昨日のフィギュアスケートグランプリシリーズ中国大会。
羽生結弦選手の衝突事故、およびその後の演技について、ご存知の方も多いでしょう。
大学まで体育会の運動部で、かつラグビーやアメリカンフットボールといった激しいスポーツをやっていた身としては、二人の選手の衝突シーンを見て、青ざめたのが正直なところです。
衝突後、羽生選手がしばらく立ち上がれなかったところから、おそらく脳震盪だったと思われます。
リプレイ映像を見る限り頭を直接リンクには打っていませんが、アゴは強打しました。
アゴを打つと脳が強く揺れるため(ボクシングでアゴにパンチが入るのと同じです)、脳震盪になることはあります。
その後の演技を見ていても、足に力が入っていないし、平衡感覚も定まっていなかったように見えました。
それでも4分30秒を滑りきった気概に、感動と賞賛の声が多かったことは当然でしょう。
しかし、今回のことを感動だけで済ませてはいけない。
その後の選手生命はおろか、命に関わる危険もないとはいえない状況でしたので、ドクターなりコーチなりが棄権させるべきでした。
その辺りは、こちらの記事にも詳しく書かれています。(内田良氏:名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20141109-00040588/
私も大学3年時のアメフトの試合で脳震盪を起こし(試合の半分以上を覚えていませんでした)、一週間後の試合は出場できなかったことを思い出しました。
その年のプレーオフに出られるかどうかの一戦だったので、「他の試合は出られなくても次だけは出たい」と主張したものの、ドクターとコーチにあっさり却下されました。
私はたかだか学生スポーツまでの経験者です。
当時は本当に命がけでやっていたつもりですが、世界のトップレベルで戦っている選手たちは、当然見ている世界が違います。
そんな立場でいうのはおこがましいのを承知で、以下のとおり述べます。
まず、応急治療をしながら、おそらく今後あり得る危険性を踏まえつつ、選手とコーチ・その他の関係者が話をしていたものと思います。そのうえで、出場を許すという結論に至ったのでしょう。
さすがにこの時代のスポーツ、しかも世界トップの選手ですから、本人の一存だけで決まることはないと思います。よっぽどまずい状態であれば、ドクターがどうやっても出さないはずです。
演技をさせるべきでなかったと思われる方も多くいらっしゃると思いますが、選手自身が納得して「出場」の結論が出た以上、あの段階で観客としての私たちにできることは、真剣に演技を観て選手の気概を受け止め、惜しみない喝采を送ることなのだと思います。それが、選手に対する最大の礼儀でもあるでしょう。
そして演技が終わったあとは、大事に至らないことを祈るのみです。
選手はいつでも、怪我など関係ない、自分は試合に出るのだ、と主張するものです。
おそらくスポーツを本気でやったことがある人なら、誰でも経験があるはずです。
その主張を脇において冷静に判断し、出場の可否を決めるのがコーチや裏方の役割です。
よって、羽生選手が出場続行とわかったときは、むしろ演技しても大丈夫だと判断されたんだな、と思いました。
・・・とここまでこう書いておいてアレですが、客観的に見てベストの選択はといえば、やはり「棄権」させることだったと思います。
たとえ昨日の4分半については大丈夫でも、早く治療し再発の可能性を小さくすることを考えれば、できる限り早く本格処置をすべきだったのは当然です。
昨日頑張った分、完全復調するのに余計な時間がかかる可能性は否定できません。
今後同じような事故が起こった場合(他のスポーツであっても)、原則としてできればすぐに選手を治療し、休ませるようにしていただきたいものです。
ルールで規定するなど、方法はあるはずです。
とりとめのないことを書き連ねましたが、
観客の一人としての私は、とにかく羽生選手の早期の完全回復を祈ります。
そして今回まさに「気合い」で乗り切った経験を今後の羽生選手の成長につなげ、圧倒的な強さを確固たるものにしてほしいと思います。