が矢継ぎ早に発表されます。
NTTドコモも後追い…(ではありますが、リンク先の情報通り、「他の事業者に即応し、対策した」位のタイミングと言って良いと思います)…で、「ファミリー割引」を発表、開始した訳です。
2020年の状況に置き換えて考えれば、料金の割引は、当然「welcome(ウェルカム)」な話です。
なんせ、「官房長官」が直接「値下げ」に言及する訳ですから。
が、しかし。
ここで、とんでもない事が起こります。
それは…
郵政省(現総務省)から家族割引を発表したNTTドコモに対して
「料金変更命令」が出たのです。
→割引を出したNTTドコモに対して、
「それはダメ」
と言う
行政権限。
料金変更
「命令」
です。
しかも、NTTドコモ側の言い分にもあるように、、携帯電話の料金プランが国「全体」として、従前存在した「認可制」の料金から「届出制」に変更され、
自由な料金に出来る制度が変わった後であるにも関わらず
…と、言う話です。
「変更命令」を出した郵政省(現総務省)は非常に「論理的」な理屈を述べている様に見えますが、そもそも、その「命令」の根拠となっている電気通信事業法第31条の条文そのものが「ただの言葉」に過ぎず、恣意的にいくらでも解釈が可能な内容なのです。
しかも、割引の内容そのものも、他社のサービスと比較し、NTTドコモの内容が十分「見劣りする」割引であるにも関わらず…です。
※つまり、この程度(これぐらい控えめならば)ならば、「虎の尾」を踏む事はないで有ろうと言うNTTの「読み」(忖度)な、訳です。
「NTT(組織全体を意味します)」と言う組織は、
郵政省(総務省)の考えを「忖度」し、問題を起こさない様、事を荒立てない様、行動します。
(今も昔も)
そう言った意味で、十分「見劣りする」内容なのです。
それでも尚、
郵政省(総務省)の「尾」を
踏んでしまった…。
当時と現在で最も異なる点。
それは携帯業界のシェア。
NTTドコモが60%
他が、5%や10%、15%と言った状態…現在の様に3社寡占では無く、現在と異なり、様々な通信事業者が存在していました。
※現在のシェア…NTTドコモ45%、au30%、ソフトバンク25%。
→※ここではイメージを掴んで頂きやすくするために、大まかに「5%」刻みで表現させて頂いております。
ですから、当時の行政の判断として、他の事業者を守り、健全な競争環境を維持すると言う観点において「NTTドコモ」に過敏に感応する事そのものは、間違えでは無かったと思います。
ただ、理屈がどう見ても
「NTTドコモを攻撃する」為
にしか見えないのです。
この解釈は、郵政省(総務省)とNTTの様々な経緯と私の現場の肌感覚(NTT職員、元公社職員の生の声も踏まえて)による所でもあります。
先程、紹介したリンク先(再度貼っておきます)の内容を一部だけ、抜粋します。
以下、郵政省(総務省)の考え。
★割引が増える事は良い事。
★同じサービスを提供する上で、割引の有無により、料金が変わるのは公平性に欠けるのではないか。
この2行目。
現在の感覚では
「何を言っているの?」
と言う感覚です。
※現在は、直接の行政権限の無い「官房長官」がもっと安くしろって、言及する始末。
その安くするプランを行政が「ダメ」と言う。
現在、同じプランでも…
〇2年縛りをつけるかつけないか
〇単独契約なのか、
〇家族2人なのか、
〇家族3人なのか、
〇家族4人以上なのか、
更に…そこに、「光」のセット割引が入るとか入らないとか…
はたまた、電気やガスやさらにはテレビチャンネルがどうとか…
もう、無茶苦茶。
同じサービスで料金が、人によって変わり放題です。
公平性なんて、全く無いではありませんか!
総務省は自分達の矛盾に気づかないのでしょうか?
(気づかない訳がない)
だから、恣意的と指摘するのです。
話を戻します。
NTTドコモの反論は明瞭で、筋が通っていると感じます。
この時の郵政省(総務省)のやり方に関して、NTTドコモは次のように指摘しています。
「明確な論拠(ガイドライン)」が存在し、それに基づいて「命令」を行って欲しい。
→要は、解釈次第で何とでもなる様な指摘はやめて欲しい。恣意的な事は困る。
そういう事です。
ここにNTTドコモに対する「命令」の根拠となった法令の条文を紹介させて頂きます。(一部略)1999年当時(旧)のもの。
旧電気通信事業法第31条
(1項と2項。3項は今回の「命令」に関わっていない為、省略)
郵政大臣は、…届け出た料金が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、第一種電気通信事業者に対し、相当の期限を定め、当該料金を変更すべきことを命ずることができる。
1 料金の算出方法が適正かつ明確に定められていないとき。
2 特定の者に対し不当な差別的扱いをするものであるとき。
3 略
元々郵政省(現総務省)を忖度するスキルに長けていた「NTT」グループですが、この様な命令により、より強く「忖度」し、「尾」や「地雷」を踏まない様、踏まない様、考え、行動する様になっていくのです。
(当然ですね)
電電公社の時代から連綿と続く通信料金(公共料金)の整合性(正当性)の問題。
その時代、その時代で郵政省(現総務省)は料金の変更を行う際、一見、整合性のある論理を出して来ますが、そこにはどうしても「結論ありき」の論理が見え隠れします。
※また、別記事で触れる予定です
後出しジャンケンで、「命令」を出されて、たまったもんじゃない…と、NTTドコモは感じたでしょう。
そして…「いつ」その「ジャンケン」が発動するのかを、忖度をし続けなければならない状況。
※2004年に料金に関する「事前規制」が「事後規制」に変化しましたが、「規制」が無くなった訳では無く、NTTドコモにすれば、「忖度」する事に大きな影響はありません。
そして、この「命令」の根拠となった電気通信事業法。
現在もしっかり残っており、NTTドコモはその「影」に怯え(忖度)ながら、営業を行っているのです。
電気通信事業法第29条 (業務改善命令)
1項から12項までありますが、旧電通法31条1項2項に関係するもののみ抜粋します。(その他は略)
総務大臣は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、電気通信事業者に対し、利用者の利益又は公共の利益を確保するために必要な限度において、業務の方法の改善その他の措置をとるべきことを命ずることができる。
1 略
2 電気通信事業者が特定の者に対し不当な差別的取扱いを行っているとき。
3 略
4 略
5 電気通信事業者が提供する電気通信役務に関する料金その他の提供条件が他の電気通信事業者との間に不当な競争を引き起こすものであり、その他社会的経済的事情に照らして著しく不適当であるため、利用者の利益を阻害しているとき。
6 略
7 略
8 略
9 略
10 略
11 略
12 前各号に掲げるもののほか、電気通信事業者の事業運営が適切かつ合理的でないため、電気通信の健全な発達又は国民の利便の確保に支障が生ずるおそれがあるとき。
旧法に比べ、長ったらしくなっていますが、結局、「命令」を発動しようと思えば「恣意的」に、どうとでも解釈出来てしまう様な内容であり、尚且つ、その内容も旧法と現法に大きな差は見受けられません。
この様な状況で、NTTドコモが他社に先んじて「国民が喜ぶような素晴らしいサービス」を提供できるでしょうか?
(出来る訳ありません)
ですから、当たり障りない様、他社の追随をゆっくりと時間をかけて行うしかないのです。
冒頭、ドコモ新サービス開始の突然の中止に関するリンクを貼っております。
今回のサービス、詳述は避けますが(細かいサービスを比較する記事では無いので)、
国民目線で見れば、ドコモもauもソフトバンクもやっている事は同じです。
最初にソフトバンクがサービスを開始。
先月に、auがソフトバンクを追随。
そして、例によって、満を持してNTTドコモが2社を追随した(いつもの流れ)訳です。
サービスの定義を確認すると電気通信事業法29条2項と5項に抵触する可能性があると指摘を受けてもおかしくない事は分かります。
→指摘する
「総務省目線で見れば…」
ですが。
NTTドコモの思惑
2001年から携帯業界に導入された「ドミナント規制」
携帯事業者において、業界シェア25%以上の者に規制を課すもの。NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社※
※厳密には多少異なりますが、細かい事説明する意味があまりないので、この3社とします。
更にに業界収益シェア40%以上の事業者にはもう一段、厳しい規制が課せられます。NTTドコモのみ。
40%
この数字の意味するところ。
「NTTドコモ後追いの歴史」の下部で紹介させて頂いたドコモのシェアの逓減。
私の推測の域を出ませんが、ドコモは紹介させて頂いた「規制」による後追いだけでは無く、一方では、自ら「後追い」を演じる事によって、評価をあえて落とし、「シェア逓減」を望んでいる事も十分に考えられます。
近年のドコモのサービスの内容を見ると、明らかにシェアが落ち続けているにも関わらず、「打てば響く」サービスを行わない。
2014年。
総務省により「情報通信審議会 2020ICT基盤政策特別部会」が開催されました。
その中でKDDIの田中孝司社長(現会長)が次のように発言しています。
規制緩和に対して「NTTドコモも業界収益シェア40%を切るならば、規制緩和も問題ない」
→つまり、ドミナント規制の基準に基づいて、支配的要素が小さくなるなら、他の事業者と同様、より自由な営業をしても良いと言う事なのです。
私の感じる事。
NTTドコモは40%と言うシェアを割り込む事で、総務省(旧郵政省)からの呪縛から解放され、自由な営業が出来るようになる事を望んでいるのではないか?
通常の営利企業ではあり得ない考え方ですが、逓減したシェアと言ってもNTTドコモは8000万をこえる契約数を抱えており、毎年4兆円という巨額の売り上げとなっています。
シェアの低下はあくまでも「相対的」な話であり、NTTドコモの事業基盤は盤石であります。
中途半端に「相対的」シェアが上昇し、総務省に縛られるより、多少シェアを落としても、自由を手に入れられる。
私がNTTならば…後者を選ぶでしょう。
固定通信にしろ、移動通信にしろ、総務省(旧郵政省)とNTTの関係を戦後から追いかけ、紐解きながら感じる事。
〇総務省は総務省で、本来「国民」の為に存在し、国民厚生向上を目標とし、その為に様々な事業に対して管理監督を行っていく筈が、国民を見ずに、「いかにNTTをやりこめるか」に腐心している様にしか感じられない。
〇NTTはNTTで、本当は「国民」を向いて仕事を成したいと思っているのかもしれないが、常に「総務省(旧郵政省)の顔色をうかがう事」に腐心している様にしか感じられない。
日本の携帯通信業界は、連綿と続く「総務省(旧郵政省)とNTTの立場の争い」に振り回され続けている。
そこにあるのは、
「正当性」のある「公共料金」では無く、ただ、NTTに対して自身が「上」たらんとする総務省(旧郵政省)。
そして、
国民の為に存在するNTTでは無く、常に総務省(旧郵政省)の顔色をうかがいながら、行動する悲しいNTT。
この2者があるのみなのである。
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何故、こんなに記事が長くなってしまったのだろう…と、我に返ってみる。
本当は携帯(ドコモ)だけでは無く、固定(NTT東西)もやる筈だったんです。
この記事で。
やれやれ…(笑)
取り合えず…了