壽初春大歌舞伎
通し狂言 仮名手本忠臣蔵
【大序・三段目】
大 序 鎌倉鶴ヶ岡兜改めの場(かまくらつるがおかかぶとあらためのば)
三段目 足利館門前進物の場(あしかがやかたもんぜんしんもつのば)
同 殿中松の間刃傷の場(でんちゅうまつのまにんじょうのば)
高師直 藤十郎、塩冶判官 扇雀、顔世御前 孝太郎、足利直義 進之介、桃井若狭之助 翫雀
上方式の演出で舞台中央から幕が両開きに開く。話の流れのテンポが速い。
藤十郎の師直は顔世御前に迫るところがいやらしくてリアル。顔世の孝太郎はなかなか貫禄がある。若狭之助の翫雀は勢いがあるのはよいが、その場の空気を変えるような若者らしい清々しさがほしかった。進之介の足利直義は品はあるが少しもたつく感じが気になる。
三段目足利館門前の場。寿治郎の鷺坂伴内の軽さがよい。
殿中松の間刃傷の場で若狭之助に対する態度を一変させる師直はふてぶてしいが、塩冶判官とのやりとりでは、それほど師直のいやらしさを感じなかった。扇雀の塩冶判官の耐え方、刃傷に至るまでの感情の動きが見えにくかったせいかもしれない。
【四段目】
四段目 扇ヶ谷判官切腹の場(おうぎがやつはんがんせっぷくのば)
同 城明渡しの場(しろあけわたしのば)
大星由良之助 藤十郎、塩冶判官 扇雀、大星力弥 壱太郎、薬師寺次郎左衛門 薪車、顔世御前 孝太郎、石堂右馬之丞 我當
扇雀の塩冶判官は品があるが、上方演出のテンポの速いことも悪く影響して、この人物の大きさ、深い部分が見えないため、切腹があまり重い場面になっていないのが残念である。薬師寺次郎左衛門がなかなか健闘している。
城明け渡しの場の背景の門の絵がパタンパタンとめくれてだんだん小さくなっていく演出は、背景が明るすぎたのか、藤十郎が作る神妙な由良之助と息があっていないような感じ、違和感があった。
【五段目・六段目】
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場(やまざきかいどうてっぽうわたしのば)
同 二つ玉の場(ふたつだまのば)
六段目 与市兵衛住家勘平腹切の場(よいちべえすみかかんぺいはらきりのば)
早野勘平 藤十郎、斧定九郎 翫雀、一文字屋お才 孝太郎、千崎弥五郎 薪 車、母おかや 吉弥(竹三郎 休演)、女房おかる 秀太郎
江戸演出とは大きく違う5、6段目は、揚幕から与市兵衛に「お~い、おーい」と声をかけながら登場する翫雀の斧定九郎が、悪そうでしつこくてよい。江戸の斧定九郎が「50両…」としか台詞を言わず、美しい「姿」で見せるのに対して、派手に人を殺し、好きに話し、地蔵を蹴倒し存分に人間くさい「中身」をアピールする上方の定九郎。どちらも違う魅力があるが、舞台上の変化があり、あきさせないのは上方演出かもしれない、と今回思った。
秀太郎のおかるは色気、愛嬌があって、今回は同じ役者が勤めるのであたり前だが、七段目のおかるに違和感なくうまく繋がる。おかる達が舞台上から去った後の静けさからその存在感、華を実感した。
一文字屋お才は孝太郎で、おちつきと冷たさがあるのがよかった。寿治郎の源六が役目を果たしつつ、自分の持ち味を出して、他の役者を際立たせているのがうまいなあと思った。
藤十郎の勘平は心がまっすぐで、いつのまにか引き込まれてしまった。静かに人の心をつかむ力に圧倒された。吉弥のおかやも熱演で、感情がぶつかり合う熱い芝居だった。
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