ギプスか? ギブスか? | 林整形外科のブログ

 古いドイツの医学書には、「ギプスなきところに整形外科なし」と書かれています。骨折を治すということに関し、これまでギプスの果たしてきた役割は大変に大きなものがあります。

 ギプス包帯による固定方法を最初に発表したのは、オランダのマタイセンMathijsenという人でした。これは、石膏が水と混ざると熱を出して固化するという作用を応用したもので、包帯にすることで自由な形で固めることができるようになりました。

 「ギプス」というのが正しい発音なのですが、最近では「ギブス」という言葉を耳にします。「ギ」という音の次に、「プ」という半濁音が来るよりも、「ブ」という濁音があった方が言いやすいことから、普及してしまったのではないかと想像できます。

 日本語でのギプスは、ドイツ語のGipsがそのまま輸入された言葉です。英語ではジップスgypsあるいはジプサムgypsumと言って、語源はラテン語の「石膏」という言葉です。いずれにしても、やはり正確には「ギプス」となるわけです。

 東京の秋葉原は、かつて「あきばはら」という地名でしたが、やはり読みやすいという理由から「あきはばら」となってしまいました。次第に言いやすい言葉に変わっていくとなると、「ギブス」が普通に使われる時代がやって来るのかも知れません。