肝心な部分がそぎ落とされる催眠技法と歴史 | 催眠術師 林貞年のブログ

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催眠術師/催眠療法士(ヒプノセラピスト)の林貞年が催眠術のかけ方や催眠療法などの催眠術全般について色々と述べていきます。

催眠には昔から伝わる技法がたくさんあります。

当然、有効性のある技法は長年に渡り受け継がれていくわけですが、効果が絶大なものもあれば、中にはそれほど効果的ではないものもあります。

ちなみに、催眠の名付け親であるジェームズ・ブレイドの凝視法は現在でも有効な手段として多くの人が活用しています。そして、催眠家の技量を計るとき、この凝視法の施術場面を見ると、その催眠家の技量がすぐに明らかになったりします。

ところで、今日お話したいのは、長く受け受け継がれてきている技法の中には、伝える者が理解しておらず、正しく伝わっていない技法がたくさんあるということなんです。

中には、肝心な部分がそぎ落とされてしまって、意味をなしていない技法も少なくなかったりします。

ひとつ例を挙げると、ディブ・エルマンの数字を使った催眠深化法は見事なぐらいに肝心な部分がそぎ落とされた状態で伝わりつづけています。

エルマンの催眠深化法といえば、多くの人が「……目の前に黒板をイメージしてください……そこに数字の99を書いてください……書き終わったら、黒板消しで消してください……次は98を書いてください……書き終わったら消してください……次は97……」といった感じで数字をイメージ上で描いたら消して、また描いては消してといったことを繰り返します。

でも、エルマンが実際にやっていたのは、「……目の前に黒板をイメージしてください……そこに直径50センチぐらいの円を描いてください……円が書けたら、その円ギリギリいっぱいに数字の99を書いてください……書き終わったら、黒板消しを使って数字を消してください……円は絶対に消さないようにして、数字の99だけ綺麗に黒板消しで消してください……消し終わったら、次は98を書いてください……円に触れるか触れないかぐらいの大きな98を書いてください……書き終わったら、黒板消しが円に触れないようにして、数字だけを綺麗に消してください……次は97……」といった感じでやっていました。

ちなみに、催眠術師でありながら、NLPのトップにまで上り詰めた、タッド・ジェームズ氏は、その著書『Hypnosis A comprehensive guide』の中でエルマンの数字を使った催眠深化法を以下のように説明しています。

【抜粋】
「……100から声に出してゆっくりと数え始めてください……数字を言うたびに、精神を2倍リラックスさせます……数字を言うたびに、心を2倍リラックスさせます……さて、これを98に達するまで、あるいはもっと早く行うと、精神が非常にリラックスし、98の後の数字がすべて頭から消えてしまいます……そして、それ以上の数字は出てこなくなります……さあ、あなたはこれをしなければなりません……私があなたに代わってすることはできません……あなたがその数字を消し去ろうとすれば、その数字は消え去るでしょう……さあ、あなたがそれを起こすという考えから始めてください……そうすれば、その数字は簡単にあなたの心から消え去ることができます……そうして欲しいのです……さあ、最初の数字、100を言って、精神的なリラックスを2倍にします……(クライアント「100」) もっと深くリラックスします……さあ、その精神的なリラックスを2倍にして、その数字が消え始めるのを待ちます……(クライアント「99」) もっと深くリラックスします……精神的なリラックスを2倍にします……その数字を消し去ろうとしてください……あなたがその数字を消し去ろうとすれば、その数字は消え去るでしょう……(クライアント「98」) ……もっと深くリラックスします……今、その数字は消え去るでしょう……その数字を消し去ってください。追い払ってください……あなたにはできます……私が代わりにすることはできません……その数字を消してください……全部消えましたか?(通常、数字は98で消えます。96を超えるクライアントはいません。)」

ご覧の通り、タッド・ジェームズ氏ですら上記のような説明です。

エルマンは、トランスを作る条件の中のひとつを考慮して、想像上の黒板に円を描き、その円の中に数字を書いては消し、また書いては消すといった深化法を提唱しました。そのトランスを作る条件のひとつというのは、「潜在意識は簡単なものには興味を抱かず、難しいものは避ける傾向にあり、人は簡単すぎず、難しすぎない作業を繰り返すことによってトランス状態になる」といった理論のもとで考え出されたものです。

だから、エルマンの催眠深化法は、まず円を描き、その円ギリギリの大きさに数字を書き、円を消さないように、数字だけをきれいに消すといった部分が肝心なのです。元は、ただ数字をイメージして、それを消してはまた書いて、といったようなものではなかったのです。

ちなみに、こんなことを言ったら元も子もないですが、エルマンの技法が正しくできていたとしても、こんな間の抜けた催眠深化法が質の良い催眠状態を作り出すとはどうしても思えません。ついでに言わせてもらうと、どんなに資料を読み漁っても、エルマンの技法で評価できるものを見つけるのは難しいです。

エルマン催眠の定番の催眠誘導は、まぶたが開かなくなる催眠からスタートすることが多いのですが、まず「目を閉じて、まぶたが開かないと自己暗示してください……」と被験者に指示をします。「そのまま自己暗示をつづけながら目が開くか開かないかやってみてください……」とつづけ、被験者の目が開いたら、「自己暗示ができていないから開いてしまうんです……自己暗示ができていたら開くはずがないんです……」と言って、暗示にかからなかった事実を被験者のせいにします。

このエルマンの最初の作業に対し、催眠家たちは、「催眠にかからないのは被験者の自己責任であると責任転換をした最初の人物です」といってエルマンを評価していたりしますが、このエルマンの最初のワークと責任転換がはたして成功率を上げることになるのか、それとも成功率を下げてしまうのか、催眠を受ける被験者の立場になって、いま一度考え直して欲しいと思います。

そもそも、エルマンは技術が高かったから有名になったのではないんです。

半世紀以上も前に、ある総合病院に勤める医師が、催眠の有効性に気づき、患者に施そうとするものの、あまりにも技術がお粗末で、催眠に誘導できずにいました。そこで、その医師は、「やはり、催眠は催眠術師からテクニックを学ぶべきだ」と思い立ち、たまたまその頃にステージ催眠をやっていたエルマンに白羽の矢が立ち、エルマンは催眠レクチャーを頼まれ、総合病院で催眠技法の講師を務めることになったのです。

このときの経験が、「医師等に催眠を教えた催眠術師」というブランドとなり、エルマンはいくつもの病院から声がかかるようになります。そして、多くの医師に催眠を教えたという功績ができていったんです。技術がたかかったからいろんな病院からレクチャーを頼まれたわけではないんですよね…

このように、エルマン一人を例に挙げても、技法も歴史も正しく伝わっていなかったりします。ミルトン・エリクソンの技法などは、かなり違った形で教えられていることが良くあります。

人物像はともかく、技法に関しては、肝心な部分がそぎ落とされた状態で歴史に残るのは、少し悲しい気がしますよね…


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